野球あるある② ”アームケア”って何?
”アームケア”って言葉を知っていますか?
あまり耳慣れない言葉だと思います。
当時の私は、野球のトレーナーという仕事に就いていながらも恥ずかしい事に、その意味を理解していませんでした。
昔、ある外国人投手がアームケアをしてくると言っていたので、てっきりトレーナーの治療を受けてくるものだと思っていました。
外国人投手に、肩と肘どっちをマッサージしてもらうの?と聞くと、
”違う!!なんで治療(マッサージ)を受けなければいけないんだ”って怒られました。
アームケアは、
『投げた後に崩れてしまった肩甲骨や肩の位置を元に戻すためにエクササイズをするんだ。投げたら肩の筋肉は疲労するんだからエクササイズをして回復させるんだ。それが”アームケア”だ』と教えてもらいました。
当時の私にとっては、今までの常識が覆った瞬間でした。
決して受け身ではないんです。
この仕事をしていると、どうしても身体を触って治療して良くするのが良い事だと思っていましたし、それができるトレーナーが良いトレーナーだとも思っていました。むしろ、トレーナーとしての当たり前の仕事だと。
自分でやるのが当たり前の文化。
受け身ではないんです。
それなら、トレーナーは何をするのか?
投球後の身体の変化やリコンディショニング(再び元のコンディションに戻す事)ついて選手にレクチャーを行い、方向性を決めていきます。
具体的に何をしていくかは選手と話し合いながら、選手自身に決めてもらい、選手が主体的できるようにモニタリングしてアシストする事がトレーナーの役割の一つだと考えています。
選手自身で出来るようにしていく、私(トレーナー)が関わらなくても自分の身体は自分でよくできるようする仕組みや解決策を理解することが物凄く重要だと感じます。
#特に毎日試合をするプロ野球では
先日、リハビリから復帰した選手がいました。
リハビリ期間中は、実際の試合形式でのピッチングをかなり多く行って、なるべく試合に近い状況で身体の耐久性を投げながらトレーニングしてきました。
それでも、
試合ではわずか10球程度でしたが、翌日、身体が筋肉痛でパリパリですと言ってました。
あれだけ試合に近い形式での練習をやってきましたが、やはり試合での登板は身体にかかる負担は想像以上です。
つまり、
投げたら必ず肩甲骨や肩の位置、筋肉のアンバランスが生まれ、可動域は硬くなります。
それをどのように翌日までに戻せるか(リコンディショニング)が、年間通して投げ抜くために必要な事だとトレーナー活動をしていて感じます。
筋肉が張ったらマッサージをしてもらいたいと思うところですが、一時的に緩み、かつ誰かに緩めてもらった筋肉は実際の動きの中ではなかなか使えないのも事実ですし、感覚も狂いがちになります。
また、
遠征が続いたり、移動で時間がなかったり、先輩の選手が治療をしていたらマッサージを受ける事ができないので、セルフで解決できる”アームケア”を知って、実施する事が物凄く大切です。
もちろん、セルフでは限界があるので、”自分自身でアームケアをして、色々やってみたけど解決しないから治療を受けにきました”という流れ(文化)が理想的ですし、選手にとっても、トレーナーにとっても良好で健全な関係だと思います。
ある選手は毎試合後(登板してもしなくても)に、自分に合ったアームケアのエクササイズを行い、それが終わった後に、可動域をチェック(モニタリング)して、改善していれば終了にしています。
改善していなければ、エクササイズを追加(一緒に考えて)して可動域などの機能を元に戻してから終了するような形にしています。
今日、その選手が、毎日アームケアする事で”もう治療(マッサージ)がいらなくなりました”と笑顔で話してくれました。
まだまだ全員ができるようになるには至っていませんが、一人一人の選手と向き合って、自分でやるのが当たり前の文化になってほしいなと思っています。
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