ユキヤナギの季節に想う
通学路にユキヤナギの生垣に仕立てた家があった。
少し高台にあるその家は、春になると満開のユキヤナギが風に揺れ、小学生だった私は素敵な家族が住んでいるに違いないと勝手に想像して、憧れていた。
地元の大学に進学した私は、車の免許を取り、いつからか通学路になっていたその細い道をあまり通らなくなった。
小さな地元の町は聞きたくない噂ほど耳に入りやすい。
ユキヤナギの館はご主人が病死され、その後売りに出されていたそうだ。
あの頃の憧れのまま時が止まっていた当時の私は、その噂はとても寂しくて、会ったことも無かった持ち主の死がとても辛く感じたのだった。
時は流れ、今では手のかかる花木を庭木にする家庭は殆どない。
私はそれなりに大人になり、手入れの行き届いた庭を持つ邸宅を見ると、その家族の幸せが末永く続くことを願う。
家人それぞれの支え合いがあって、家は映えるということが分かる人になれたことに感謝して。
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