【先週の生活者不満】年末調整のUXを最適化して/便利な「読み取り」にイライラ(~2022/10/30)
こんにちは。Insight Tech CEO 伊藤です。「声が届く世の中を創る」の実現に向けて不満買取センターを運営しています。
このnoteでの連載として「先週の生活者不満」をお届けしています。
この企画は毎週月曜~木曜日に放送されているJ-WAVE TOKYO MORINING RADIOの毎週木曜日のコーナー「データから導く<Better Life>」と連動しております。毎週ナビゲータの別所哲也さんに先週の生活者不満からみえる「Better Life」をお届け頂いています。是非ラジオもお聴きください。
先週の生活者不満(~2022/10/30)
注目するのは「前の週と比較して増加が目立ったキーワード」。そのキーワードの出現件数を反映したワードクラウド(下図)をみると「先週はこんな不満が目立ったみたい」という理解ができます。
先週はプロ野球の日本シリーズが実施されていたことで、プロ野球関連の不満や残念の声が多く寄せられました。「日本シリーズ」に加え「野球」、「オリックス」などのキーワードが増加しました。
結果としては、オリックスが26年ぶり日本一となりました。チームの皆さん、関係者の皆さん、そしてファンの皆さん、おめでとうございます。
その他にも「ハロウィン」に関わる不満も増加。外出制限がないハロウィンということで渋谷等の特定エリアに多くの人が集まる事やそれによる風紀の問題を懸念する声が多く寄せられました。特に、韓国ソウルで大きな事故が発生した直後の30日(日曜日)には密集となる事への懸念が多く寄せられました。
そのようなトレンドのなかで、今週は「年末調整」、40代女性で増加した「読み取り」に注目します。
年末調整のUXを最適化して
先週は「年末調整」に関する不満が増加しました。毎年この時期には増加するキーワードですが、今年はどんな不満が増えたのでしょうか。
まずは「年末調整そのもの」や「年末調整のやり方」が分からないという声が複数寄せられました。税金・納税やこれに関して必要な手続きを学ぶ機会が少ないことが背景ともとれる不満も寄せられており、「手続き」としてではなく「なぜ必要なのか」を含めて分かりやすく示すことが未だ求められています。
続いて、今年の「年末調整」不満では、手続きのしにくさに関する不満も多く寄せられました。まずは、「文字の小ささ」について。各種手続きのための書類の文字が小さすぎて読めない、あるいは、記入欄が狭すぎて書きにくい、という不満です。
新聞の文字も大きく印刷されることが多いこと、またスマホやPCの画面でも文字の大きさを自由に見やすい大きさに変えられること、などから、「文字の小ささ」に伴う読みにくさに生活者が敏感になっている可能性があり、年末調整に関わる「読みやすさ」「記入のしやすさ」が求められていると考えられます。
「申請者目線(ユーザーファースト)」で手続きに係るユーザーの「体験(いわゆるUX)」をゼロベースで見直すことも求められているようです。
また、年末調整をサポートするオンラインサービスが普及していることもあり、「オンラインでの手続きなのに完全なペーパレスになっていない」ことも今年らしい「年末調整」不満と言えます。
特に、自宅にPCやプリンタがない家庭も増えている中で、在宅勤務に伴い自宅で年末調整に必要な書類を準備しなければいけないケースにおいて、「なぜ手続きはオンラインなのに最後は紙の提出が必要なのか?」という不満が生まれているようです。
もちろん、現行の制度では紙の提出が必要である前提だとは考えられますが、そのような前提を変更できる可能性はないかを含めて、「年末調整」のユーザー体験(UX)をユーザーファーストの観点で見直してみることが、結果として、「年末調整」以外の各種行政手続きの手続きフローの最適化を加速させるきっかけになるかもしれません。
便利な「読み取り」にイライラ
先週、40代女性において「読み取り」に関する不満が増加しました。
40代女性が抱える「読み取り」不満とは何なのか。早速見ていきましょう。
「読み取り」不満の内容をみてみると、様々な「情報」をデジタル技術で「読み取る」際の不満が多く集まっていることが分かりました。
世の中でのデジタライゼーションが進み、それが生活者の日常に普及していることを示す不満と言えますが、どんな不満があるのか、整理します。
まずは、「読み取りにかかる時間」についての不満。マイナンバーカードを保険証として用いる場合に時間がかかることや、電子マネーでの支払い時にレジでの読み取りに時間がかかることなどへの不満が寄せられています。
次に、「読み取り」のしにくさへの不満。「スマホのカメラでのQRコードの読み取りにくさ」や「セルフレジでのバーコードの読み取りにくさ」がこれまでにない決済周りのストレスを生み出しているようです。
デジタルでの読み取り=スピーディという期待があるなかで手続きなどに時間がかかるとかえってストレスがたまるようなシーンがあるようです。
特にレジなど決済のタイミングは、後ろに人が待っているケースがあることもあり、「手間取ってしまうこと」へのプレッシャーが大きいかもしれず、そのような中で「読み取り」がうまくいかないことが苛立ちをもたらしているようです。
「読み取りの精度・確からしさ」についての不満の声も聞かれています。
本来は便利で生活を快適にストレスフリーにするはずのデジタル技術がこれまでになかった「新たなストレス」を生み出している様子が分かります。
全体としては便利で快適になっている前提ですが、便利・快適になるデジタル技術だからこそ、生活者はちょっとした不便や不都合に敏感になってしまっているのかもしれません。
生活者一人ひとりがちょっとゆったりと構える心も必要かもしれませんが、一方でそんな心に甘えず、更なる技術向上・利便向上が求められているのは言うまでもありません。
まさにちょっとした「不満」が「企画・開発の種」と言えます。
まとめ 「年末調整」「読み取り」不満の共通項
「年末調整」不満に「読み取り」不満。
今週注目した2つの不満に共通するのは、「手続きできればいいじゃない」「前よりは良くなっているじゃない」という供給者目線ではなく、一人一人のユーザー・生活者がどのような気持ちでその手続きやサービスを利用しようとしているのか?という「背景」を解像度高く理解するのが大切だということ。
いわば「ユーザーファースト」でユーザー体験(UX)をデザインすることの大切さ。
一つ一つのサービスや手続きがこんな「ユーザーファースト」発想でデザインされれば私たちの生活はもっと素敵にアップデートされ、商品・サービスももっと魅力的になると思います。
皆さんが穏やかな一週間を過ごせますように。