カフェとコーヒー
カフェ
自分は世田谷公園前でコーヒーロースター&カフェ『Tokyo Coffee Lab.』を経営しています。
今回は自分の経験してきたコーヒーについての後編です。
後編は自分が今までに客側として来店し、経験してきたコーヒーのお話です。
カフェと言っても様々な意味があります。
直接の意味では飲み物としてのコーヒーという意味もあるでしょうが、自分としては喫茶を伴う空間やお店という意味合いが最も当てはまっているのかなと思います。
食事をメインにしているカフェ、軽食やデザートがメインのカフェ、飲み物がメインでお菓子少々のカフェ、その他の体験やイベントがメインのカフェなど様々存在しています。
カフェでは、一人でその時間を過ごすのも、友人同士のグループであっても、そのカフェ独自のコミュニティの中で楽しむのも自由です。食事が目的の人もいれば、ゆっくり読書する人、お話しや打ち合わせの人、最近ではPCで仕事の方もいます。
カフェのコーヒーは主役ではなく、その場をつなぐ為に必要なアイテムの要素が強いのかなと思います。
缶コーヒーと喫茶店
自分は故郷の熊本から上京したのが1990年です。その時代は缶コーヒーが猛烈に売れていた頃です。コーヒー飲むだけなら迷わず缶コーヒーを買って飲みました。
今考えるとうまく作られていると思います。缶を開けた瞬間に缶コーヒー独特の香りがふわっと広がり、甘さは強いですが眠い時や疲れている時などはなんだか身体に染み渡るような感覚がありました。小型缶の量もちょうど良かったです。
また製造メーカーによって味の違いも明確で種類も多く、自動販売機で買える手軽さで時間を問わずいつでも飲めるのが、ヘビーリピートする理由でした。
缶コーヒーも愛飲していたのですが、『深煎りコーヒーとの出会い』でお話しさせていただいた通り、プロの淹れたコーヒーも飲んでいました。
この頃は本格コーヒーは喫茶店でしか飲めないものだったと思います。自分はネルドリップのコーヒーが好きでしたが、サイフォンやペーパードリップ、ダッチコーヒーと呼ばれる水出しコーヒーも好んで飲んでいました。
コーヒーの種類も喫茶店で覚えました。“ウインナーコーヒー”や“カフェ・オ・レ”や“カフェ・ロワイヤル”またコーヒーではないですが、”ロイヤルミルクティ”“ロシアンティ”なども喫茶店ならではのメニューです。
薄暗いコーヒーの香りが染み付いた店内で飲む雰囲気も大事な要素の一つです。ここでも様々な人が、それぞれの時間を過ごし、コーヒーがそれをつなぐ役目を担っています。
カフェブーム
90年代後半になるとセカンドウェーブと呼ばれるシアトル系コーヒーが多く出店し始めました。代表格はスターバックスコーヒーでしょうか。
自分が初めてスターバックスのコーヒーを飲んだのは、千駄ヶ谷の店舗で1999年だったと記憶しています。注文は戸惑いましたが、新時代の到来感をものすごく感じたのを覚えています。自分はサービスマンの仕事でしたので、カウンターに並んで購入し、商品を受け取って席に着くスタイルが発想にないものでした。店内がスタイリッシュな事もあり、そのセルフスタイルと自由な感じが一体感があり新鮮でした。
90年後半からは自分の中ではもう一つカフェブームがあります。駒沢公園の『バワリーキッチン』をはじめとするダイナーカフェブームです。
東京という眠らない街に深夜まで営業するカフェ、時代のライフスタイルと同期し独自のカルチャーを生み出し、お客様がお店を演出するカッコ良さがすごかったです。インテリアもお店でありながらリビングのような佇まいが斬新で、現在のカフェにも大きく影響していると思います。
焙煎士のコーヒー
2000年代はインテリアの良さや時代の最先端をいくカフェに好んで行きましたが、2010年頃になるとまた本格コーヒーに原点回帰していました。
足を運ぶようになったのは、店内焙煎しているコーヒー専門店が多くなりました。
特に影響を受けたのは、表参道の『大坊珈琲店』です。
ピシッとした空気感、コーヒーを極めた職人の所作、手廻しロースターの焙煎と見習うことばかりで実際に自分の仕事に取り入れているものが多くあります。
一杯ずつ丁寧にドリップする姿勢は圧倒されるほどカッコいいです。コーヒーは深煎りネルドリップの芳醇な香りを纏い、とろりとなめらかで余韻の長い味わいです。2013年に閉店しましたが何度か訪れることができたのは自分の宝です。
サードウェーブ
現在はというと、サードウェーブからの、コーヒー豆が生産国だけでなく生産地域・生産農家・生産者・標高・規格・品種・精製処理など細かく表記され、コーヒー果実由来のフルーティな酸味や甘味・香りの特徴をはっきり打ち出す焙煎度が主流となっています。
焙煎コーヒー店も小規模店舗の出店が増えて、競争が激しい状態でしょうか。
コンビニコーヒーが缶コーヒーからその座を奪い、カフェのコーヒーともせめぎ合う状況です。
自分は深煎りコーヒーをメインにしていますが、浅煎りも焙煎しますし、ドリップコーヒーとエスプレッソも提供しています。お菓子も手作りで作っています。
30年以上カフェでコーヒーを飲んできました。自分も色々なコーヒーを飲んで、今の自分の好みに辿り着きました。
きっと人それぞれに辿り着いた好みがあります。
それぞれの好みに合うコーヒーが提案できるよう、また自分のコーヒーに出会うことでコーヒーの感動が生まれるよう仕事しています。
自分がそうであったように。
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