【古典邦画】「女の園」
木下惠介監督の、1954(昭和29)年の作品「女の園」。
京都郊外にある全寮制の女学校を舞台として、戦後となっても、封建主義的な教育を強いる学校と、自立と自由を求める学生との対立を描いた大作。
戦後民主主義の美名の下に隠れる懐古的封建主義をあぶり出すような風刺的内容でもあり、真面目な社会派の一面を見せる木下監督らしい作品だ。
ラストは、犠牲となったデコちゃん(高峰秀子)の自殺で終わるという悲劇で、俺も引き込まれてウルウルきちゃったよ。
学校は、良妻賢母型日本女性を育成するという教育方針で知られており、厳しい規律で生徒を束縛していた。特に、寮母の五条真弓(高峰三枝子)は、厳しい干渉をして、生徒に恐れられていた。
訳アリの新入生のヨシエ(高峰秀子)は、勉強が同級生に遅れているが故の、消灯時間を過ぎての勉強も許されず、恋人との自由な文通も検閲されて許されない。同級生のトミコ(岸惠子)は、休みの日に男友達とテニスをしたことで停学処分となってしまう。“アカ”にかぶれているとされたアキコ(久我美子)は、事あるごとに反抗するが、学校の有力な後援者の娘であるために、学校も特別扱いをしてる面があった。
トミコの処分他を巡って、アキコを先頭に、ついに生徒たちの不満が爆発、騒ぎを起こして、学校に要求書を提出する事態に。それを受けて学校は、生徒に罰を下すが、生徒の団結を崩すために不均等な処分を下す。
反抗した生徒たちに退学などの重い処分が下される中、ヨシエやアキコは、学校側の工作の対象となって、軽い処分が下される。
ヨシエは、他の生徒たちの反感を買ってしまったことに、人一倍傷付いて、神経を病み、寮を飛び出してしまう。一時は、恋人のアパートに行くものの、責任感に思い悩み、再び学校へ戻って、夜の教室で自殺する…。
じゃあ、何でこの学校に入ったの?と言うなかれ、社会悪に人一倍、敏感になるのが若人の潔癖症であり特権なのだ。
途中、ヨシエの恋人との逢瀬など、冗長な部分はあるが、教条主義的な五条真弓らと生徒たちの言い合いなど、皆、名前に“様”を付けて、とても丁寧な言葉遣いのため、感情を表に出さないことが、逆に恐ろしく感じる。
あくまでも言葉を言い交わすことで決して暴力はない。学校は、生徒の反逆を“アカ”“共産党”の差し金と結び付けるから、アカ狩りの時代なのだろうか?学生運動を予兆するような内容は、さすが時代を写す木下監督だ。
あまりデコちゃんに笑顔がない。悩んでいるか、泣くか、ブチ切れて号泣かだ。
後に、犬神松子を演じる高峰三枝子の生徒を理論詰めでやり込めていく冷たい演技が冴えてるね。コワッ。
社会は変えようとしても、まず変わることはない。特に日本は。個々が自分を見つめて、自分の存在と立ち位置、周りを認識することで変わる可能性は出て来るかもしれないが。
ヨシエの自殺は、マスコミも含めて大きな波乱を呼び、学校も生徒も、激しく感情をぶつけ合って(特に久我美子がスゴい)、混乱のうちに了となる。
イヤ〜、凄まじいなぁ。
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。