【洋画】「ミツバチのささやき」

若い頃に渋谷のユーロスペースで女の子と観たなぁ。

スペインのビクトル・エリセ監督の、1973年の作品「ミツバチのささやき(The Spirit of the Beehive)」。

なんと言っても、主演の、眼の大きな5歳の女の子アナ(アナ・トレント、現在58歳)が素晴らし過ぎる。

全てに純粋無垢に興味を持つような多感な少女を、村で上映される古典ホラー映画「フランケンシュタイン」のキャラや、銃殺される脱走兵との短い交流をベースに、自然豊かな小さな村を背景にして、幻想的なイメージで静かに描いた傑作である。

当時のスペインのフランコ独裁政権に対する批判もあるらしいがよくわからない。銃殺された脱走兵は政治犯なのだろうか?

アナと姉イザベルの幼い姉妹は、「フランケンシュタイン」の上映会に行く。その夜、映画の、怪物が幼い少女を殺す場面を忘れられないアナは、姉に、なぜ少女は殺されたの?と問う。イザベルは、少女も怪物も死んでないと言い、なぜなら聖霊だからと答える。アナは後日、精霊が隠れているという村外れの小屋を訪れるが、そこには傷付いた脱走兵が隠れていた…。

アナの、瞬きもせずにジッと見つめる、大きくつぶらな黒い瞳が、全てを物語っているように思う。多感な心を持つことから家族でも孤立しがちなアナは、この大きな瞳で、映画という幻想と、現実の世の中と、外の大人と血と死を見たのである。

まだ全てを理解するには幼過ぎるアナは、幻想を現実化させて、激しいショックを受けて倒れてしまう。喋らず、眠らず、食事もしない。ふと夜中に覚醒したアナは、窓を開けて、静かに目を閉じる。見ることを拒んで、聖霊を消し去り、少し大人になったのかもしれない。

養蜂園を営む父親はお爺ちゃんみたいだし、まだ若い母親との仲は冷え切ってるように見える。姉妹は仲が良いけど、家族は会話もなく分裂してるようだが、コレも何かの暗喩なのだろうか?

まあいい、少女の大きな瞳と驚きの自然な演技(監督の演出)だけでも充分なのだ、この映画は。


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TOMOKI
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。