国内製造か?海外製造か?〜made in Japanについて考える〜
コロナ前くらいまでは、「中国でモノを生産しないなんて信じられない」くらいの空気感であり、私も何度も色々な方から何故中国で作らないのか?と言われました。今は言う人も少なくなりました。リスクが高くなったと判断し、中国から金型を引き上げる事例も増えて来ているとパーツメーカーの方から聞きます。
何故、前職のトレッタでは国内製造を選んだか?その理由を今回は細かくご説明したいと思います。これから製造を検討されている方の参考になれば幸いです。
⚫︎トレッタの製造について
こちらに詳細掲載していますので是非ご覧になってください。
トレッタ製造については、代表の堀さんとも何度も意見の違いで議論しました。それでも、私は最後までトレッタの命運を掛けて、国内製造すべきと意見したのです。
何故国内製造すべきだと考えのか後述しますが、これは作る製品の種類や製品大きさ、会社のステージによって変わる思っています。
私も全ての製品を国内製造すべきだとは考えておりません。あくまでトレッタではと言う条件ではありますが、トレッタを国内製造にして失敗したと思ったことは一度もありません。国内製造で本当に良かったと思っています。
⚫︎スタートラインに立つ
ハードウェアスタートアップはモノがデリバリーできないとスタートラインに立てない事が多いと思います。資金が少ないスタートアップではいかに早くデリバリーできるか?が生死に関わります。よってポイントは「より早く試作し」、「より早く開発を成功させ」、「より早く量産にめどを立てる」と言うことになります。
そこまでたどり着くことができなければサービス提供どころか投資家からの資金を得ることができないことになります。結果、量産に導けることが極めて重要なのです。
ただし、開発・量産は簡単ではありません。とても難しいのです。大手の企業ですら失敗します。一流大学を卒業し、開発をいくつも成功させて来た優秀な人材が沢山いても失敗することはあるのです。しかも一流の設備、一流の開発環境が整っていてもです。
一方スタートアップでは設備も十分ではなく、環境も整ってないことが多い、そんな環境で成功させないといけないのです。確率は大手よりも恐らく低いと思います。
トレッタも中国やベトナムの選択肢を模索しました。中国も直前まで悩み何度も通いました。ただやはり物理的距離、言語の壁、文化の壁を考えるとまずは成功確率が高い国内生産を選ぶべきと判断しました。売れ始めて海外移管を模索したら良いと考えたのです。まずはスタートラインに立つことを最優先すべきだと思ったのです。
⚫︎改善を繰り返す(ブラックボックスを作らない)
ハードウェアスタートアップは世の中に無い製品を作っている事が多く、世の中に出してから(市場投入後)もお客様の声を聞き改良改善を繰り返します。
これはスタートアップに限らずiRobotのルンバ、AppleのMac PC、Apple Watch、Dyson(ダイソン)の掃除機など全ての商品が、初号機からお客様の声を反映し改良を続けています。
勿論、設計者は発売当初はそれがベストだと思って発売しますがお客様からの声で気付かされることも沢山あります。それを少しずつでも改良、改善を繰り返すのです。
トレッタも沢山改良を続けてきました。大幅コストダウンも実現しました。それは、自社で設計開発を行っているからこそ実現しました。基板、筐体は勿論のこと調達先の選定、組み立て順序や検査方法に至るまで全てを把握しています。だからこそ細かい部分を改良改善しコストダウンや品質の向上に取り組めるのです。
勿論、OEMという選択肢を否定しているわけではありません。OEMはOEMで大きなメリットがあります。トレッタはそもそも筐体サイズが大きいことが理由で製造できるメーカーが少なかった事から、自らやるべきだと判断したのです。
スタートアップは新しい取り組みだからこそ、お客様に応援して貰える企業であるべきだと考えています。「商品を一緒に育てている」くらいの気持ちのお客様が多かった様に感じます。トレッタも直筆のお手紙を沢山・沢山頂きました。だからこそ、その思いに答え改良を続けることで応援して貰える企業になるべきだと考えています。
⚫︎キャッシュフロー
どの会社でもキャッシュフローはとても大切です。ただモノづくりは先にお金が出ていってしまいます。キャッシュフロー的にはとても苦しいのです。
更に、中国で生産した場合一般的には発注時に前払いのケースの方が多いように感じます。小さなものであれば飛行機で送れますがものが大きくなると船便になります。部品の購入から製造、輸送を考えると数か月のリードタイムは一般的です。月々1,000台、10,000円の商品を販売しようとした時、例えばリードタイム3ヵ月だとしたら1,000台×10,000円×3ヵ月=3,000万円ないとそもそもビジネスとして成立しないことになります。
また、販売時にクレジットカード払いやECサイトなどを使うと現金を回収できるタイミングが数週間遅れたりは普通にあり得ることです。結果かなりの資金力が無いとキャッシュフローが回らないことが考えられます。
トレッタはそのリスクを極限まで少なくしました。製造した物からすぐに出荷していきます。1台でも生産したら現金化していくのです。イメージは、前日受注した分をその日に生産し出荷する形で、在庫をほぼ持たない形で在庫リスクを極限まで下げていたのです。(実際には工場に何か起きた時のために数日分の在庫は確保しています)早いものではその日に現金化できることになります。
トレッタの場合、ものが大きいので4tトラックでも数百台しか入りません。実際この様な商品を中国で作りその製品に不具合があった場合どうするのでしょうか?小さなものであれば段ボールで送り返せば良いかもしれません。トレッタの場合、捨てるにもかなりのお金がかかります。これらのリスクも国内であれば、現場に赴きその場で解決できます。更に在庫をほぼ持っていないので手直しも労力が少ないのです。
⚫︎まとめ
トレッタはこの様に国内製造のメリットを最大限に活用してモノづくりを行っています。ただ、これはモノが大きいことや国内に製造できるメーカーが少なかった事など、沢山の条件下で判断したものです。
製品の特性や会社の状況などでご判断されることをお勧めします。決して海外製造を批判するものではありません。我々も海外製造を模索した結果の判断です。
海外製造はコストが安いと言う大きなメリットがあるのも事実です。それで成功されている企業様も沢山いらっしゃいます。
是非、迷ったらご相談頂ければ幸いです。
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猫IoTトイレ「トレッタ」が生まれるまで