あなたの会社は、上司が間違っていた時に、平気で部下が間違いを指摘することができるか?
アドテック東京2017の2日目の基調講演。
P&Gマーケティング帝国の産みの親とも呼ばれている和田浩子氏が朝イチのセッションに登壇された時のメモを発掘したので、こちらにも投稿しておきます。
実際問題、いまやP&Gマフィアとでも呼べそうなほど、P&G出身の方々が日本のマーケティング業界を盛り上げているのは周知の事実ですが、そのP&Gも今の文化に変化する前に改革をした時期があったんだとか。
その改革をリードされた和田さんならではの盛りだくさんのプレゼンでした。
運良く質問もさせていただけたので、顧客よりも上司を重視しがちな文化をどう変えれば良いのか質問したのですが。
沖縄で伊東さんがおっしゃっていたのと同様、部下が自分に意見してきたときには、部下の方が顧客について詳しいからそこは最終的には部下の意見を尊重すると話されていたのが印象的でした。
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■サステイナブルなブランドを育み、ブランドを育む人を育てるために
Office Wada 和田浩子氏
■This is the house that Jack built
マザーグースの詩から
■The house that Ivory built
30年前にP&Gの150周年を称えられてAdvertising Ageで特集が組まれた
この30年間大きな変化が起こっているが、P&Gは存在感を維持することができている
■そのP&Gの柱となっているのがこの2つ。
ブランドマネジメント(Brand Management)
人材育成(Human Resource Development)
30年間、時代に合わせて途切れなく変化させて維持してきている。
そのため危機には陥るけれども会社を継続することができる
■マーケティング?
消費者のビヘイビアを変える(Change Consumer Behaviours)
・知らなかったことを知り、好きになる
・使わなかったものを使いたい
・買わなかったものを買う/買い続ける
Q:「知る」「買う」「使う」ではないのか?という質問が京都であった
体験という機会があることを考えると「知る」「使いたいと思う」「買う」という順番で考える方が良いと感じている。顧客が何でも使わずに買ってくれると思いがちなのは、企業側の慣れで危ない。
■ブランドマネジメント
・ブランドを育成する仕組み
・ブランド毎、売上・利益の責任
・全ての分野の戦略・立案
営業が利益に責任を持つのではなく、ブランドマネージャーが利益に責任を持つ。
だからこそ、ブランドマネージャーが全ての責任を持つ
■マルチファンクショナルチーム
ブランドが中心にあり、各組織はフラットに等しくそのために協力して動く
広告代理店もパートナーとしてその1メンバーとみなす
一般的に企業においては、営業が売っているという意識が強い。
でもB2B2Cにおいては営業は売り場に商品を並べているだけで、消費者が買うところまではコミットしていない。消費者が買うところに責任を持つのがブランドマネージャーとなる。
この組織構造と意識にするためには「改革」が必要
■「改革」というのは人の心を変えることだ(ワンピース歌舞伎より)
改革は形だけだと機能しない
組織構造だけだと営業が若いブランドマネージャーの話を聞かない。
■マーケティングの最初の一歩
・エンドユーザーを理解
・自社、他社製品を理解
手法自体は時代によって変わるが、重要性は変わらない。
手法の変化によって消費者も変化する点に注意
■ディマンドクリエーション
他のブランドを使っているユーザーを自分のブランドに来てもらう
ブランドを変えるに値する価値を提供
ユーザーに自分の意思でこちらのブランドを選択してもらわないといけない。
すでにユーザーは他のブランドで満足しているはず、そのビヘイビアを変えなければいけないという意識を持ってほしい。
■ポジショニングを決定
買わざるを得ない人
製品ベネフィット
根拠
ブランドイメージ
ポジショニングは、私はここにしかいないという決意の表れ。
同時に二つの場所にはいられない
絞り込まないとマーケティングにならない
最初からターゲットがエブリバディというのはあり得ない。
買わざるを得ない人を見つけるのが重要。
例えばダイソンにおいては、売れていない中でも買ってくれている人を分析し、花粉症で悩んでいる人が効果を実感していると分かった
■目的と戦略
戦略はゴールに向かう地図
どんなふうに進んでいくのか
新しい、正しい、でも困難なことにチャレンジ
みんなを同じ方向に向かわせる力
戦略がないマーケティングはありえない
アドテックにも戦略のセッションがないのは残念
■成功の鍵
エンドユーザーを理解
製品を理解
ポジショニング
目的と戦略
イノベーション
その結果
顧客満足度の向上
こういった施策をすれば顧客満足度が向上する
その後にまたそのエンドユーザーを理解するというプロセスを繰り返す
老舗の企業で自分達のやり方は分かっているという企業に限って間違っている
■ブランドになる
好意を持つ
満足している
優れている点やユニークな点を覚えている
ブランドは企業の持ち物ではない。ブランドは消費者の頭の中にある者
消費者の思いに寄り添った施策をしなければならない
良いブランドになるには何十年もかかるが、信頼を失うのは1日。
■成功が持続しないのはなぜか
成功が持続するように仕組まれていないから
その場限りのことになる
成功の持続を可能にする人材や仕組みがないから
成功を持続させたくない人は別として、本来は成功を持続させる仕組みを作れない人は50点
■成功を持続するための必要条件
勝つための戦略
優れたリーダーシップ
優れた人材
優れたシステム/仕組み
一貫したプリンシプル(行動規範)
もっとも不可欠なのは人材
■必要なスキル
・リーダーシップ
・戦略的思考
・コミュニケーション
・分析力と問題解決力
・イノベーション/リスクを負う
・実行力
・勝利への情熱
育成しなければならないのはマーケティングだけではない
全ての組織の人材が戦略的思考ができ、コミュニケーションが取れ、リスクをおえる必要がある
■人材育成の仕組み
・全マネージャーの責任
・業務と人材育成が一体化
・「業績」と「能力開発」両方評価
・失敗からも学ぶ
・明確なキャリアステップ
・社内研修
・幹部候補生育成システム
業務と教育は同時に実施する必要がある
売上が上がってないから、教育をしている余裕はないというのは良くない
研修プランを丸投げするのはダメ。社内にいる人がカスタムで作るべき。
P&Gでは講師は全て社内
教えることによってマネージャーのスキルも上がる
■持続的人材育成システム
教える人を増やすことが大事
優秀な人が教えてくれるとは限らないが、優秀な人を抜擢するだけでなく、優秀な人が教える仕組みを作っていくことが非常に重要。
■成功は成功を生み出すわけではない
成功から学ぶと成功を生み出す
失敗は成功を生み出さない
失敗から学ぶと成功を生み出す
Q:デジタルによって何か変わることがあるか?
・デジタルは重要だけれども顧客を見る方が大事
・人が人を見る
人数を増やせば良いという話ではない
Q:人材はどう見つけるか?
マーケターは、感じることができる人でないといけない
人間味のある人を見つけていく
人は変わっていない
大勢採用すれば、誰かがあたるというものではない。
Q:年功序列で上司を重視しがちな企業の文化を、どうやって顧客重視、顧客と接しているブランドマネージャー中心に変えていくのか?
P&Gでは、会議で上司が間違っていたら平気で部下が間違いを指摘する
年功序列には一定の意味はあるが、歳を取っていても勉強をしていない人を尊重することには意味は無い、
流通の知見は営業が詳しいから営業に当然サポートしてもらうが、営業戦略を決めるのも営業ではなく、ブランドマネージャー
そういう文化を創っていくために改革をしないといけない
ブランドマネジメントは価値がある仕組み
ブランドマネジメントがあればブランドがすくすく育つ
全員の目が顧客に向けば、社内の競争にならない
そこまで改革をして、会社の意識も変えることが重要。