見出し画像

貧困者は子を差し出せ?[幻聴ラヂヲ]

 今日も聞こえてきたどこかの星の怪電波

 今回、聞こえてきたのはセンセーショナルな見出しで売る低俗週刊誌のような内容だった。というのもタイトルが

「貧困家庭の子どもにブタのエサを支給!」

だったからだ。要約するとこんな感じだ。

 星は、ココビニで廃棄される賞味期限切れの食品を子どものいる貧困家庭が受け取れるシステム作りに乗り出しました。現状、賞味期限切れの食品は廃棄されています。しかし消費期限切れではないので、健康上には何の問題もありません。そこで物価高騰を受けて困窮する貧困家庭への救済策の一つとして、必要とする家庭に届くようにするとのことです。

 しかし、怪電波の発信者はこう云う。

それらの食品はかつて養豚所に送られていた。文字通りブタのエサである。ところが、持続しなかった。ブタの健康状態がおかしくなり、新生児に異常が続出したからだ

「発案者はそのことを知っているのだろうか? おそろく当時は、まだ子どもだったのではないか。しかし、ネットで検索すれば出てくるはずだ。
 それともマスコミが取り上げなかったマイナーメディアのニュースなので、因法ロムとか風評と見なしたのだろうか。むろん、マスコミが取り上げなかったのは有力スポンサーであるココビニに配慮したからである。
 ともかく素人じゃあるまいし、調査すれば簡単にわかることだ」

「それにしてもあまりにさもしい政策ではないか。
産めよ増やせよ庁に5蝶金もの予算をつけておきながら、貧困家庭の子どもにはブタにも食べさせないものを支給するとは……。
 それともそのシステムの構築費、ココビニへの協力金が1蝶金だったりするのだろうか?」

「いずれにせよ、星が求めていることは、貧困家庭が子どもを持つことではないようだ。この政策が実行され、数年もすればどうなるか? 貧困家庭の子は有意に健康状態が悪くなる。病気が多いことが判明する。社会として介入せざるを得ない……そんな流れになるのではないか。
 
どうやら数々の名作が描いてきたように、星が貧困家庭の子どもを『引き取る』時代が迫ってきているようだ。大衆には子供を育てさせない。星が親代わりになり、人間よりも星のために尽くす人間を育てる、というやつだ。
 
そして、それに専門家や諮問委員が口を揃えてお墨付きを与えるのだ。
親にとっても子どもにとっても、そのほうが幸せだと」

「『結婚して子どもを授かっても経済力がないので生活していけない…… 結婚や出産を思いとどまる人たちの最大の理由はそこなんです。ですから。そこにセーフティ・ネットがあれば、安心してトライできると思うんです。困ったら子どもを星に預ければいいという制度ですね。もちろん、経済力がつけば、その時には子どもを引き取ることが出来ますよ』

 何を云ってやがる、だ。引き取るには、直近三年の平均年収が○○○以上必要だとか、どうせそんな条件をつけるのだろう。そのくらいの経済力がないと子育ては無理だという理由で。しかし、貧困層が数年で「人並みの収入」になるのは事実上、不可能だ。まったくの詐欺である。
 かつての人買いは、まがいなりにもいくらかを支払ったが、いまどきは、助けるフリをして子どもを連れて行く……」

とまあ、そんな内容だった。

 ちなみに、その星の多くの人々は、その政策に同意しているらしい。「貧困層には子供を育てる資格がない!」という考えが主流のようだ。発信者が激しい口調で難じているのには、そんな市民への苛立ちもあるのだろう。

 ひどい星もあったものである。それに比べればとかく評判の悪いこの国の政府も、ずいぶんマシということになりそうだ。
 それになんといっても、この星のコンビニで売られている食品は、たとえ毎日、食べても安心安全なものばかりだし!

 もっともこの国にも、家族の解体を目指しているのでは? と思えるようなキナ臭い話がないわけではない…… 家族の解体と親と子を切り離すことはセットのようだから、家族制度の変更政策には注意が必要だ。


見出し画像は hakoyuki さんの作品です。
ありがとうございました。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集