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本日発売、柳川一『中山民俗学探偵譚』の探偵役・中山太郎ゆかりの地に行ってきました。

若き日の江戸川乱歩の活躍を描いた『三人書房』で、颯爽とデビューした柳川やながわはじめさんの第二作『中山民俗学探偵譚』(ミステリ・フロンティア/単行本)が本日10月31日発売です。

装画:いとうあつき/装幀:岩郷重力+Y.K

昭和21年、栃木県足利郡にてひっそりと暮らす中山太郎の元を、下野新聞の記者が訪れる。探偵小説執筆の参考に、かつて柳田国男に師事し異端の民俗学者として知られる中山の、同時代を過ごした偉人達との交流について話を聞きたいという。明治、大正から昭和初期にかけて、柳田のほか、種田山頭火、宮武外骨、南方熊楠、そして平井太郎らと過ごした日々は、謎に満ちていた――。話を脱線させつつも、中山太郎は奇妙な出来事の数々をゆるりと語っていく。
『三人書房』で鮮烈なデビューを飾った著者による、滋味溢れる連作ミステリ。

中山民俗学探偵譚-柳川一|東京創元社

今作で、柳川さんが主人公に据えたのは、知る人ぞ知る民俗学者・中山なかやま太郎たろうです。柳田やなぎた国男くにおに師事し、折口おりぐち信夫しのぶ南方熊楠みなかたくまぐすとも交流のあった方ですが、いずれも仲違いをしてしまったとのこと。『日本売笑史』『日本巫女史』などを刊行しています。戦後、生まれ故郷でひっそりと暮らしているところを、下野しもつけ新聞の記者が訪ねます。取材というよりも、自ら執筆したい探偵小説のネタとして、かつて中山が交流した偉人たちのエピソードを聞きたいというものだった……。北森鴻さんの〈蓮丈那智〉シリーズに代表されるように、民俗学×ミステリの非常に相性がよいことは言わずもがな、です。今作に収録された「オシラサマ」外法頭げほうがしらなどはいずれも、民俗学で取り上げられている事柄です。

さて中山太郎の故郷は、栃木県足利市。私は隣町の出身ですが、中山太郎のことは知りませんでした(同じく足利出身の相田みつをのことも知らなかったので、本当にすみません)。そこで、戦後暮らしていたという周辺を、帰省ついでで訪ねてきました。
中山太郎が晩年を過ごしたとされるのが、東武伊勢崎線「東武和泉」駅よりほど近い御厨みくりや神社境内とのこと。渡良瀬川の土手のすぐそばで、ひっそりとした雰囲気の中に御厨神社はありました。夏の暑い盛りに訪問したので人影はまばらでしたが、森高千里の名曲「渡良瀬橋」の舞台となった名所旧跡も徒歩ないし車ですぐ近くにありますので、興味を持った方はぜひ足利へお越し下さい。藤棚で有名な「あしかがフラワーパーク」もいいですし、最古の学校と言われる「足利学校」も渋いですし、そばの町、足利シュウマイの町としてグルメも楽しめます。時間さえ合えば、浅草や北千住から特急でおよそ1時間ですよ。

渡良瀬川の河川敷から望む、御厨神社の森。
御厨神社

■柳川一(やながわ・はじめ)
1952年茨城県生まれ。明治学院大学卒業。2021年、若き日の江戸川乱歩が開いた古書店を舞台にした「三人書房」で、第18回ミステリーズ!新人賞を最高齢の69歳で受賞。同作を連作化した『三人書房』で本格的デビュー、話題となる。


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