東京ステーションギャラリーは、ふらっと訪れて大後悔する場所だった
東京ステーションギャラリーにて、7/13から開催されている「空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン」。日本での開催は30年ぶりだそうです。
年明けには、名古屋、大阪も回るらしいんですが、はやく見たい!東京ステーションギャラリーにも行ってみたい!と、足を運びました。
かる~い気持ちで行ってみたら、大後悔。
そもそも、東京を発つ日にうっかりポスターを発見してしまったんですね。
つめつめの予定を調整しながら美術館に到着したのは、16:30ごろ。しかし、さすがは駅近アーバンミュージアム、なんと18:00まで開けてくれているじゃありませんか!わざわざ来てよかった!
…………
…………ウッ
ウゥーーーーーーーーーーーッ!!!!!
結論、3時間くらい欲しかったです!!!!!(泣)
まず、「作品数が230点近く」との記載。
Really???事前情報ゼロの私はあわてます。
そして、ミュージアムショップが充実している!!!
展示会のグッズが所狭しとならび(そして欲しいのが多すぎて迷う)、しかも東京駅の赤レンガ駅舎グッズも売られていたんですよね。けっこうかわいいんだこれが。
さらに、ふつうの美術館と違って、ミュージアムショップだけ入ることは……できない……。
とにかく、お時間には余裕を持って!!ご来館ください!!!!
繊細なマルチクリエイター
ドローイング、油彩、水彩、版画、彫刻、公共・商業作品、アニメーションと本当にお腹いっぱい大満足でした。
そして、一つ一つの作品が、本当に繊細。線の具合も色彩のグラデーションも、どうしたらそんなふうに描けるの?とつぶやきたくなるほど。
彼が、彼の父親に逆らって、建築ではなくアーティストの道を選んでくれて本当によかったなと思います。
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撮影NGだったので、印象にのこった作品たちのメモを、以下に。
ドローイング
入口は、ドローイング展示。
100を超える作品が、水平線の彼方かな……?と思うほど並んでいましたね。
あいまに彫刻もあり、どこから見ていいのか本当に迷います。
フォロンの目で世界を見つめると、日常がこんなにも面白さで満ちているんだなぁと。
ソファーの中身は水槽だし、美しい横顔のフランスパンが売られているし、
引きで見るとものすごく見応えがある直径1m近いメガネが存在するし、脳の「引き出し」を具現化しているし、ホウキの中には渋~い顔が隠れている。
何かを連想させる作品も、いくつかありました。
例えば、高さ15cmほどの木彫り像。日本史に出てくる木彫りの仏様の像に、そっくりだなぁと思うのです。
ほかにも、一人の大男が数十人の小男に担がれていて、ガリバーかなあとか、両目の位置に二つの唇が描かれていて、「目は口ほどにものを言う」かなあとか。
ちなみに、ドローイングコーナーの後半ぐらいから、色彩豊かになりゆく感じがありました。実はこれ、配偶者や、ウィリアムターナーの影響なんだそうです。他者と関わることで、彼の世界が広がり、作品に体現されていったわけですね。すてき。
矢印、都市
次の部屋では、「矢印」や、「都市」をテーマにした作品がずらり。ひとことで言うと、理性を揺さぶられる作品が多かったです。
私がアート作品に求めているものは、どちらかと言うと、言葉にならない「感情」を見つけたり、体験しに行ったりすることなんですよね。
と、言語化してみてようやく気づけた。ありがとうフォロン。
ゆえに、気になる作品は少なめでしたが、唯一気になったのが、『装飾プロジェクト』。
技法や材質は「グラファイトカラーインク/水彩/色鉛筆」とありました。
甘くて、美味しそうな、かわいい扉の絵。矢印や都市を直接的に描いた作品が多い中、異彩を放っていましたね。
とはいえ、入口なのか、出口なのか?と想像させるその風体は、まちがいなく「矢印」でした。
がらっと変わってぞっとした
告知ポスターからは想像できない空気がひろがっていました。
ポスターも、ドローイングや他の作品もそうですが、ここまでのフォロンは基本的に、ハートフル・暖か・ユーモアのある絵を描く人です。
それが、この部屋に来たとたん、「ああ、人って多面的だよな」と頭が冷やされました。環境問題や社会問題をテーマに、悲しさ、恐怖、不安といった負の感情をこれでもかと描いていたんです。特に、『難問』と言う絵の、青白い人や血痕にぞっとしました。
「花がなくても生きていけるけれど、木や花がない世界では、私たちは死んでしまう。それは絵でも同じことだよ」
そう言うようなことを、フォロンは口にしていたそうです。
宇宙
さて、続いては、フォロンの「宇宙好き」な一面が見えてきます。
一番笑ってしまったのは、星座の一部をダンベルに見立てて、ムキムキの体操選手のような人が持ち上げている絵。ああ、今これを読んでいるあなたに実物を見てもらって一緒に笑いたいです!
あとは、タイプライターをテーマにした2種類の作品ですね。
アニメーションと、まるで水彩のように美しいグラデーションのシルクスクリーンと、どちらも楽しめてお得♪
アニメーションのクライマックスがとっても素敵でキュートでした……!(東京では、9/23まで開催していますよ!)
商業でも大活躍!
さらに進むと、壁一面にポスター、ポスター、ポスター!
いちアーティストとしての作品にくわえ、映画や本の宣伝ポスターも描いていたんですね~。Apple社(Mac)のポスターもあって、びっくり。彼は2005年まで生きてたんですもんね……!
私は近代の展示会ばかり訪れているので、現代にまつわるモチーフが出てくると、本当に驚いてしまいます。
『国際音楽祭ヴァンス75』が特にお気に入り。
擬人化されたバイオリンが、指揮棒を振りかざしています。が、よく見ると、自分の体にある、弦を弾こうとしているようにも見えます。
指揮者・プレイヤーの二刀流。ユーモラスさもあいまって、すごく好きでした!
見ている人と、会話する作品
フォロンの絵には、余白があると言いますか、鑑賞者と一緒に遊んだり、話したりしようとする感じが見受けられるなぁと、様々な作品をみながら感じていました。
まさにその通りで、彼が目指したのは「開かれた絵」。ジョルジュ・モランディ、パウル・クレーをリスペクトしてのことなんだそうです。
最後の部屋だ!よーし!
と思ったところで、閉館アナウンスが……。40枚ぐらいをざざっと見ました。
釘付けになったのは、『月世界旅行』と、水彩と色鉛筆で描かれた淡い作品、青い炎を持っている『見知らぬ人』、木に書かれた油彩である『青い旅』。そして、中国の水墨画のような『夜明け』。人の目が、太陽のように描かれています。
あとは、『上昇』と言う、長くて大きな階段をのぼっていく作品。
深層心理をのぞかれた心地ですが、今の自分にとって、未来へ行くこと・より良い人生を歩んでいくこと・成長すること、といったキーワードが、ポポポっと浮かびました。
それにしても、最後の部屋の、未来や希望に満ちた感じがすごく好きだったなあ……。
またおいでってことですね。フォロン。