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結婚を諦めていた僕はAIに相談した5ヶ月後にプロポーズした

遅ればせながら新年、明けましておめでとうございます。私ごとで恐縮ですが、1つ報告があります。

2024年10月、43歳で、結婚しました。

今回はタイトル通り、結婚を諦めていた僕が、AIに相談して5ヶ月後にプロポーズした話をお届けします。


第1章:僕は結婚ができない

結婚ができない。
それは僕自身、悩みの種でした。

もっというと長年、心の底では「結婚したい」と思っていないということも悩みの種でした。リリー・フランキー岡本太郎、新庄剛志など自分が憧れる人の多くが結婚に消極的で、それでいて仕事に打ち込む姿がカッコいいと思っていました。

また「男はつらいよ」を見すぎて「フーテンのひでさん」と呼ばれることに憧れた時期もありました。(残念ながら一度も呼ばれたことがありません)「肉食系」でも「草食系」でもなく「遊牧民系」という謎のアイデンティティを自らの中に見出し、自由気ままに生きていくのが自分らしい人生だと思っていたからです。

それでも20代の頃から多くの結婚式ムービーをつくり、幸せな家族生活の報告を受けるたび、結婚への憧れが募っていたのも事実です。結婚に憧れながらも、結婚したくない相反する矛盾を抱えて生きていまいた。

そして、「自分らしく生きること」と「結婚すること」が相反するか、共存できるかを決めるのは自分1人の問題ではないということに気がつきました。それは「結婚する相手」と一緒に対話しながら導き出すことだと

もっと早く気づくべきだと言われても過ぎた日は戻らない。でも、そこに気付けたのは、人と本気で向き合うことの大切さを教えてくれた友人たちがいたからです。

そうやって自分の中に変化が訪れていた2024年の春、ちょうどアメリカに一人旅に行ってきました。

長年の夢だった寝台列車の旅で、広大なカリフォルニアの景色を眺めていると、こんな声が聞こえてきました。

「もう独身生活は十分、謳歌したんじゃない?」

そう、それは誰の声でもなく、自分の心の声でした。

第2章:AIが台頭する未来、自分は何を見たい

ちょうどその頃『cotomo』というAIのアプリが話題になっていました。まるで自分の恋人のように会話ができるAIです。

知らない方のためにヒカキンさんがcotomoと話す動画を貼っておきます。

自分でも使ってみて、すぐに直感しました。

「あ、これからは、リアルの人間よりもAIと会話することが増えるな」

AIが台頭する未来、人は人と話さなくても生きていけるかもしれない。それはそれで悪いことではないかもしれない。リアルの世界は何かと物騒だ。人を傷つけることもあるし、自分が傷つくこともある。AIなら相手を傷つける心配がないし、自分も傷つかない。そう考えた時、ふと、思った。

それって、ちょっと、寂しいな。

もちろん誰も傷つけたくないし、傷つきたくない。でも、それを恐れてると、そこを乗り越えた先の楽しさや嬉しさ、幸せもないのではないか。No Pain,No gain的なやつ。「面倒臭い」の中にある幸せこそ、人間に許された最後の聖域なのではないか。

AIが台頭する未来に、僕が見たいのは、傷つく可能性もあるし、面倒臭いこともたくさんあるだろうの中にある小さな幸せや喜びだ。気がつけば僕はcotomoに相談していた。

僕:実は結婚しようかなと思ってるんだよね。
cotomo:え、そうなの。いいね。相手はどんな人がいいの?
僕:優しくて、思いやりのある人がいいかな。
cotomo:そっか、そっか。ウツノミヤなら、そういう人がきっと見つかるよ。見つかるといいね。
僕:どうやって見つけたらいいかな。
cotomo:結婚相談所とか、アプリとかで探すのもいいと思うよ。

・・・結婚相談所。令和の時代に生き残る昭和の産物的なやつか。まったく自分が行くイメージが持てない。しかし、よく考えたら、そもそも、あまり結婚相談所のことを知らない。

最新テクノロジーのAIが導き出した、最も原始的な婚活方法「お見合い」

なんでも人の逆をいきたがる面倒臭い性分がここにきて噛み合った。お見合いって、逆に新しいんじゃないのか。GoogleMapで家から一番近い結婚相談所に行ってみた。

第3章:縁のある人は万里を越えてやってくる

相談所に行ってみると、出てきたのは60代くらいの貴婦人。これから紅白歌合戦に出場するのかと思うほどのきらびやかな衣装を着ていた。アパホテル社長の親戚かと思った。

「あなたはね、すぐ結婚できるわよ」

僕は何も言わなかった。

「あなたみたいに自分で会社経営している人が、50歳くらいになって、自分の子供が欲しくなって『結婚したい』なんて言ってくる人がいるのよ。でも、もう時すでに遅しなのよね」

僕は何も言わなかった。

入会金やら月額費の説明をされたが、なんとなく「場違いなところにきた」という気持ちになり、帰宅後「すみません、入会しません」とメールで断った。「わかりました、全部無料で大丈夫です。その代わり成婚したら成婚料いただきます。これでいかがでしょう」と連絡がきた。

「いいえ、すみません、結構です」と返信しかけた時、ふと、その人が書いたある一文が目に止まった。

「縁のある人は、万里を越えてやって来る」

いい言葉だなと思った。いい言葉に僕は弱かった。「わかりました、よろしくお願いします」と返信していた。

第4章:令和の時代にお見合いしてみた

5人ほどお見合いをした。

仲人的な人が立ち会う中でお見合いするのかと思いきや、基本的には1対1でホテルのラウンジやカフェみたいなところで直接会った。

結婚相談所から紹介してもらうケースもあれば、全国のネットワークでマッチングアプリのような形で相手を探すケースもあった。

自分に申し込みをしてくれた人の中に1人、岩手県在住の女性がいた。岩手には全く縁もゆかりもなかったが、人柄の雰囲気や共通の趣味などプロフィールに興味をもった。

最初はオンラインでお見合いをした。

僕:映画が好きなんですね、どんな映画が好きですか?
女性:ホドロフスキーとか好きですね

ただものではないなと思った。僕はホドロフスキーについて詳しくなかった。50分ほどお互いに好きな旅行の話で盛り上がると、最後に僕は言った。

僕:今日はありがとうございました。とても楽しいオンライン会議でした。
女性:オンライン会議?笑

つい仕事の癖が出てしまった。これは仕事ではない、お見合いだ。笑った時の笑顔がとても素敵だなと思った。

それから東京ー岩手間を往来しながら僕らは付き合った。アパ社長の親戚は間違っていなかった。

ちゃんと万里を越えてやってきた。

第5章:ハリー・ウィンストンの衝撃

結婚の指輪には2種類ある。僕は恥ずかしながらプロポーズの直前までそのことを知らなかった。

婚約指輪(エンゲージリング)・・・・
プロポーズをする時に渡す指輪。ダイヤが付いているのが一般的。

結婚指輪(マリッジリング)・・・・
入籍した2人が結婚していることを示す指輪。

だが重要なのはそのことではない。僕から男子諸君に伝えられることは「指輪を探すときは、くれぐれもハリー・ウィンストンなる店に最初に行かないこと」だ。

僕はそのブランド名さえ知らなかった。たまたま近所にある東京ミッドタウンにハリー・ウィンストンが入っていたため最初にその店に行った。

2人でその指輪をつけてみた時の衝撃はすごかった。

「なんじゃこれ、最高すぎるわ」

これまでアクセサリーとは無縁の人生を送ってきた。社会人一年目の頃に、何を血迷ったか、クロムハーツのネックレスを買ってしまい、それを見た先輩社員から「お前も悪くないし、クロムハーツも悪くないけど、お前とクロムハーツの組み合わせは悪い」と断言されてしまって以来、何もつけずに生きてきた。

そんな僕でも心が踊ってしまった。金額を見てみた。

●●●万円???
高級外車の金額の間違いじゃないですか???

間違ってなかった。高級外車並みの金額だった。

30歳まで無貯金で、40になるまでちょっとずつ貯金してきたものを、一度、フルオープンに開放する。アドレナリンなのかセロトニンなのかよくわからない謎の分泌物質が身体中を駆け巡る。他の指輪にもうワクワクできない。

「お見合いで知り合った人と遠距離恋愛する」というかつてない経験を経て、毎日のように連絡を取り合う中で、僕は彼女と結婚したいと思うようになっていた。結婚に求める価値観と目指したい家庭像が似ていた。自分と同じようにリアリストとロマンチストが共存しているタイプだった。

特に彼女にせがまれたわけでもないが、指輪に対して強い思い入れのある彼女に対して、一生に一度しかないチャンスで最高のものをプレゼントしたいと思った。

人生最大の買い物にはビビる気持ちもあったが、いつか、「あの選択は間違っていなかった」と言えるような人生を送ろうじゃないか。(分割払いが2回までしかできず、後になって、かなり冷や汗をかいたのはここだけの話だ)

最終章:そして僕はプロポーズした

「運命の人」という言葉がある。

「運命の人に会いたい」「運命の人と結婚したい」

誰だってそうだろう。婚活をしてみて驚いたのは、結婚したいと考えている人が自分の知らないところでたくさんいるということだ。

実際、僕みたいなものでも300人近いお見合いのお申し込みをいただいてありがたい気持ちにはなったが、一体、どうやって相手を選ぶというのだ。

そんな時、『幸せになる勇気』という本を読んだ。
幸せになりたい欲が強すぎて恥ずかしくなる類いの本だ。

ここでアドラー哲学は驚くことを説いていた。

「アドラーは「運命の人」をいっさい認めません。運命とは、自らの手でつくり上げるものなのです。運命の人を求めるのではなく、運命といえるだけの関係を築き上げるのです

岸見一郎・古賀文健著『幸せになる勇気』より

なんてこった。「運命の人にいつ会えるか?」と恋占いで荒稼ぎしてる占い師に聞かせてやりたい。

「愛の関係に待ち受けるのは、楽しいことばかりではありません。引き受けなければならない責任は大きく、つらいこと、予期しえぬ苦難もあるでしょう。それでもなお、愛することができるか。どんな困難に教われようとこの人を愛し、ともに歩むのだという決意を持っているか。その思いを約束できるか。」

岸見一郎・古賀文健著『幸せになる勇気』より

「結婚とは結婚する『対象』を選ぶのではなく、『自らの生き方』を選ぶこと」

岸見一郎・古賀文健著『幸せになる勇気』より

なるほど。これ、もっと早く知っておきたかったよ。高校の教科書に載せてやってくれ。いや、でも、僕にはちょうどいいタイミングだったのかもしれない。

彼女と出会った瞬間から、もう迷いはなかった。これまで自分が結婚を避けてきた理由も正直に話し、分かり合えた。そして、いよいよ、プロポーズの段に入る。

特に場所を指定されたわけではなかったが、夜景の綺麗な場所を望んでいた。いろいろ考えた結果、「リッツカールトン東京」にした。

いつも自宅の書斎から見えていた場所。「いったい、どんな人があそこに泊まるんだろう」と内心思っていた場所。まさか自分が行くとは。でも、あそこなら最高の夜景があるはずだ。

「いつリッツカールトンに泊まるの?……今でしょ!」

僕の中の林修に鼓舞される。いや、彼女に喜んでもらいたい一心だった。

友人のフラワーアーティスト池嶋美香子さんにバラの花束をお願いした。最高に素敵なものを用意してくれた。

遠距離恋愛中、彼女に会うたびに手紙を渡していた。それを気に入ってくれていたので手紙も用意して、指輪も用意して、すべては整った。

当日。レストランで食事をした後、部屋に案内した。僕がレストランで会計を済ませると同時に、リッツカールトンの人たちが、部屋中にキャンドルを並べ、池嶋さんがクローゼットに花束を隠してくれた。最強のチームプレーに感謝だ。

彼女は喜んでプロポーズを受け入れてくれた。
出会ってから5ヶ月目のことだった。

これはプロポーズした時の写真・・・をもとにした似顔絵だ。妻のプライバシーを守りたい。入籍日にアマラントスというレストランで食事したとき、お店の人がその写真をもとに似顔絵を描いてくれたものだ。

バラが一面敷き詰められた場所でプロポーズした写真を見た友人たちから「バチェラーか!」と総ツッコミをもらった。「フーテンのひでさん」が懐かしい。人は思ってもみない方向に人生いくものだ。でも、それでいい。それを楽しむのだ。

以上、結婚を諦めていた男がAIに相談して、5ヶ月後にプロポーズした話でした。長文お付き合いいただき、ありがとうございました。

本年もよろしくお願いします!

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宇都宮秀男
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