5年後に、今と同じビジネスをそのままやっていたら、間違いなく時代遅れの会社になる。
2016年のワールドマーケティングサミット2日目のセッション「先進国のマーケティング」の速記メモをこちらにも共有しておきます。
初日に続き、コトラー教授とネスレ高岡社長のプレゼンは参考になる点満載でした。
「先進国のマーケティング」
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【フィリップ・コトラー教授】
■マーケティングカンパニー
P&Gは自らを顧客を満足させるために存在しているマーケティングカンパニーと定義している
■9つの質問 1~5
・複数のビジネス機会を見つけられているか?
・マーケティングリサーチや分析ツールを活用できているか?
・あなたの会社はイノベーティブに動けているか
・効果的に顧客とコミュニケーションできているか?
・効率的な営業部隊を組織することができているか?
・チャネル戦略は効果的か?
・良く練られた戦略を立てることができているか?
・マーケティングのための組織構成を作れているか?
・あなたの会社は何らかの社会的責任を果たすことができているか
・会社の中の立場によってこの点数は大きく変わるはずである。
■New Opportunities
・昔ながらの産業に存在する機会
・新しい産業に存在する機会
・他の国に存在する機会
・ローエンドに存在する機会
・ハイエンドに存在する機会
・特定のセクターに存在する機会
・ビジネス機会を考える上で破壊的テクノロジーの驚異に目を配るべきである
■ビジネスのフォーカスが変わってきている
・1950~1970 製品中心
(Product orientation)
・1970~1990 顧客中心
(Customer orientation
・1990~2010 ブランド中心
(Branding orientation)
・2010~2015 価値中心
(Value and values orientation)
・2015~2020 共創やクラウドソーシング中心
(Co-creation and crowdsourcing orientation)
■分析ツールが必要になっている
・Vulnerability analysis
・Opportunity analysis
・Scenario planning
■コミュニティを効果的に使うべきである
・P&Gでは既に35%がデジタルで65%が従来の手法になっているが50:50になるはず
■これからはマーケティングを1.0から3.0に進化させ、製品を中心にした視点から顧客にとっての価値を中心にした企業に変わる必要がある。そこで重要となるのは経済価値や利益を重視した企業から環境価値や人々の幸せを重視する企業文化に変えていくことである。
■現在さらにマーケティングは4.0と定義すべきものに変わっていく。
■書籍「FIRMS ENDEARMENT」
これからの企業は利益をPassionとPurposeから得るように変わっていくべきである
・顧客に対してパッションがある従業員を採用し、サプライヤーも真のパートナーとして協働することにより、生産性や質の向上とコストの低下も見込める
・企業文化こそが最も重要な資産である競争優位性の源泉となる
・顧客こそが広告になってくれることにより、広告自体を大量に打つ必要がなくなっていく
■CSRに投資することが合理的になってきている
・企業は他社と差別化する必要がある。顧客はケアリングカンパニーから買う傾向が強くなっている。
■ここで予言をしておく。
5年後に、今と同じビジネスをそのままやっていたら、間違いなく時代遅れの会社になってしまうだろう。
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【ネスレ日本高岡社長】
■日本の新しい現実
・人口が減少する
・一般的な家庭環境の減少も急速に進行する
・家庭環境の変化により消費スタイルも大きく変わる
・家庭で自炊をするのが当然の時代から、外食中心の生活に変わる
■ネスレ日本が取り組んだこと
・コーヒー1杯のためにお湯を沸かすことが面倒になる時代が来ていることが明確に
↓
・バリスタやドルチェグストにより1杯から楽しめる手段を提供
・自らが強い家庭市場よりもオフィス市場に出て行く必要が明確に
↓
・ネスカフェアンバサダーによりオフィスで低コストでコーヒーを楽しめる手段を提供
・それだけでなくコミュニティを活性化し、アンバサダーとともに新しい価値を競争する存在に変わることを目指している
■日本の新しい現実
・100円ショップが流行る一方で高価な商品も売れている
・安いチョコが売れる一方で高価なチョコレートも売れている
■ネスレ日本が取り組んだこと
・ナショナルブランドがコモディティ化し始めている
↓
・ショコラティエと協働し、キットカットショコラトリーの直営店を設立。
・一般のキットカットの20倍の価格に設定することでナショナルブランドにおけるクラフトマンシップの存在をアピール
・キットカットショコラトリーのECを通じた直販も開始。
■これらの取り組みにより、ネスレ日本はネスレグループの先進国における成長率の倍以上の成長を達成することができた。
■自分達だけでキットカットショコラトリーのようなプレミアムブランドを確立することはできなかった、ここで重要だったのは高木氏という著名なショコラティエとのコラボレーションである。
自分達だけでできない部分をどのようにコラボレーションするかが重要。
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【ラリー・ライト】
■価値は、得られるものとコストの相関関係で決まる。
■What you get 企業が得るもの
・トータルブランドエクスペリエンスは3つの要素で決まる
・Funcitons
・Emotions
・Social
・ソーシャルメディアの普及により明らかにソーシャルベネフィットが重要になっている。
■What it cost コスト
・トータルブランドコストは3つの要素で決まる
・Price
・Time
・Effort
・多くの企業が価格を安くすることだけにこだわりすぎている
・時間の方がお金よりも重要になりつつある
・顧客の労力を意識することも重要である選択肢を提示しすぎることも顧客にとって大きなコストになりえる
■信頼が脅かされ始めている
・国谷企業など大きな組織に対する信頼度が過去最低になってきている
・大企業のマーケティングももはや信頼されなくなっている
・顧客を操作し、騙そうとするマーケティングが、企業の信頼を損ねている
・ブランドとは消費者との約束であり契約である
■Trustworthy Brand Value
信頼に値するブランド価値を構築することができるかどうかが重要である。
重要なのは「コモンセンス」である
企業側の視点ではなく顧客の視点で考えるべき、売り手の視点ではなく買い手の視点で考えるべき
■信頼に値するブランド価値を構築するために
・リーダーとして行動すべき Be a Leader
・一貫性を持つべき Be Consistent
・信頼される情報ソースになる be a trustful information sources
・選択肢をシンプルにすべき Simplyfi Choice
・オープンであるべき Be Open
・コラボレーションすべき Collaboration ?(聞き逃した)
■選択肢をいたずらに増やしすぎるのは顧客視点でもマーケティング視点でも無い、企業の傲慢であり混乱視点だ。
■信頼に値するブランドを構築することはビジネスのマネジメントにもつながる。
フォルクスワーゲンが信頼を軸に考えてビジネスを考えていれば、あの不正問題は無かったはずだ。
■マーケティングはコミュニケーションに特化する一つの部門ではない。企業全体にまたがるべき考え方である。
■一貫性を持って続けることが最も重要で、その次にリーダーとしてイノベーションを続けることが重要と言える。
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