問いから生まれる創造的対話とは ~情シスの勉強部屋①
情シスの勉強部屋
読書やワークショップを通じて、情シスが「IT技術以外」の様々なビジネススキルを身につけるためにまとめたコンテンツ「情シスの勉強部屋」。初回のテーマは、社内外のプロジェクト推進や新規サービス創出の場面に欠かせない「対話力」「ファシリテーションスキル」にスポットを当ててみます。
1. 課題図書「問いのデザイン」
先日、とある組織変革をテーマにしたワークショップに参加したのですが、その課題図書がこの「問いのデザイン」でした。発行は2020年、著者は安斎勇樹さん、塩瀬隆之さんで、5万部売れているベストセラーです(この分野の本で5万部は凄い)。この本を読んで分かったことは、部内の業務改善・組織横断プロジェクトの推進・新規サービスの創出などの場面で「デザインされた問い」を的確に投げかけることができれば、参加者の思考や感情は刺激され、対話を通じて新たなアイデアが生まれるようになる、という事でした。さらに、個人的にこの「問いかけて対話する」スキルを身に着けることで組織変革やプロジェクト運営を推進するリーダー(ファシリーダー)に近づくことができるぞ、これは凄い!本を読み終えた時にはそんな想いが頭を駆け巡ったのでした。
2. 全体構成
まずは本書の紹介を簡単に。
最初は、ワークショップやファシリテーションの手順や技法本だと思っていましたが、違いました。まず「問い」の定義に始まり【1章】、その次に「物事の本質を捉え、解くべき課題を定める(課題のデザイン)」、「目標を定義し設定する(課題の定義)」【2章/3章】と続くのです。つまり、本書の3分の1にあたる約100ページ(1章2章)は、ワークショップやファシリテーションで創造的な対話をするための前提について書かれているのです。正直、1章と2章だけでも十分にボリュームがあり、中身も濃厚(実務ですぐに活用できる)なので、ワークショップやファシリテーションをしない人でも、課題解決のアプローチを学べてしまいます。
【3章/4章】は「問い」を投げかけて創造的な対話を促進する「ワークショップ」の定義とその進め方のプロセスを解説。【5章】は、ワークショップを計画し問いを投げかけながらプログラムを進行する「ファシリテーター」の役割とスキルが書かれており、最後の【6章】には、それらの実践事例集がまとめられています。この手の本にありがちな、難解な理論は一切なく、どの層の人が読んでも理解できる平易な言葉でかつ具体的に書かれているのが本書の特長といえるでしょう。
早速、第1章の「問いとは何か」というテーマを一緒に考えてみましょう。
3. 問いかけの事例
まず最初に、普段の仕事で「対話や問いかけ」をする場面がどれくらいあるのか、情シス目線で考えてみました。尚、進捗会議、朝礼でのお決まりの問いかけ(最後に全員に対して共有することや連絡事項はありますか?)については、メンバーの意識が変わったり創造的な対話は生まれることが少ないため、ここでは触れません。
▼業務改善の検討会議
ここでは問いの仕方により議論が活性したり、逆に場がシラけたりします。
「経理のAさんの課題に対して良い解決策があれば意見を出してください」→全員無言..
(いや、ちょっと考えさせて💦いきなり結論は出ないでしょ)
(あー、そもそも経理の業務自体わからんから、そこ説明して欲しいなあ)
結論を急ぎすぎています。しかも良い答えを導こうとしています。これでは良い結果は得られないようです。
▼部門横断ワーキンググループ
基幹システム刷新など、新規システム導入に向けて利用部門を巻き込む際に、情シスが主催者となって「ワーキンググループ」を立ち上げて課題解決や合意形成を行います。特に顔合わせ直後の初期段階では、立場や環境が異なる複数の担当者が集まるため、議論にすらならない事を経験したことはありませんか?。
「顧客管理の課題を各部門で出して頂きたいのですがいかがでしょう?」
→「総論賛成、各論反対」方向性が一致しない意見ばかり..
(顧客管理の課題って、顧客管理してないから課題なんか思いつかないのよ)
(ウチがやってる顧客管理は問題ないから、売り上げも順調なんだけど)
実はこれ私がやってしまった実例です。いきなり指名されて集まった部門長やリーダーの方々に向けて、「創造的な対話」を導くためのプロセスである「思考と感情を揺さぶる」「個人の認識を内省する」「新たな枠割を受容する」「共通の意味付けを探りながら新たな関係性を構築する」をすっとばしていたのです。ワーキンググループの最初の数か月は「問いと対話の繰り返しによる新しい関係性の構築」をすべきだったと今更ながら反省するのです
▼新規ITサービスの企画会議
アイデア出しを自由に出しながらも最後にはそれを一つの方向性に導きまとめていくこのです。問いかけの良し悪しが、アイデアの質に直結してしまいサービスの採用の可否が決まってしまう事があります。
対話型AIを活用した「問い合わせチャットサービス」を営業部門に提案することになった。さあ、機能と運用ルールについて自由にアイデアを出して!
→意見は出るが視点や視座がバラバラ…
(ChatGPTを使えはいいと思います。なんでそんな事考える必要ある?)
(他社事例を参考にアジャイルで作りながら仕様を決めれば?早く作ろう)
(そもそも営業部門は何に困っているかの調査分析からじゃない?)
これも最近の私の事例。5月から新規サービスを検討するワークショップを立ち上げて運営し始めたところです。今度は上手に問いかけをすることで、創造的な対話の場を作り、良いアウトプットを生み出せるようにします!
このプロジェクトについては時が来たら(会社のお許しが出たら)、その過程を披露したいと思います。
4. まとめ
問いから生まれる創造的対話を増やそう
本書のサブタイトルに「創造的対話」という言葉があるのでこれを深堀してみると、本書では「問い」によって生まれるコミュニケーションは以下の4つに分類されると書かれています。
討論:異なる2つの立場のどちらが正しいかを決める
議論:合意形成や意思決定のための話し合い、意見交換
対話:自由な雰囲気のなかで理解を深め、意味付けをする
雑談:自由な雰囲気のなかでの気軽な情報交換
本書はこの中の「対話」にフォーカスしていますが、それは「対話」だけが、①個人や組織が持つ固定化された認識(固定観念やものの見方)と②固定化された関係性(上司と部下、先輩と後輩、経営者と従業員)を揺さぶることができるからであると述べています。
言われてみれば確かに、対話は討論や議論とは目的が異なることに気付きます。一度、ご自身が仕事で経験するコミュニケーションの形を整理してみてください。
1,2,4が多く「3.対話」をする機会が少ない方(さらには報告や連絡が多い方)は、コミュニケーションのやり方を変えてみてはいかがでしょう?
問いかけから始まる創造的対話の時間を増やすことで、上手く進まなかったプロジェクトが良い方向に進むかもしれませんね。
5. リンク集
youtubeやnote に沢山の解説記事やどうががありますので、こういったコンテンツを並行して見ながらさらに理解を深めていくと良いですね。
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