歌手が世界初IOCオリンピックバーチャルシリーズ野球競技で準優勝した話
シンガー・ソングライターの冨永裕輔です。
この度、世界初開催のIOCオリンピックバーチャルシリーズに出場し、準優勝しました!
スポーツや格闘などのコンピューターゲームで戦うeスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)。
今回初めてそのeスポーツがオリンピックの名前を冠したIOC公認の競技となったわけですが、なぜ歌手である僕が日本・韓国・チャイニーズタイペイから約7,000人参加の予選を通過し本大会で準優勝するに至ったのでしょうか。シンガー・ソングライターとなって15年ほど経ちますが、ゲームの話などほとんどすることがなかったこの僕が。
人生に起こったこの体験にどんな意味があったのかを知るためにも、予選から本大会までのこの一ヶ月間をまとめていきたいと思います。
・歌手の僕を応援してくれてきた方
・パワプロで知り合って実は歌手だったと驚いてくれた方
・やりたいことがわからない方
・将来に悩んでいる方
・大好きなことはあるけど我慢している方
・チャレンジする勇気がない方
・素の自分を出すことを怖れている方
などに読んでいただけたら嬉しいです!
コロナ禍発生!ライブ活動ができなくなる
2005年にソロ活動を開始して以来、活動の中心として毎週のように継続してきたのがライブ。ライブに向けて新曲を書き、そのライブでファンの皆さんからもらった反応やエネルギーからまた新しい曲が生まれ、次のライブステージに立つ。そのようにしてたくさんの楽曲を生み出し、音楽活動を続けてきました。
2020年、コロナ禍によって初めてそのライブ活動ができなくなります。決まっていたライブが次々に延期、中止となるコロナ禍の日々が始まったのです。
もちろん、レギュラーラジオを中心とした音楽活動や、配信などに力を入れ、新しい時代の音楽活動に対応していきました。
しかし、大きな目標に向かって努力し、夢を叶え、その喜びをファンの皆さんと共有するというライブならではの充実感、達成感に代わるものはなかなか見つけられませんでした。
そんな2020年の夏。胸がときめく目標を見つけます。「eBASEBALL パワフルプロ野球」のプロテスト開催を知るのです。
幼少の頃から野球が大好きで夢はプロ野球選手。歌手として福岡ソフトバンクホークス和田毅投手の登場曲「21」、「War」を作詞作曲させていただくなど野球には縁がありました。
野球ゲーム「実況 パワフルプロ野球」いわゆる「パワプロ」は発売から27年来プレイしていました。
そんなパワプロの冠が近年、「実況」から「eBASEBALL」に変わっていたことはなんとなく知っていましたが、自分とは直接関係のないことだと思っていました。
実際にライブ活動などが忙しくてゲームを真剣にやる時間がなかったこともありますが、歌手としての自分自身に求める姿と、ゲームやeスポーツの世界はイメージがかけ離れたものだったので、人前でゲームやパワプロの話をする機会もほとんどありませんでした。
その頃までの僕は、ゲームは気分転換に部屋で一人で遊ぶようなもので、そのような趣味などの自分の素というものは、隠すべき恥ずかしいものだとすら思っていたのです。
世界初のプロゲーマー歌手を目指す!?
ですが、コロナ禍によって世の中は大きく変わり、自分自身の状況も一変しました。これまで大切にしてきたことが継続できない現実とともに、多くのひとに意識の変容が訪れたと思います。
僕の場合、今まで歌手として頑なに信じて追い求めてきたこと、CDのヒットや観客動員数を伸ばすことが、僕の本当の目的だったのだろうか?と改めて問い直す機会になりました。
そもそも大好きだから歌の道を選んだものであり、歌手の成功像を求めることが答えではなかったはず。成功像になることが応援への恩返しだと信じていた部分もあったけれど、本当は僕が大好きなことに夢中でがんばっている姿を、喜んで応援してもらえていたのではないかと気づきました。
それに、今まで作ってきた歌のメッセージも、レギュラーラジオや、スクールコンサートで子どもたちに伝えるメッセージも、大好きなことをする素晴らしさということでした。
大好きなことに夢中でチャレンジする素晴らしさを伝えたい。
コロナ禍によってそのエネルギーをかけられなくなったのなら、もう一度シンプルに大好きなことに集中してみよう。
そうだ、それなら僕にはパワプロがある。
世界初のプロゲーマー歌手を目指すことにしたのです。
eスポーツのプロプレイヤーの方達に比べたら年齢も重ねていますし、反応速度や瞬時の判断が重要なスポーツ選手としてはマイナスになるかもしれません。また、歌手とゲームというイメージも世間的には結びつきにくいかもしれません。しかし、大好きなことをやって生きるという自分らしい生き方をする先にこそ、進むべき道は開けるような気がしたのです。
それから、少しずつ大好きなパワプロの話をラジオやSNSでするようになりました。それに対して僕が心配していたようなファンの皆さんからの否定的な声は全くなく、また、同じ趣味を持つ人たちとの輪も広がっていきました。
そして迎えた2020年夏、オンラインで一週間に及ぶプロテストが開催。予選の状況はパワプロの公式サイトにも表示され、ファンの皆さんが一緒に楽しみながら応援してくれました。
結果的にはプロテスト予選通過の上位20人には入れませんでしたが、プロテストに向けた事前の準備や予備知識もないなかで50位くらいの順位だったことは、少しだけ次への自信になりました。
それ以来、オンラインで全国のプレイヤーさんとの戦いを楽しむようになり、益々パワプロやeスポーツの話題をする機会が増えていきました。
自分の部屋で一人で楽しむものだった趣味が、みんなと繋がりみんなと楽しめる目標へと変わっていったのです。
IOCオリンピックバーチャルシリーズにパワプロ採用
2021年。相変わらずコロナ禍の波は収まらず、ようやく再び届きはじめていたイベント出演のご依頼なども、やはり延期や中止になっていました。
練習と実践を続けていたパワプロのほうは、少しずつ成長を実感。1月にはオンラインのパワプロ杯で初優勝することができ、PR(パワレート)という偏差値のような数値も、60がやっとだったところを69を超えられるようになりました。
ぼくがプレイしているのはNintendo Switch版であり、PS4版には多くのパワプロプロプレイヤーがいるため、PRの数値では単純比較はできません。ただ、以前のぼくより成長していることは感じられました。1月の段階では一週間で100勝すれば50敗していましたが、春頃には100勝に対して10敗しなくなっていたのです。
そんな矢先、びっくりするようなニュースが飛び込んできました。
eスポーツで戦うIOCオリンピックバーチャルシリーズの世界初開催と、その種目にパワプロが選ばれたというニュースでした。
このタイミングと流れはまるで自分に語りかけているかのような運命を感じました。
「人生で愛を注いだものはやがて自分の人生に愛を返してくれる」
スクールコンサートなどで伝えてきたメッセージです。だから、大好きなことを大切にしてほしいと。
自分が幼少から愛してきた野球とパワプロが、歌手としてぶつかったコロナ禍の逆境というタイミングを見計らったかのように、愛を返してくれたようでした。
大好きなことにチャレンジしなければ自分の生き方に反することになり絶対に後悔すると思い、オンライン予選に参加することを決意。
また目標に向かってファンの皆さんとともにワクワクドキドキし、今度こそは良い結果を喜び合いたいと思いました。
試合を戦って11名の代表枠を競うPS4版と、ホームランの積算飛距離で8名の代表枠を競うNintendo Switch版でオンライン予選が行われることが発表されました。
僕はホームランの飛距離でパワプロ愛と情熱を表現すべく、ホームラン大会部門に参戦することにしました。
そして、5月24日(月)10:00から5月30日(日)23:59に渡る激戦の一週間が始まったのです。
約30,000本のホームラン
子どもの頃、福岡ドームのグラウンドに立つことが夢でした。歌手としての国歌独唱でその夢は叶いましたが、プロ野球選手になるという夢はパワプロの中だけで叶えていました。人知れずパワプロで作っていたもう一人の自分。そのもう一人の自分でホームランを打ち歌手の僕をオリンピックの舞台に立たせる。eスポーツとリアルの不思議な繋がりがくれた機会に感謝し楽しみながら、予選通過を目指しました。
福岡ソフトバンクホークス公式戦での国歌独唱は7度を数え、同一歌手としては最多となっているそうです。
パワプロは球場設備やスポンサー広告まで忠実に再現されています。
コロナ禍が収束して再び満員のドームで国歌独唱できる日を願いながら、今日はバーチャルの世界でホームランを狙います。
ホームランを打つためには、いくつかのポイントがあります。
ピッチャーが投球したら表示される投球カーソルに、コントローラーのスティックを左手で操作して即座にミートカーソルを合わせて、タイミングよく右手でスイングボタンを押します。狙いとタイミングがシビアなシューティングゲームのようなイメージも近いかもしれません。
このとき、タイミングが速過ぎると、引っ張りの打球になり、ファールになって飛距離は加算されません。また逆に振り遅れてしまうと、ボールに力が伝わらず遠くまで飛びません。現実の野球の仕組みがうまく再現されています。
ミスをせずにホームランを打つ技術が大前提となり、さらにホームラン一本あたりの飛距離を少しでも伸ばすことが勝利への鍵となります。
そのためには、ボールの中心よりわずか数ミリ下を叩き、センターよりわずかに引っ張り気味のタイミングでスイングすると飛距離が伸びやすくなります。
いずれにしても、ホームラン以外の飛距離は加算されませんので、確実にホームランを打ちながら少しでも遠くに飛ばすことが求められます。
技術とパワプロ愛と情熱を兼ね備えた全国屈指のプレイヤー達との一週間の激闘は、1日平均約17時間にも及びました。少しでも休んでいる間に順位は逆転されます。皆が皆、仕事や生活のスケジュールをなんとかやりくりしながら、睡眠時間も削りながら戦ったはずです。
最後の土日などは二時間の仮眠のみで打ち続けましたが、他のプレイヤーの数字も止まることはありませんでした。そのライバル達の戦いの様子をお互いにTwitterのつぶやきなどで目にし、最後には励まし合い絆が芽生えていくことを感じました。
その間毎日、ファンの皆さんもSNSなどを通じて戦況を見守り応援してくれました。
そして予選の結果は…
日本、韓国、チャイニーズタイペイから参加した約7,000人の予選からファイナリスト8人に残りました。オリンピックバーチャルシリーズ代表権を勝ち取ったのです。
ちなみに上位10選手の総飛距離は、地球一周分に届いていたそうです。ホームラン一本の飛距離は約150メートルですから、おそるべし皆さんのパワプロ愛。パワプロ愛は地球を包みます。
襲われた不安とプレッシャー
予選を通過した安堵感と共に襲ってきたのは、本大会へのプレッシャーでした。
予選では、なんとか上位8人に入るという目標を持ちがんばりましたが、本大会では順位という結果が予選よりも重みを持ちます。
予選通過で安堵した心の隙間に、「本番で勝てなかったらどうしよう」という不安が入り込んできました。
大好きなことにチャレンジしていたはずなのに、心のどこかにあった「一位にならないと意味がない」、「称賛されたい」という気持ちが自分自身への過度のプレッシャーとなり、自滅しそうになっていたのです。
過酷な一週間の予選の反動もあったと思いますが、モチベーションが上がらず、病んでしまっていたと言っても過言ではない心身の重たさを感じていました。
それから数日間はパワプロを触るのすら怖くなってしまったのです。
言い訳や逃げ道を用意しようとしてしまう自分をコントロールできずに途方に暮れていましたが、そのことを応援してくれているファンの皆さんに伝えることもできません。
ですが、そう言えば、このような経験は今までの人生でも度々したことがありました。
歌の世界での大舞台や、人気番組への出演、オーディション、それこそ満員のドームでの国歌独唱などの本番に向かうときです。
4万人近い観客やプロ野球関係者に注目され、伴奏もなくアカペラで国歌を歌い上げなくてなりません。テレビ中継もされています。小さなミスさえも許されない責任重大な役目です。
歌の大舞台に立つとき、どのようにして本番に向かい、自分の持てる力を出すことができたかを振り返りました。
そこで、ハッ、と気付きました。
良いパフォーマンスができたときにいつも重きを置いていたのは、決して他者からの称賛ではなく、大好きなことができる喜びを感じながら己を磨くその「過程」だったということです。
失敗ではなく成功するプジティブな未来をイメージし、信じることで、自然とそのポジティブな未来に繋がるためのこう移動をとる。そうして歌手として自分がやっていた「己を磨く過程」を思い出して、やってみることにしたのです。
歌手としての自分が怖れを克服した
ポジティブな未来を信じると書きましたが、本番でリラックスして力を発揮するためには、敢えて過酷な状況で練習をして、それでも平常心でプレイできるかを疑うことも重要だと思います。信じるために自分に厳しく疑うのです。
リラックスした自宅などでの練習ではだれでも力を発揮できます。しかし、満員のお客さんや慣れない会場、カメラに包まれた緊張感の中で当然のごとく何度でも同じ力を発揮できてこそプロなのです。
ライブのリハーサルでは敢えて体力の限界まで追い込み、山道をランニングしながら歌ったりMCを繰り返すなどして本番に向かいました。その結果、本番ではリラックスして楽しむことができ力を発揮できていたのです。
ライブ活動などで培ったアプローチをeスポーツに応用することで怖れを克服し、本大会までやれる限りの練習を行いました。
もはや予選を終えてたくさんのホームランを打つ必要はなかったのですが、気づけば予選とそんなに変わらない時間をプレイしていました。
そして、長距離のホームランを打てたときの理由を探しているうちに、グラウンドの土の陰影をひとつの手がかりにすることをひらめきました。このようなひらめきは単純な繰り返しの中で突如舞い降りてくるものです。
投球カーソルにミートカーソルを合わせてスイングするとき、グラウンドの土の陰影も見極めながら即座にその位置を計り、ホームランの飛距離が出やすい角度でスイングすることで、1メートルでも遠くまでホームランを打つことを目指しました。
そこまでこだわって練習できたのは、思考をポジティブに転換して優勝を目指すための練習を求めたからだと思います。
本大会当日!いざ決戦の地へ
6月20日(日)、オリンピックバーチャルシリーズ本大会の日。
SNSやラジオ番組にファンの皆さんからたくさんの応援メッセージが寄せられました。
「応援しています!」「祈っています!」
全国の皆さんの想いを胸に決戦の地へ。
会場はesports銀座store(KONAMI)。黒雲の中にそびえ立つ建物は最後の決戦の場にふさわしい雰囲気を感じさせました。
幼い頃からパワプロをはじめ多くのKONAMI作品に親しんでいた僕にとって、プレイヤーとしてここにたどり着いたことに自然な運命の流れを感じました。
「子どもの頃からの大好きなことに人生のヒントがある」
それはいつも僕が歌手として伝えてきたメッセージでもあります。
会場に入ると、オリンピックバーチャルシリーズのユニフォームが用意されていました。
その後ついに、コロナ禍のなかでオンライン対戦をしたり、今回の予選で戦った名前だけ知っていた全国のプレイヤー達と、初めて顔を合わせる瞬間がやってきました。
激闘のオンライン予選を戦い抜いたライバルたちは、もはや同志です。ライバルがいるからこそ切磋琢磨し成長できたのです。同じ趣味を持つ仲間たちとの出会いを嬉しく感じました。
今までの人生で、自分と同じパワプロオタクと直接出会う機会はなく、対戦相手はいつもコンピューター。
しかし今ここには、間違いなく日本を代表するパワプロ愛をもつプレイヤーたちが集結していたのです。
ピンチを切り抜けた祈りの力
そしてついに、IOCオリンピックバーチャルシリーズ本大会の戦いが始まりました。
このとき、ひとつの想定外の出来事が起こります。
練習でプレイしていた球速レベルよりも、明らかに速い球が投げ込まれました。練習で身に付けた感覚でスイングすると、すべて振り遅れてしまいます。
思わず
「マジか。」
とつぶやきました。
周りのプレイヤーもやはりとまどっている様子でした。
ですが大きな大会がスタートすると、止まることはできません。IOC公式チャンネルでの配信収録も行われていたのです。
ある意味、本番で想定外が起こることは想定していたので、自分がやれる限りにやってきた練習を信じ、少しだけ自分の中のタイミングを修正し、良い意味で開き直り力を発揮できるように自分の世界に集中してプレイ。
緊張することは動物的な自然な反応なので、それも力を発揮できるための反応だと思い、可能な限りその緊張を心地よく感じるように努めました。
そうやってプレイしているとき、練習でも感じたことがないように指が滑らかに動いていることを感じました。
「これが応援の力、祈りの力なんだ」
と直感。
ファンの皆さんが全国から応援し、祈ってくれていることを感じ、感謝を込めて一球一球スイングしました。
そして15スイング中14本のホームランを放ち一位で準決勝を突破することができました。
迎えた決勝。
心身の緊張感は極限に。何もしていなくても腕や胸の筋肉は張り詰め、胸と腕のつなぎ目が今にもつってしまいそうな、刺すような痛みを感じていました。お腹にも重たさや冷たさを感じていました。自分の鼓動の音が聴こえてきます。練習で想像していた以上の負荷が、やはり本番では襲ってきたのです。
初級から速いタイミングで振ってしまいファールとなると、その後もなかなかスコアを伸ばせずに中盤まで四位で進みます。そこでもう一度気持ちを入れ直し、集中して、後半の逆転を信じてスイングし続けました。
最後の一球、予選から続くホームランの旅を最後は必ずホームランで締めくくろうと心に決め、アウトハイの直球をバックスクリーン左に運び、15本中12ホーマーの二位で戦いを終えました。
「予選からの激闘と、夢のような1日が終わったんだ…」
一位になれなかった悔しさはあるものの、それ以上に素晴らしいプレイヤーたちと最高の舞台で戦えた達成感を感じていました。チャレンジして良かったと素直に思いました。
戦ったすべてのプレイヤーさんの技術と集中力が素晴らしく、その中で戦い抜けたことは、ポジティブな気持ちでチャレンジし続けたからだと思います。
優勝はできませんでしたが、優勝すると決めて練習したからこそ準優勝という結果を得られたのは間違いありません。また、決勝でも最長飛距離賞を獲得できたことは、飛距離にこだわった練習の結果だと思います。不安を克服して積極的に取り組んだ努力は成果につながることを、音楽活動以外のチャレンジで体験することができました。
戦友たちとの青春
印象深いシーンがあります。
ある選手が悔しさのあまり楽屋に戻る通路で涙を流しました。
すると、その場にいたすべての選手が、その選手の肩や背中に手に手を添え、同じように涙を流したのです。勝った選手までもが涙を流していました。
悔しさのあまりに溢れ出したその涙の美しさに、そしてその気持ちに寄り添う心の美しさに、僕も涙していました。
「誇っていい。胸を張っていい」
口々にそんな言葉が聞かれました。
そのシーンを思い出す度に、今も胸が熱くなります。
住む街も年齢もバックボーンも違うみんなが、同じ夢を見て、同じ汗をかき、同じ涙を流したことは、青春と呼べる体験だったと思います。
この日、
「会えて嬉しかったです」
と何人かのプレイヤーに言ってもらえました。
僕もまた同じく、会えて嬉しかった気持ちを伝えました。
共に戦った佐藤選手が、僕の楽曲「21」が好きで聴いていると話してくれました。
感謝を込めて、人生で初めてこの日“チャピオ”入りのサインを書かせていただきました。歌手の自分と、もう一人のゲームプレイヤーの自分が、隣り合っている不思議な感覚でした。
ちなみに僕のeスポーツネームはチャピオです。
チャンピオンからきているのですが、まあ親しみやすいちょっと軽めのネーミングになっています。冨永裕輔の音楽活動は正統派のジャンルですので、それとは違うギャップを楽しんでいます。
「チャピオっていうネーミングセンスおれ最高にかっこいいな〜!」とか思っているわけではないので安心してください(笑)
ちなみに、チャピオの発音で僕がイメージしていたのはマリモとかカツオとかワサオとかのあれです。今回、10人に10人、チャにアクセントで呼ばれたのは意外でした。ゲームと言えば、「マリオ」のイメージかもしれませんね。
チャにアクセントがあると海外感とか近未来感が出る気がしますね。確かにマリオのオにアクセントを置くと急に田舎の長男感が出ますね。マリ男ですね。
僕は味噌汁と畳が好きな和風派です。イメージ的にはチャピ男でお願いします。
ホームラン大会の戦いを終えたあと、プロプレイヤー同士が戦うPS4版の決勝戦をみんなで観戦しました。
今まさに行われている試合を観ながら、みんながその戦況に一喜一憂しながら熱く語り合っている。素晴らしいプレイには自然と拍手が生まれる。
今までの人生で、いつもコンピューター相手にパワプロをしていた僕が、今は一人じゃない。同じくらいパワプロが大好きな仲間がいる。
こうして出会えたプレイヤーの皆さんはどなたも、真面目で優しく向上心ある良い人ばかりでした。
それは、パワプロの世界に流れている、
「大好きなこと(野球)で自分を成長させて夢を叶えていく」
という物語に惹かれた、そのような人生を歩もうとする人たちだったからだと思います。
eスポーツというバーチャルの世界が、リアルの実人生をより豊かで幸せなものにしてくれる可能性を存分に感じました。
自分の大好きなこと、自分の素を肯定して出したからこそ出会えた仲間、過ごせた幸せな時間でした。
準優勝という結果以上に僕が得たもの
大会の模様は6月23日(水)にIOC公式サイトにて全世界配信され多くの方々に観てもらえました。
(下記IOC公式サイトからアーカイブ放送がご覧いただけます)
放送を見守ってくれたファンの皆さんから、「おめでとう!」とたくさんのお祝いの言葉を寄せていただきました。
また、ご縁のあるプロ野球関係者の方々や、レギュラー番組のスポンサー企業、大使を務めさせていただいている北九州市や築上町、八王子市の皆さんにも喜んでいただくことができました。実は以前からeスポーツに携わっている知り合いが自分の周りにいたことも反響の中で知りました。長らく連絡を取っていなかった大学時代の友人からも「すごいね!」と久しぶりに連絡が届くなど、自分の知らないところでも応援してもらっていたことを感じ、とても嬉しく思いました。
もちろん準優勝という結果、順位というものも大事なことですが、結果というものはそれ自体が目的ではなく、自分を成長させるために努力する目標であって、その努力にふさわしい結果があとから与えられるのだと思います。大切なことは、どんな気持ちや態度で目標に向かい自分を磨き成長できたか。
そして僕にとってのオリンピックのハイライトとは、素の自分を出してみんなと繋がれて嬉しかったこと、その喜びを感じられたことだったのではないかと思います。
僕だからこそ担える役目
このnoteは、歌手の僕を応援してくれてきた人だけでなく、やりたいことがわからない人、やりたいことはあるけどチャレンジする勇気が出ない人、素の自分を出すことを怖れている人に届いたらいいなと思って書きました。
今回のIOCオリンピックバーチャルシリーズへのチャレンジは、自分の素を肯定し大好きなことで夢を追いかける機会をくれました。
不安を克服して積極的な気持ちで目標に向かい成長させてもらうことができました。
応援してくれるファンの皆さんと喜び合い、そして素晴らしい仲間たちと出会わせてくれたeスポーツに、パワプロに、IOCオリンピックバーチャルシリーズに、心から感謝しています。
日本でもeスポーツというものが海外のように盛り上がっていくかどうかは、今がとても大切な時期だと思います。
盛り上がればそこに産業ができ、仕事が生まれ、人生の選択肢が増え、夢を持つ人、幸せな人生を生きる人が増えます。
得意なことや大好きなことを選択できる人が増えることこそが、日本の未来の希望になると思っています。
そのためには、まずは認知を広めていくことが必要です。
心から楽しんでいる人のバイブレーションというものは、周りにも広まっていきやすいものです。
ホームラン大会の解説を担当された元プロ野球選手のG.G.佐藤さんもありがたいことに「21」を聴いてくださっていました。
メディアでの発信や、ステージから多くの人にメッセージを届ける機会があるシンガー・ソングライターの、そしてパワプロが大好きな僕だからこそ担える役目があるのではないかと思います。
子どもの頃からたくさんの喜びをくれたパワプロへ、そしてコロナ禍で目標を失いかけたときに情熱を取り戻させてくれて夢のような体験をさせてくれたeスポーツへ、微力ながら恩返しができれば幸せです。
シンガー・ソングライターとして届けてきた「大好きなことをする素晴らしさ」というメッセージは変わりません。
これからも大好きなことにチャレンジして生きていきます。
ファンの皆さん、運営関係者の皆さん、パワプラーの皆さん、本当にありがとうございました!
戦いを終えた戦友たちと。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
明日もあなたに良いことがありますように♪