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【阪神育成1位】徳島インディゴソックス「工藤泰成」のてびき!



工藤泰成 プロフィール

ふりがな:くどう たいせい
背番号:99
出身:秋田県
生年月日:2001/11/19
身長:177
体重:82
投/打:右/左
経歴:明桜高ー東京国際大

ストレートを一番の武器とする「怪物球威」の右腕。シーズン序盤から先発起用され、リーグトップタイの8勝をマーク。ストレートの最速も5月には156km/h、8月には159km/hと順調にステップアップを見せた。また、インディゴソックス入団後は中込陽翔投手とともにチーム随一のトレーニーとの声も。
プレイヤータイプとしては埼玉西武ライオンズ・平良海馬投手や北海道日本ハムファイターズ・齋藤友貴哉投手のような馬力のあるピッチャーをイメージする。

高校と大学のチームメイトが続々とドラフト指名されており、大学の同級生では三浦克也投手が読売ジャイアンツに2023年育成ドラフト1位で指名を受けた。また、高校の1学年上には2022年にオリックス・バファローズからドラフト1位指名を受けた曽谷龍平投手、2018年に千葉ロッテマリーンズからドラフト4位指名を受けた山口航輝選手がいる。そして、高校の2学年下には福岡ソフトバンクホークスから2021年にドラフト1位指名を受けた風間球打投手がいる。

能代一中3年時は春夏ともに1回戦敗退。野球推薦の話はなく、一般入試を経て明桜高校に入学。高校では中学野球を引退した後に遊びで熱中していたバトミントン部に入ろうと思っていた。しかし、明桜高の前身である秋田経済法科大学附属高校出身で、野球部ではなかったものの同校野球部の全盛期を知る野球好きの父の影響から野球を継続。高校3年の夏の大会では県準優勝になった。

非常に勝気な性格で、昨年のドラフト会議で指名漏れした悔しさを晴らすべく、徳島に入団した。ウエイトトレーニングのベンチプレス・スクワット・デッドリフトの3つを「BIG3」と呼び、インディゴソックスでは「BIG3」の合計値500というのを1つのノルマにしているのだが、工藤は600をたたき出すチーム随一のマッチョマン。徳島では、1つずつしっかりと課題を克服してきた。今年のドラフト会議にかける想いは人一倍強く、最短1年でNPB入り狙う。

基本成績

今季の工藤の成績をまとめたものがこちら。150km/hを超えるストレートで注目を集めた工藤は主に先発で起用され、リーグトップの8勝をマーク。最多勝のタイトルを獲得した。前期は四死球も多く、大量失点した試合もあり、防御率5点台と振るわなかったが、後期は課題に取り組み、防御率0点台と好成績を残した。

条件別成績

さらに工藤のピッチングを対戦打者の左右別、塁状況別に分類したものがこちら。

このデータの中で注目したいのは得点圏での被打率の低さだ。得点圏でも動じることなく、堂々と投げ込めるのは工藤の魅力の1つと言えそうだ。


球種別スタッツ

SwStr% = 空振り数/全投球数 (一般的な「空振り率」)
Whiff% = 空振り数/スイングした投球数
スポナビより独自集計

まず、工藤の注目すべきポイントは「球速の速いストレート」である。某NPB球団のテストでもトラックマンで155km/hを叩き出した。気をつけるべき点は空振り率であるSwstr%が10.0%と決して悪くはないが、そこまで圧倒的でもないところだ。リーグ平均は7.5%前後であり、ストレートを200球以上投げた投手の中では11番目の数字だった。一方で、打球がゴロになる可能性は高く、ゴロ率は60%台とリーグ上位TOP5に入る。

また、先発起用が多かった中でストレート平均球速149.5km/hというのも大きな魅力である。セリーグ屈指の速球派右腕である阪神タイガース才木浩人投手の今季のストレートの平均球速が148.4km/hであり、工藤はそれを上回る数字を記録している。先発投手の中でストレートの平均が150㎞/hを超えるような投手は数えるほどしかおらず、工藤の積んでいるエンジンの大きさは球界屈指レベルと言えそうだ。

変化球は主にスライダー、カーブ、フォークを投げる。特にフォークはWhiff%が44.6%と高い数字を残している。ストライク率が50%台と制球に不安が残るものの、いい高さに決まれば仕留められる確率はかなり高い。

さらに左右別に工藤のボールを見てみよう。

対右打者

投球コースを見てみると、全体的に外角中心に投げ込んでいたことがわかる。

球種別に見てみると、ストレートのストライク率が60%を切っており、空振りもそこまで多く奪えていない。一方で、スライダーはストライク率が70%以上、Swstr%も20%近い数字を残しており、効果的な武器として機能していた。

対左打者

右打者と違って、真ん中付近への投球も多くあることがわかる。その影響もあってか、ストレートのストライク率は右打者と比べて大きく上昇し、63.5%を残した。制球はアバウトなタイプだが、球速と変化球で打者が的を絞れない、打ちづらいピッチャーだ。

球速帯

工藤の投球を球種毎に分類したものがこちら。ストレート(青)は150㎞/h以上を記録したものが多く、155km/h以上も複数回計測されている。変化球ではスライダー(赤)とフォーク(オレンジ)の球速帯は重なっている部分が多くある。また、カーブもどちらかというと速い方ではある。

☆飛躍のきっかけ

徳島でどのように選手が進化・成長を遂げたのか、注目ポイントを取り上げたい。

最速153㎞/h右腕としてインディゴソックス入団時にも話題になった工藤だが、前期は防御率5点台と期待とは大きくかけ離れた結果となっていた。いくつかその理由が考えられる中の1つが「ストレート依存の投球スタイル」だった。

前期登板と後期登板の投球割合を比較するとこのようになる。前期は65%以上もの割合をストレートが占めている。20%ほどのスライダーもストライク率が60%を切っており、被打率も3割台と苦しい内容だった。ストレートの球速が出るので、ある程度ストレートで空振りは奪えた。ただ、ストレートで押し込むピッチングが出来ない日は一気に手数がなくなる。そして、それでも結局打者の打ち損じを期待してストレートを投げ込まざるを得ないスタイルにハマっていた。

そのため、後期は変化球の割合を増やし「投球の引き出し」を増やすことを目指した。実際にデータとしてもストレートの投球割合が10%以上減少、スライダー・カーブ・フォークの割合が増加しており、変化球を使いながら組み立てる構成を目指していた様子が伺える。

特に打者を2ストライクに追い込んでからの投球にも変化が表れている。前期ではそこまで多くなかったフォークを後期は多投し、ウイニングショットを増やすことに取り組んだ。ストレートに頼ったピッチングスタイルだった前期から、変化球を交えて「打者と勝負する」ピッチングスタイルを目指して後期は取り組んだことで成績は大幅に良化した。


☆1軍へのカギ

150km/h超連発のストレートをどう「使う」か見定めろ

大学でのドラフト指名漏れから「剛腕」としての期待と「好投手」としての期待、この両方にどう応えるか追い求めた1年間だった。トレーニングで球速を向上させ、パワーアップすると共に変化球で仕留める術を学んだ。「最速159km/h」という言葉に刺激されがちだが、そこだけで勝負する必要は全くない。NPBの舞台で工藤のストレートがどこまで通用するのかを踏まえた上で、どう打者を抑えるスタイルを見出すのか楽しみだ。さらに秘めた力を発揮すべく投球フォームから見つめ直し、もっともっと高みへレベルアップして1軍のマウンドで工藤が腕を振るう日が来ることが今から待ち遠しい。

成績&データ、分析ほか 
中俊輔(@SNaka99400680

10月24日(木)
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