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『バリ山行』そしてサイン会

今日、梅田へ出かけた。
梅田へ出かける事はそんなに大層なことでは無い。
電車を使って1時間足らずで到着する、今日梅田に行くことになったのは遡れば、あの日僕は梅田を彷徨っていた…

茶屋町辺りの書店を2軒梯子して「力が出ない状態」になり、いつもは行かない阪急三番街で食事をしながら、Xを観ていた…
するとタイムラインに松永K三蔵氏のポストが…

松永K三蔵氏ポスト


正直な話し『バリ山行』は「読みたい本」としてペンディングリストにリストアップしていたが、この日に購入するつもりは無かった。

芥川賞受賞作品なので街の本屋さんにも当然平積みで売られる本だから、街の本屋さんで買うと決めていたと言う事もある。
しかし、梅田阪急三番街で肉を喰らっている最中に目にしたタイムライン…
「コレも何かの御告げかもしれん」と思い、阪急三番街の「食道園」を後にしその足で紀伊國屋書店へ向かった。

『バリ山行』を知ったのも、松永K三蔵氏を知ったのも、雑誌『文學界』でアノ宮崎智之くんと渡邊英理氏がで担当している「新人小説月評」を読み、

文學界 2024.4

面白そう!と思い『群像』を買おうと思ったが、「いや待てよ、絶対単行本になるし、それまで待った方がエエか…」とペンディング状態になっていたわけである。(この時に多分、松永氏のXもフォローした)

そんな『バリ山行』とサイン会の権利を手に入れるべく足早に紀伊國屋書店梅田本店を目指す、心なしか脚が軽いエネルギー補給したのと『バリ山行』のせいだ。

紀伊國屋書店梅田本店

紀伊國屋書店梅田本店へ到着したが…
サイン会告知の気配が無い…階段の向こう側の入口へ移動する。

松永K三蔵氏サイン会告知ポスター

堂々と入口サイドに貼ってある、そして店内に入り『バリ山行』を手にする、既に第2版だ…

2号レジカウンターへ行きお勘定を済まし「サイン会の整理券が欲しいんですが…」と尋ねると…
レジスタッフは「………」「サイン会の御予約ですか?」と返され少し動揺してしまう。
すると、隣のスタッフが「整理券ございます」とありがたいフォローをしてくれたので無事整理券を受け取る事ができた、危ない処だ…
気の弱い僕は「予約」で有れば反故に出来ないから、辞めとくか…と言う言葉が少し頭をよぎったのであった。

松永K三蔵氏 サイン会整理券

『バリ山行』の舞台は六甲山だ!

「六甲山」登山の定番の入口「阪急芦屋川」から始まるではないか…

高座川
ロックガーデン
風吹岩
どれも、鮮明な記憶が残っている場所だ

風吹岩
阪急芦屋川駅前
ロックガーデン
高座川

「阪急芦屋川駅」から始まるのが中々にくい、コレだけで既にニヤけてしまう。

「山岳小説」と言えば導入部は割とメジャーな山から入り、雪山はたまたロッククライミング、遭難、雪崩、滑落と相場は決まっている…
メジャーと言えば、メジャーやけど、この後、剱や槍、穂高と話は展開するんやろな〜と予想するが舞台は飽くまでも「六甲山」なのである。

「六甲山」は子供からベテラン迄何度も足を踏み入れる。
そんな「六甲山」舐めてかかる人も多い。様々な登り方が有るので人それぞれなのも解ってはいるが。
前に勤めていた職場で鈴蘭台に住んでいた上司が「お散歩がてら」に登ると水も雨具も用意せず、登頂はしたが道迷いをしたふざけた話を武勇伝として話をするのでコンコンと説教をしてしまった記憶が甦る。

そんな僕にとっては身近な「六甲山」が舞台の『バリ山行』は前のめり気味に引き込まれていった。

登場人物の名前がコレまた「谷口」「栗城」「難波」「河野」「服部」と登山家や冒険家の名前が散りばめられている、会社名の新田テック建装は「孤高の人」の著者新田次郎から取引先のアーヴィンHDはエベレスト北壁に挑戦したあのマロリーの相方アンドリュー・アーヴィンから借用している、その借用の仕方が上手い、マロリーHDでは無く、アーヴィンHDなのだ、それっぽい。

そして山行用の目印に「神戸タータン」のマスキングテープとは…「地元愛」もかんじさせられ、思わず「にくいね…」と呟いてしまう。

神戸タータン マスキングテープ


アウトドアブランドのラインナップもマムート、ミレー、ホグロフス、アークテリクスと続くが、あのタウンユースで大人気のブランド「北の顔」は出てこない、コレは憶測だが何だか分かる気がする。

『バリ山行』の「バリ」はバリエーションルートのバリで通常の登山道だけを歩く山行では無いのだ〜と書評には結構書いているのだが、このバリエーションも勿論バリエーションがある(当たり前だが)。

エイト環


今回のバリは「藪漕ぎ」道なき道を進むと「懸垂下降」ロープとエイト環等を使って崖を降りる等が出てきたが、近畿でのバリ山行は三重県の御在所岳等ではクライミングが有名でクライミング+登山道のバリ山行が出来るし、本書にも出てくる「金剛山」の大阪、滝畑辺りでは沢登り+登山道のバリ山行を楽しんだり出来る。この、沢登りやクライミングを話中で詳しく出すとかなり登山技術や主人公の波多にトレーニングさせないといけないので「藪漕ぎ」「懸垂下降」にとどめているところがコレまた良い。
落ち葉が滑りやすいとか、藪漕ぎにはホームセンターのヤッケ位が良いとアドバイスをしても、ブランドを着てくるとか、もう「そうそう」「そーやねん」の連続でどんどん引き込まれてしまう。
波多をバリ山行に連れて育つ妻鹿も昭和の頃なら、もっと寡黙で傲慢を滲み出すキャラ設定に゙なっていただろうが、寡黙も頑固も不自然な処が無いのが良い。

山のシーンばかり解説する格好になってしまった…

「フルハーネス」クライアントの物件の防水検査で屋根に上がるシーンも、山と現実が絡み合い素敵だ…

防水も「ウレタン防水」なんだろう…
「そうか…エクスパンションのような建物の継ぎ目近くは防水が切れやすいか…」
と建物の修理に詳しいわけでは無いが…
此方も想像に難しくない。

そして、何より山岳小説に゙ありがちな「雪崩」も「死」も無かったのが良い。

あと…
波多の奥さんのモデルは松永K三蔵氏の奥さんだと思う…
多分、そう
きっと…そう…
絶対…そう…

勿論あった事はないが…すごく伝わってきた、、、
本当に待ち望んでいた「山岳小説」に出会え、感極まるわ〜(T_T)

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