ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング
「ラテラルシンキング」という言葉を聞いたことのある人はあまり多くないのではないかと思います。ラテラル(Lateral)とはVertical(垂直の)の反意語で「横の」という意味です。そしてラテラルシンキングは「水平思考」と訳され、ロジカルシンキング(論理的思考←垂直思考)と対にして扱われることが多いようです。
ロジカルシンキングとラテラルシンキングの違いをまとめると以下のような形になります。
ラテラルシンキングは思考の幅を広げることを目的とし、その先の答えは1つではなく、たくさんの解答があります。自由奔放に発想すること、直感を大切にすること、枠組みにとらわれないことが求められるというのもロジカルシンキングとは対照的です。
学校教育(とりわけ日本の学校)では、常に1つの解答を求められ、人と異なる考えや意見は封殺されることが常です。しかしながら『変化こそが不変』となるこれからの世界で、今までのように唯一の答えだけを求めるような教育はもうオワコンだと思います。だから子供達にはロジカルシンキングだけでなく、ラテラルシンキングを学んでもらいたいと考えています。
本書では、ラテラルシンキングに必要な環境を作るには次の3つの能力が欠かせないと書いてあります。
1.疑う力・・・クリティカルシンキングですね。私はこれは昔から心がけています。
2.抽象化する力・・・思考を広げるために具体から抽象へと変えていける力。想像力・創造力とも言えますね。
3.セレンディピティ(serendipity)・・・思わぬものを偶然発見する才能。昔イギリスでserendipityって映画を見たことがあって、その時にこの単語の意味を知りました。ここでは、偶然を偶然として無視しない力、と定義されています。
もう少し具体的に例を挙げると、こんな感じです。
みかんが13個あって、それらを3人の子供たちに平等に分けたいです。さてどうしましょう?
ラテラルシンキングで考えると例えばこんな答えが出てきます。
1.4個ずつ分けて余った1個を3等分する
2.はかりを使って同じ重量ずつ配分する
3.ジュースにして分ける
4.オレンジの種を植える
作中にはいろいろな事例が登場します。例えば、アイスクリームのコーン、たらこスパゲティー、携帯電話に搭載されたデジカメ、などなど。これらは今ではどれも身近なものですが、どれも当時はありえなかった組み合わせから生まれたものです。
そして、恐らくスティーブ・ジョブスはこのラテラルシンキングの天才だったのでしょう。iPod, iPhone, iPadなどのイノベーションは常識を疑い、柔軟な思考力、そしてずば抜けた発想力があったからこそ実現したのだと思います。余談ですが、スタンフォード大学の卒業式で行った有名なConnecting dotsのスピーチ(「未来を見通すことはできない。むしろ過去を振り返って経験から点と点を無図びつけ、何らかの形を作ることが重要だ」という内容)は自分の中でベストスピーチの一つです。
AI(人工知能)が人類の能力を超えることをシンギュラリティ(Singularity)と言いますが、言うまでもなくコンピュータはロジカルな仕事のエキスパートです。そこに我々人間の出番はもうなくなります。しかし、コンピュータは愚直に言われたことだけしかこなせません。つまり、マニュアル通りにしか動きません。ということはマニュアルがないと仕事ができない人はもう生きていけない(仕事がない)という世の中がすぐそこにまで来ています。だからこそ、人間にしかない発想力を磨くことがこれからは重要になってきます。ラテラルシンキングが我々人類に必要な時代が来ているのだと思います。学校教育の中でも多様性を認め、自由な発想を生むような環境を整備することが不可欠です。まずはその環境を自分の周りで作っていきたいです。