肩関節周囲炎(五十肩、インピジメント症候群、腋の痛み)の鍼灸治療
疫学:上腕二頭筋炎、肩峰下滑液包炎、石灰沈着性滑液包炎、四十肩(五十肩)など、肩関節周囲に見られる炎症性疾患の総称。40~60歳代に好発し、肩関節周囲の自発痛、運動痛、可動域制限、肩関節の拘縮などが見られる。
原因:老化、肩関節の使い過ぎなど。
一般的な治療法:鎮痛消炎剤や筋弛緩剤の投与、ステロイドホルモン注射などの薬物療法、温熱療法、運動療法など。
当院の治療法:肩関節周囲炎で最も多く見られる病態は、いわゆる五十肩です。医学的には棘上筋損傷が最も多いとされています。肩関節には多くの筋肉が集まっているため、痛みの出る部位は患者によって微妙に異なります。基本的には自発痛を訴える部位と、可動域制限の範囲、圧痛のある部位などを見て、刺鍼部位を決めます。整形外科を受診して、腱や骨に異常が見られなければ、筋肉のコリが痛みの原因になっている可能性が高いので、鍼治療は有効です。肩の奥が痛む場合は肩甲下筋、肩峰付近が痛む場合は棘上筋または三角筋、三角筋が痛む場合は三角筋、棘下筋付近が痛む場合は肩甲骨間と棘下筋、三角筋後部、上腕三頭筋へ刺鍼します。三角筋の前側が痛む場合は三角筋と上腕二頭筋長頭、小胸筋付近が痛む場合は三角筋前部や上腕二頭筋短頭へ刺鍼し、必要があれば小胸筋に円皮針を貼っておきます。肩の痛みは器質的異常が見られなければ短期間で完治させることは可能ですが、関節腱板を損傷していたり、発症してから何年も経っていたり、筋肉のコリが重度であったり、日常の精神的ストレスが強かったり、上肢や前腕を酷使するような職業であった場合などは、改善するまで半年~1年程度の時間を要する場合があります。顎関節症(食いしばり、歯ぎしり)がある場合は斜角筋や胸鎖乳突筋が収縮したり、交感神経が優位になって、自律神経に異常を来すことがあるため、顎への刺鍼も必須となります。