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音響というアートについて、或いは後輩シンガー達へのメッセージ

orange pekoeのクリスマスソングがようやく完成しました!

久しぶりというにはあまりに間が空いてしまったけれど、実に11年ぶりのペコの新しい音源制作を終え、今回も素晴らしいミックスダウンを経験できた記念に、音響というアートについてしたためてみたいと思います。

音響というアート

さて、私たちが音楽をやる際に、音響というのは切っても切れない関係にあります。

シンガーなんて100%、マイクにのせて歌うからね。生声で響かせるホールとかで歌わない限り、私たちの声や音は音響さんの手に委ねられているわけです。

音源を作る時もそう。歌ったり演奏したりしたものは、二つのスピーカー、あるいは右と左のヘッドフォンから出てくるために、特別に混ぜられて、作られるのです。

だから、その作業もアートなのです。


私の経験

私はハタチくらいからプロの音楽制作に携わらせていただいてきて、いろんな方達とお仕事させてもらってきましたが、キャリアの初めの頃は戸惑うこと、悩むことがたくさんありました。

基本セルフプロデュースでやってきたので、ミックスダウンやマスタリングは失敗の連続だったし、

ライブ現場では、うまく自分の声やバンドの音が聞こえないことがあって苦労したり、本番になって音が変わりすぎて、どうにもできなかったのに、それを自分の歌の技術のせいだと勘違いして自分を責めたり、はたまた、前から出てる音(私は一生聴くことのできない、本番のメインスピーカーの音)が信用できなくなってしまったことも。

だけど、何枚もアルバム制作をしていき、様々なホールやライブハウスなどでライブを重ね、素晴らしいエンジニアの方々との出会いがあったりして、根気よく追求していくと、だんだん耳が開いてきて、細かな違いが聴こえるようになってきます。

そうすれば、どうすれば自分が心地よいのかがわかってきて、デフォルトを設定するのが楽ちんになっていくわけです。

だから、今まだ経験が浅かったりして、音響のことがよくわからなかったり、悩んだりしているみなさん。みんな通る道なので、大丈夫。ただ意識を毎回、そこから離さずにいきましょう。そして、自分を知って、修正を重ねていくのが大事だと思います。


トモコ流「音響」耳の開発のコツ

ここで、トモコ流「音響」というジャンルの耳を開くコツをご紹介。
これは、完全に私の個人的な見解なのですが。

まず一番大事なのは、自分の歌やメンバーの演奏へのエゴの見解を捨てる。細かい部分が気になる気持ちは別の機会に、と脇に置くことです。

そして、音楽をひとつの絵のように見ます。

そうすると、デコボコとしていることや、心地よく広がっていることなどが、視覚的に見えるようになってきます。これはちょっと訓練がいるかもなので、根気よく試してみてね。

その中で、自分の好みの絵をみつけて、そこに近づけていく作業になります。

もちろん素晴らしいエンジニアの方とは、そういう感覚でセッションを楽しむと、大変魅惑的なコラボレーションになること必至です。


音響の世界は、感覚が開くと、魔法のように楽しめる世界なので、サウンドクリエーターだけでなくシンガーのみんなもぜひとも、プロデューサーに任せっきりにせずに、一緒に楽しんだりしたらいいんじゃないかな、と思います。

その際には、ぜひよいスピーカーで聴くことをお忘れなく、ね♪


音楽を”聴く”耳、5種類

ちなみに余談ですが、私の感覚でいうと、先ほど言った①エゴの好みで細かく分析型で聴く耳、②音響の絵の耳、以外にもう3つほど耳があります。

③つ目は、グルーヴの耳。リズムを体感する耳です。これは耳で聴いてるんだけど最終的には体、とくに腰のあたりに感じるやつ。

そして④つ目は、音程やハーモニーの耳。これはピアノとかをやっていたりする人はきっと持っているであろう耳です。

そして最後の⑤つ目は、音の本質を捉える耳。
これは結構スピリチュアルな感じに近くて、音の中に、その人の本質的な性質や、過去の人生経験(残ってる傷や学んだことなど)、今ハマってること、悩みなどが現れています。

本来、音楽っていうのはこの5つ目のものを、リスナーの皆さんも知らず知らずに聴いて味わっているものなんじゃないかな、と思います。

そこに音楽の深さとか旨みとかがじんわりと隠れているから。


私は普段、この5つの耳を、リハーサルなどでは意識的に、ダイヤルを変えるみたいにして聴いています。
思ったような感じになっていない場合などは、いろんな耳で聞くと、解決方法が見つかったりしやすくなります。

でもそれとは逆に、ライブやレコーディングの本番は、完全に無意識になって、音と私しかいない世界に行きます。

完全なるエネルギーの感覚だけの世界です。

その宇宙空間に漂って、私のところにピカーンと降りてくるエネルギーや音を拾いにいきます。
そしてそれをみんなに伝えるわけです。
歌詞やメロディーが同じでも、全く同じ状況の日はないから、その瞬間にはその瞬間にしかない音が新鮮に輝くわけです。


ちょっと話が逸れましたが。


音楽って、それくらい、饒舌で、豊かで、バレバレで、面白いよね。

だからやめられないのかな。


日本の音響への意識について

そんな感じで、今日はちょっと音響にまつわるエトセトラをシェアしました。

これを書いた願いとしては、日本の音楽業界の音響のレベルは、正直なところ、もっともっと上がってもいいと思ってるからです。

そのためには、音響というのはオーディオマニアのためにあるのではなくて、音楽をやる上で当たり前のものなんだっていう意識にもっとなっていくといいなあって思っています。

そして、それは本当に豊かで楽しいものだから。

後輩のみんなに、少しでも何か参考になったら嬉しいな。


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