マインドフルネス

盆栽は究極の「マインドフルネス」である

本日よりNoteにて、ビジネスパーソンに役立つ「盆栽」の知識を思い付くままに記述していきます。第1回目のテーマは『盆栽は究極の「マインドフルネス」である』です。

1、盆栽のルーツは「禅」

まず「盆栽とは何か?」という定義を簡単に説明します。「盆栽」とは字のごとく「盆(浅く平たいお皿)」に植えられた「栽(植物)」を指します。

その起源は中国で、元々は「盆景」と呼ばれ、山や木、石などの自然のものに神々が宿ると考える「神仙蓬莱(しんせんほうらい)思想」を具象化した「神々に捧げる宗教的な贈り物」(上の写真)でした。

この「盆景」が平安時代に日本に伝わり、鎌倉時代に「禅宗」の影響を受けて誕生したのが「盆栽」です。「盆景」では(上の写真のように)、皿の上に複数の木や石などをたくさん配置して、できる限り自然の風景に近い形(ミニチュアのように)表現していましたが、厳しい節制の中にこそ「美しさ」を見い出した禅僧たちは、限定された空間の中での表現(1本の木が景色全体、ひいては宇宙を表す)という考えで「盆景」を発展させていきました。これが今の「盆栽」のルーツとなりました。

この「禅」の考えにより、1鉢の中に1本のみ木を植えることが主流となります。「たった1本の木で、永遠に広がる自然を表現する」。制限が生まれたことにより、盆栽の表現は逆に無限の広がりを見せていきます。

例えば、上の写真の盆栽は「懸崖(けんがい)」と呼ばれる盆栽樹形(枝や葉が根より下に垂れ下がる形)をもとに作ったものです。この盆栽をじっと見ていると、1本の木だけで、山深い険しい岩肌の断崖絶壁が見えてきませんか?

2、盆栽を観ることで「マインドフルネス」な状態を作り出す

このように「禅」にルーツを持つ盆栽は、その見方によって、無限の風景、無限のストーリーを作り出すことができます。そのために、私たちが盆栽を観る時にまず注意しなければならないのが「今、この瞬間に意識を向け、評価もせず、とらわれのない状態で、ただ観ること」です。

普段、私たちは、朝起きてから眠るまで四六時中、たくさんの情報に触れ続けていて、頭の中では、不安や恐怖、怒りや喜び、評価や否定、過去や未来のことなど、どうにもならない感情や思考が常に渦巻いています。そんな状態が長く続くと、過度なストレスがたまり、集中力が続かずにパフォーマンスも下がってしまいます。

そこで必要なのが、意識的に日常生活の中に、感情にとらわれずに、今この瞬間だけに意識を集中させる状態(マインドフルネスな状態)を作り出すことです。その代表的な方法として、Googleなども採用している「瞑想法」などがあります。

しかし、もっと簡単な方法として、おススメしたいのが「盆栽を観ること」です。「禅」の思想を持つ盆栽は、ちょっとしたコツを覚えて観るだけで、無限の風景やストーリーが目の前に現れ、マインドフルネスな状態を簡単に作り出せるのです。

3、盆栽の「マインドフルネス鑑賞法」

それでは、盆栽を観る時のコツを紹介します。

①盆栽の「正面」を見つける
盆栽には「正面」と呼ばれる、鑑賞者が直感的に一番いいと思える角度が必ずあるので、その正面をまずは見つけてください。
②盆栽に意識を集中させ、じっと見つめる(20~30秒目安)
この時、自分が小さな人間になって、その盆栽の木の根元に立つようなイメージを持って、自分の意識をすべて盆栽に集中させてください。
③風景、ストーリーを創造する(2~3分目安)
「盆栽の木」と「自分」だけしかいない空間を想像し、そこから頭に浮かぶ木の背景に広がる風景、ストーリーを紡ぎ出してください。
④最後に、自分の「呼吸」を意識する(1分目安)
最後に、その風景に一人立っている自分を想像してください。その時、自分の「呼吸」に少しづつ意識を向けてください(呼吸に合わせて肺が膨らんだり縮んだりするイメージを感じてください)

以上のことを、休日や毎日のふとした瞬間(朝起きた時にベランダで、お昼休みにデスクの上で、など)意識的に実践してみてください。

これらを意識的に行うことで、
①集中力が高まり、仕事のパフォーマンスが向上する
②ストレスが軽減する(怒りの感情が少なくなる)
③創造力や直感力が鍛えられる

といった効果が実感できるようになるでしょう。

もし自分の盆栽を持っていなかったら、写真でもいいですし、通勤途中にある街路樹でも、同様の鑑賞法を実践すれば同じような効果が得られます。
それではここで、以下の写真を使って、盆栽のマインドフルネス鑑賞法を実践してみましょう。

(じっくりと盆栽を見て・・・以下、私がイメージした風景・ストーリー)
『・・・霧深い断崖絶壁が連なる山々。人間を拒絶するような険しい岩山を登った先に突如現れた、うねるように山肌をはう1本の大木。その枝先は、底が見えない崖に垂れ下がるように伸び、まるで龍のごとく今にも天空に飛び出そうとしている。厳しい環境の中でも、しがみつくように、力強く、もがきながらも飛翔しようとする大木を、月光が照らし、大木の幹だけが白く優しい輝きを放つ。音のない暗闇の中で、その輝きを頼りに木の根元に立ち尽くす私。聞こえてくるのは、私の深い深い呼吸の音だけ・・・』

4、盆栽の「樹形」を知れば、想像力がもっとアップする

盆栽を観て風景やストーリーを紡ぎ出す時に、これを知っておくと想像力がぐっと広がります。それが盆栽の伝統的な樹形です。ここでは特徴的な5種の盆栽樹形を紹介します。

①懸崖(けんがい)・・・崖などの急斜面に生えた木をイメージ

②吹き流し(ふきながし)・・・強い風を受けた木をイメージ

③文人木(ぶんじんぎ)・・・無駄を極力削ぎ落とした水墨画のイメージ

④根連なり(ねずらなり)・・・倒れた大木から新しい木が生えたイメージ

⑤石付き(いしつき)・・・岩山に生えた木をイメージ

他にもたくさんの伝統的な盆栽樹形がありますので、もっと知りたい人は以下のサイトで詳しく(15種ほど)まとめられていますのでご参考に。

以上、「ビジネスパーソンのための教養としての盆栽」の第1回目、『盆栽は究極の「マインドフルネス」である』でした。

次回は、『盆栽作りで『デザイン思考』を身につける」をお送りします。

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