見出し画像

うたたね 認知症と夢の時間

「すいませんー道教えて」

朝の6:30過ぎ、ルーティーンで走る近所の遊歩道で前から歩いてきたおばあちゃま。

「どうしました?迷子なの?」と聞くと、
「そう、栃木県栃木市に行きたいのに道がわかんなくなったの。迷子だと思う。駅に行けばわかると思う。」
「そっか、じゃあ一緒に駅の方行こうか。」
「ありがとうねーお願い。」にこーっと笑ってくれる。

出会った場所は東京都三鷹市、
認知症の夢の中の時間の方だなとすぐわかる感じだった。

10年ぐらいこの道を毎日のように訪れているけど、
こういう方と遭遇したのは初めて。

以前勤めていた会社で、ケアホームの仕事も数多く携わらせていただいたので、

夢の中の方とのやりとりは、かなり経験させていただいた。
それでも、なんでもない街で出会うとちょっとびっくりする。

「迷子困ったねー でもきっと案内してくれる方のとこ行けばお家にすぐ帰れるよ、駅より手前に交番があるんだけど、そこに行ってみませんか?」と話てみると、
「うん、わかった。いいよ。」とお答えいただいた。

でも、なんでもない住宅街からは20分ぐらいはかかる距離だった。
スタスタと歩いてくださる方だったので、一緒に駅の方を目指して歩く。

「家に帰るの、駅まで行けば帰れると思う。家は栃木県栃木市!」これをやっぱり繰り返すおばあちゃま。

10分、15分とすたすた歩いて行ける方。
80歳は超えていらっしゃる感じするけど、足腰お元気だな・・

「休憩します?」と声をかけても、
「大丈夫。いけるよ。ほんと悪いね、」と
ニコーっと素敵な笑顔で笑ってくれる。

顔はその方のこれまでの人生が本当に現れる気がする。
顔の表情の奥底から純粋な綺麗なエネルギーが溢れてる。

「ありがとねー、ごめんねー、大丈夫??お礼しなきゃね。」と、
「お家に帰りたいの、栃木県、栃木市、良いところよ。」と、
何度も何度も繰り返す。

純粋で無垢な感じは、赤ちゃんも歳を重ねても同じ感じがする。
何もかも手放して「いまここ」にある感じ。

「あ、ここ通ったことある、知ってる、井の頭公園でしょ。」
「知ってるの?来たことあるの?」
「よく来たよ。」

急に、今の世界の現実がでてくる。

このおばあちゃまの中では、夢の中と現実がいったりきたりいつもしてるんだろう。

無事に目的地の交番まで送り届けて、少しやりとりして、
プロに任せて、私のお役目はおしまい。

いつもの朝の1時間ちょっとだけど、
おばあちゃまと時空の旅を少ししたので、時間の流れがいつもと違った。

少しの間だけど、お話しできてよかった。笑顔が素敵な方だった。

うたたねのような時間をご一緒できた気がした。
また考えるきっかけをいただいた。

先のことはわからないけど、
いただいた時間の中でできること、無理なく、楽しく続けていきたい。


今日もお読みありがとうございました。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?