老人ホームの居室に監視カメラをつける夫①
60代の妻が入居している個室に、監視カメラを何台も設置する夫がいる。この夫婦は妻が施設に入居する前、10年以上もの間、別居していたそうだ。
数年前、私の勤め先である老人ホームにAさんが入居した。その時に付き添ってきたのは、夫とは別の男性(Oさん)だった。
Aさんは難病を患い、歩けば転倒し認知症の様な症状が進んでいて、自分の名前も言えない状態で入居してきた。この状態になるまで同居して介護していたのは、夫ではなくOさんだった。
Aさんは北海道出身で、短大卒業後に就職しそこで夫と出会った。結婚後は子供一人を授かり、専業主婦として、転勤の多い夫と一緒に転居を繰り返していたようだ。
Aさんは夫と別居してOさんと生活していた訳だが、施設に入居する際には、夫がキーパーソンとなり身元保証人として手続き等を行った。
その後、Oさんは目立たないように面会に訪れていたが、AさんはOさんを徐々に認識できなくなっていった。(夫と息子はOさんの存在を知っている)
夫の最初の要望は、施設での往診をやめる事だった。老人ホームは大抵、往診してくれる内科のクリニックと提携していて、入居者は月2回程度の往診を受ける事になる。持病があって薬を飲んでいる人が多いし、外部の病院に定期的に受診するのは家族にとっても負担になる。風邪や体調が悪い時も診てくれるし、相談にも乗ってくれるので入居者のほぼ全員は定期的な往診を受けていた。
夫は自分が病院へ定期的に連れて行く、という理由で往診中止を申し出てきた。
そこから、夫の要望はエスカレートしていくのだ。
続く