【古典映画】「長屋紳士録」
小津安二郎監督作品。1947年の、小津安のシンガポール帰還後の戦後1作目「長屋紳士録」。
父親とはぐれた戦争孤児らしい子供を巡る人情劇。一面の焼け野原や上野でたむろする戦災孤児などが出て来て、戦後間もない東京を表している。
下町の長屋に、上野から着いて来たという独りの子供が連れて来られる。
住民は皆、面倒を見るのを嫌がり、クジで仕方なく、金物屋を営むオタネが面倒を見ることになる。
オタネは最初、言うことを聞かなかったり、寝小便をしたりする子供が煩わしくて、子供に辛く当たる。
子供もオタネに叱られるのが嫌で家を飛び出してしまう。
オタネは、子供がいなくなると心配になって辺りを探し回る。
上野でフラフラしてた子供を、また長屋の住人が連れて帰る。
それから、オタネは、子供が愛おしくなって、美味しいものを食べさせてあげたり、動物園に連れて行ってやったり、服を新調したり、自分の子供の様に可愛がる。
ある日突然、子供の父親を名乗る男がやって来て、子供を引き取って行った。
オタネは、他の住人に「寂しくなったかい?」と問われるが、「実の親と一緒になった子供は本当に良かった」と子供のことを思って泣き出す…。
オタネを演じるのは飯田蝶子で、長屋の五月蝿い逞しいオバちゃんの役がピッタリ。子供を叱るときのシッ!という表情がマジで怖い一方、子供を愛おしむ優しい笑顔のオバちゃんも身近にいそうである。自分の夫と子供は戦争で亡くしたという設定。
子供は幸平という名前だけど、演じたのは青木放屁(ホウヒ)という子役。しょっちゅうオナラをしてたから、こんな芸名になったのか?小津安作品出演後の消息は不明だって。
お馴染み、若い笠智衆も、子供を連れて来る占い師役で出演、“のぞきからくりの口上”などを披露したりしてる。長屋の住人の下世話な“下ネタ”話もあったりして、飾らない下町の人々のそのままを表している。
ラスト、子供と別れることになったオタネが、母性をくすぐる子供の純粋さや気持ちを想って泣くが、小津安は、戦後の焼け跡から再起を図るのに、子供に未来を託す意味で、子供を持つ素晴らしさを訴えたのだろうか?
所々に、笑いも誘うユーモアたっぷりの小津安らしい人情劇の小品だった。
小津安作品は深いっ!
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。