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〜夏旅記録〜ひょんなことから上高地

お盆休み、私と夫は飛騨高山に二泊三日してきた。

旅行直前に発令された南海トラフ地震の臨時情報に慄きつつも、「やっぱりキャンセルしたくないし」と、意を決して(その横で夫はのほほんとしていたけれど)行ってきた。

名古屋まで新幹線で行き、そこから特急ひだに乗り換えだったのだが、私は名古屋駅の新幹線ホームには立ち食いきしめんのお店があることを、しっかりリサーチしていた。
夫をぐいぐいと引っ張って食券を買い、いざ実食!時間がなくて朝ごはんが食べられなかったお腹に、つるつるもちもちの麺とあったかいかき揚げが入り、すごく満たされた。

初の特急ひだは、さながらヨーロッパの鉄道に乗っているようだった。
というのも、同じ車両にはイタリアからの団体客とフランスからの旅行客。それに、少しクラシカルな車内の雰囲気と、どんどん緑が深くなっていく車窓からの景色も相まって、乗ったことはないけれどスイスの登山鉄道にいるかのような気分だった。

「ねぇ、二日目どこ行く?」
列車に揺られながら、隣にいる夫に聞いた。泊るところと交通手段は予約していたものの、何をするかはあんまり決めていなかった(笑)

そこで、飛騨高山の観光のページのモデルコースを見てみると、「飛騨高山の古い町並と上高地をめぐる2日間の旅」というのがあった。「飛騨高山から簡単にアクセスできることをご存じですか?」との記述に、
(あれ、上高地ってよく聞くけどどこだったっけ?)なんてお恥ずかしながら思っていた私だけれど、夫に見せたら、「ここ行こうよ!」と、即決。
では、明日は頑張って早起きしようということで、夫婦会議は終わった。

高山駅に着くと、私たちはホテルに直行して荷物を置き、古い町並のほうまで歩いてみた。
高山陣屋という昔のお代官様がいた場所の前まで行くと、「みだらし団子」の看板が目に飛びこんできた。一本100円の小ぶりのお団子で、みたらし団子と一緒なのかなと思って食べてみたら、甘くなく醤油の香ばしい味がした。勝手に甘いタレがかかった味を想像していたので面食らったけれど、軽食感覚でさくっと食べれて、思わずもう一本食べたくなった。
さっそくだから、と、今度は違う店でみだらし団子を食べると、これもまた醤油ベースなんだけど、焼く人が違うからか微妙に味が違う。もっと食べ比べたくなって、結局四店ぐらい回った。おかげさまで、しっかり町も散策でき、色々と満足した。


高山でゆったりした時間を楽しんだ次の日。上高地に行くために、まずは平湯温泉に向かうバスに乗った。9時台のバスだったが、バスターミナルに行った時点でけっこう人が並んでおり、(乗れるんだろうか……)と、ドキドキしながら列に加わった。この緊張は平湯温泉で乗り換えするときも続き、結局上高地まではすんなり行くことができたのだが、上高地ってどんなところなんだろうと、どんどん期待値も上がった。

大正池と焼岳

バスを降り、人の流れについていくと、大正池が見えてきた。
山々と青空が映った澄んだ水面は、まさに「ピュア」という言葉そのもので、頭と心が浄化されていくような気持ちに。
写真の焼岳という活火山が噴火し、一夜にしてできたのが、この大正池らしい。

池にある白い枯れ木には、最果ての地のような雰囲気もあって、「ここから先は本当に進めるのかな」と、畏怖の気持ちすら湧いてきた。


当初は、大正池に行ったら、その先はハイキングコースになるみたいだし暑いだろうから、引き返そうという話だった。でも、実際に大正池に行ってみたら、私も夫も河童橋までは頑張るか!という気分に。河童橋まで、約一時間のウォーキングが開始した。

河童橋までの道のりは、想像していたよりはさくさく進んだ。関西の湿度激しい真夏の気温に晒されていた私たちには、上高地は暑い中にも涼しさがあって、全然苦にならなかった。でも、道中には数日前のヒグマの目撃情報も貼られていて、クマよけの鈴を鳴らしている人もちらほらいた。

途中、ホテルが見えてきて、小休憩を取った。水を買おうとお土産屋さんに入ると、もみほぐして飲むタイプのフローズンヨーグルトを発見!「ウォーキングのお供にしよー!」と、興奮気味で買った。冷たくてさっぱりとした甘さのシャーベットの喉越しが、良いこと良いこと。想像以上に体にしみた。

そんなこんなで河童橋の近くまで辿りついた私たちなのだけれど、どんどん近づいてくる光景に違和感を覚えた。
「あれって、人?」
思わず聞いてしまった私。
そう。河童橋は、まるで渋谷の竹下通りかといわんばかりの、人、人、人だったのだ!!
思えば、バスターミナルで待っているときから人は多かった。でもハイキングコースを歩いている分には人もばらけていて混雑もなかったので、完全に油断していた。
カフェやレストラン、お土産屋さんが集まっている河童橋には、近くに上高地バスターミナルもあるので、上高地に来た人でとにかく賑わっていた。
芥川龍之介の「河童」の舞台にもなった場所だけれど、「これじゃあ、河童も今日は出られないね。」と、夫と話した。

橋の近くで遅めのお昼を食べて、バスターミナルに向かったけれど、帰りのバスの列はまぁそれはまた見事大行列で、みんな猛暑の中一時間以上待っていた。
私と夫は列に並びながら、交互にお土産屋さんに行ったり、涼みに行ったりして、楽しみながら暑さや疲れをしのいだ。

お土産屋さんで見つけて思わず買ってしまった、おしりんご!

上高地から高山までの帰り道は、二人とも疲れてしまって、バスでもチーンという状態でったけれど、とにかく満足感でいっぱいだった。

ラジオでときどき山や登山の番組を聴いていて、そのとき穂高連峰とか剱岳の名前をよく耳にしていた。自分には縁遠い話だと思っていたのに、まさか近くに行けるなんて。しかもプチハイキングもしてしまったし。

高山に戻ると、そろそろ夜ご飯という時間だった。でも、お腹は空いたけど、疲れがどっと出て、がっつり食べるのはしんどい……。「じゃあ」と、食べに行ったのはラーメンだった。私が頼んだ本日のラーメンは、鮪の出汁がしっかり入ったスープで、クーッと唸るほど五臓六腑にしみた。

旅の終わりって、こうやってしっぽり終わることが多い。すっごく活動的だった昼間の自分が、遠い日の思い出みたいに思える。
そんなことを思いながら、私と夫はビールを飲んだ。

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