「反哲学入門」
ギリシアから始まる西洋哲学と、後のキリスト教との関係、それを否定したニーチェ哲学、そして、著者が20世紀最大の哲学者と確信するナチス党員でもあったハイデガーを紹介する流れ。読みやすくてわかりやすかった。
「無知の知」を説いて青年に害悪を及ぼした等の理由で告発され、裁判を経て処刑されたソクラテス。
当時の民主体制も、少数寡頭体制も、プラトンをはじめとする弟子たちの態度も、何から何まで徹底的に批判、一切、ポジティブなことを言わずに、ひたすら、あれもダメ、これもダメを続けていたという。
生き方そのものがアイロニカルで、裁判でも、助かろうという気が全くなく、まるで嫌がらせのように自説を主張、自分の立ち位置を明確にせずに、ひたすら目の前にある立場を否定するだけの態度だったらしい。
だから一冊の書物も書かなかった。
それでいて周りに美少年は囲ってたのだけど。
中世以降、哲学は、神という実在しない存在を、人間との関係においてどう捉えるのか、存在を証明するのか、そして、どう信仰するのかについて四苦八苦する。
「存在するために他のいかなるものをも必要とせずに存在するもの」、つまり、一切の対立関係がなくても存在を認識できる、ありもしないものをあるように説くというトンデモないことに頭を悩ますことになるけど、それをズバッと断ち切ったのがニーチェなのだ。だからニーチェは反哲学の始まりなんだね。
めっちゃ狡猾で、状況によってすぐに立場を変えるイヤなジジイだったらしいハイデガーの「存在と時間」は、難し過ぎて理解できん。
存在論というのはわかるけど。物事が存在するとはどういうことなの?そこにある理由もわからないのに、なぜ存在してると言えるの?
つまり、物事の存在と理由とそれが何であるかは、この世界においては人間の目的によって決まるんじゃないかということだと思う。多分。
哲学って、難しくて、著者の意図することが理解できなかったり、誤解したりするけど、宗教と同様、共感して読み解く中で、それぞれの都合の良い理解があっても良いんじゃないかと思う。