ナガシマトモコ from orange pekoe | Tomoko Nia (ともこにあ)

歌手、作詞・作曲家、プロデューサー。 音楽にまつわるエッセイなどを書いていきます。 2024年全ての制作(歌唱、全編英語詞による作詞、作曲、ビートメイキング、全楽器演奏、CDジャケットデザイン)を1人きりで行ったセルフプロデュースEP『UCHI』をリリース。

ナガシマトモコ from orange pekoe | Tomoko Nia (ともこにあ)

歌手、作詞・作曲家、プロデューサー。 音楽にまつわるエッセイなどを書いていきます。 2024年全ての制作(歌唱、全編英語詞による作詞、作曲、ビートメイキング、全楽器演奏、CDジャケットデザイン)を1人きりで行ったセルフプロデュースEP『UCHI』をリリース。

最近の記事

音響というアートについて、或いは後輩シンガー達へのメッセージ

orange pekoeのクリスマスソングがようやく完成しました! 久しぶりというにはあまりに間が空いてしまったけれど、実に11年ぶりのペコの新しい音源制作を終え、今回も素晴らしいミックスダウンを経験できた記念に、音響というアートについてしたためてみたいと思います。 音響というアート さて、私たちが音楽をやる際に、音響というのは切っても切れない関係にあります。 シンガーなんて100%、マイクにのせて歌うからね。生声で響かせるホールとかで歌わない限り、私たちの声や音は音

    • 旅と植物の記憶

      旅の記憶で、いつも濃厚な香りと共に脳裏に蘇ってくるのが、植物の影だ。 ああ、自分って異国にいるんだなあと思う要因っていろいろとあると思うけれど、その大きな一つの要素として、植物があると思う。 そして決まって、その存在を思い起こす時間は早朝だ。 早朝は、植物が主役の時間。そんな気がする。 お昼になればそっとその主役の座を人間を含めた動物たちに明け渡し、見守るかのようにそばに立つ。 夜は夜で、星や月かげの下、闇の中に隠れて息を潜ませる。 そうして早朝が近づくと、その存

      • 短編小説 『岬』

        1.再会 まさか、と振り返るまでに5秒は経過していた。  記憶が現実に追いつくまでに時差を引き起こす。柔らかそうな紺色のニットカーディガンとアーモンドミルクのような曖昧な白いTシャツの質感が、遠く甘い思い出の香りによく似ていた。間違いない。  逸史と別れたのは3年前のちょうど今頃だった。  遠くをみるような表情ばかりが思い出されるくらいの、温度の違いでへとへとになるような恋愛だった。何にも悪くない。わかってる。恋の終わりなんてそんなものだ。  どうしようもなくなるほどに傷

        ¥300
        • ブルックリンのアパートに小説が降りてきた話

          ニューヨークに住んでいた時、突然ものすごい衝動に襲われたことがある。 「小説を書きたい!!!」 もうそれは、衝動としか言いようのないエネルギーで、とてつもない圧力のような感覚だった。 しょうがなく私はパソコンに向かい、人生で初めての小説を書き始めた。 なんのこっちゃかわからない。書いたこともなければ、書きたいと願ったこともない、「小説」。 だけどその衝動はとどまることを知らず、三日三晩続いた。 ほぼ寝食を忘れたかのように、書いて書いて書きまくった。 言葉があとを

          最高の旅をする秘訣

          旅が好きだ。 仕事柄移動が多いため、移動中の過ごし方もどんどん自分流にアップデートされていて、楽しい時間のひとつになっている。 海外へのロングフライト、みんなが寝静まった真っ暗なシートの中は、最高の創作環境だったりする。移動中にできた歌詞も数知れずだ。 だから、少しスケジュールの隙間を見つけると、昔からよく旅に出てきた。 そんな数々の旅の中で、印象に残っているシーンというのがいくつかある。 短いショートビデオクリップのような感じで脳裏にいつまでも残り続けるような風景

          ジャケットアートワークの世界

          私の日々は、いつも水とともにありました。 デビュー時、初めて東京に出ることが決まって家探しを始めた時、どこか風が通り抜けるような、自然の近くがいいな、と思い、部屋から多摩川が見えるお部屋にしました。 車を購入して自分であちこちドライブに行けるようになってからは、お休みは決まって、海の強い風と、一日を通して違った輝きを反射する水面を求めて、湘南へ出かけていたものでした。 それからしばらくして、今度は湘南に住むようになり、 アメリカで移住した先のブルックリンも、近くに海と

          『Our Destination』 楽曲解説 ②制作裏話

          前回は詞について触れましたが、今日は楽曲制作についてシェアしたいと思います。 エッセイでも触れましたが、今回の作品はすべて、私一人で、自宅で制作しました。(ミックスダウンとマスタリングという最終工程は、お願いしました!) この『Our Destination』という曲は、アコースティックピアノが中心のサウンドになっています。 今、自宅にある、宝物のピアノさんは、 とても繊細で、優しく、内省的な響きをしているのがとても気に入って、お迎えしました。 元々はデジタルピアノ

          『Our Destination』 楽曲解説 ①詞について

          私の新しいソロプロジェクトTomoko Nia(ともこにあ)の第一弾シングル『Our Destination』の配信始まりました! みなさんもう聴いていただけたでしょうか?まだの方はぜひ! 今日はこの曲の背景や想いなどを綴ってみたいと思います。 この曲を書きたいと思ったきっかけとなる強い想いは、 「私たちはどこへ向かうべきなんだろう?」という問いでした。 エッセイの中でも少し触れましたが、この数年間、世界は大きな渦に飲み込まれ、行き場を失っているように、私の目には映

          10年ぶりの新作へのエッセイ 完結! ⑷帰国

          日本に帰ってライブをしたりして過ごしていたら、パンデミックが訪れた。 世界がおかしくなっていくのをみるのはつらかった。 いや、おかしくなっていったのではなく、もともとおかしかったものが、どんどん表面化しているだけなのかもしれないけれど。 同時に、更年期障害もかなりきつくなっていった。 思えば私の人生、ホルモンにずっと悩まされてきた。 女って本当タイヘンだ。 閉経の前後10年は更年期障害の影響があるらしい。 その前はPMS、生理痛と、結局ずっとぐらぐらと、バランスをな

          10年ぶりの新作へのエッセイ 完結! ⑷帰国

          10年ぶりの新作へのエッセイ ⑶LA

          薄々気づいていたことがあった。 NYで暮らす中で、好きな音楽の幅も広がって、あ、これいいな、と調べてみると、LAのアーティストであることが多かった。 服も、昔からBOHO、ビーチカルチャーのボヘミアンがしっくりくる。 ロサンゼルス、という言葉が、あちこちから耳に目に入ってくる。 まあそれなら、と持ち前の旅人気質とフットワークの軽さを発揮して、ロスにちょっと旅に出てみた。 圧倒的にでっかい! ニューヨークより怖い。 なんでだろう?車社会だからかな。 ゴウゴウと猛スピー

          10年ぶりの新作へのエッセイ ⑵NY

          はじめは、数珠繋ぎのように人に会っていった。 NYの人たちは本当にパーティーが好きで、毎週末のように誰かの家でホームパーティーがある。 そこに行けば、誰かとつながる。そしてまたその人のパーティーへ。 と、気づけば大量の友達ができていた。 私はワイワイするのも好きだけれど、基本は一人が平気、というかむしろ大好きなタイプだ。 こんなに友達ができまくるなんて体験は初めてだった。 NYに住んでいる人たちはだいたいみんな、どこか別の街から来ているから、このタフな街でなんとか助け合

          10年ぶりの新作へのエッセイ、連載スタート!⑴

          noteのみなさん、はじめまして。 orange pekoeのナガシマトモコです。 2024年に、新しいプロジェクトTomoko Nia(ともこにあ)を始動します。 私のことを応援してくださっている方も、よく知らないよーっていう方にも、少しだけこのエッセイ公開に至る道のりを紹介させてください。 * orange pekoeとしてデビューした2001年から、怒涛のような日々を駆け抜け、2014年のリリースで、遂に私は心身ともに燃え尽きてしまいます。 それからの10年間、ライ

          10年ぶりの新作へのエッセイ、連載スタート!⑴