見出し画像

須原屋 川口前川店(埼玉県川口市)

 埼玉県で創業148年を迎える老舗、須原屋すはらや。今回は川口前川店の店長・赤坂浩史あかさかひろしさんと、児童書担当の永井宏美ながいひろみさんにお話をうかがいました。

 須原屋の創業は明治9年だそうですね。

赤坂店長(以下赤坂) 初代高野幸吉たかのこうきちが、浦和に創業しました。戦争で休業状態に入った時期もありましたが、148年間、看板を掲げ続けることができ、一貫して地域密着型で経営してきました。
 創業以来、最も大事にしていることは「地域に愛される本屋」であること。「埼玉の本屋といえば須原屋」と思っていただけるような書店を目指し、現在は埼玉県内に7店舗を構えるほか、浦和を中心に学校向けの販売にも力を入れております。

 川口前川店の特徴を教えてください。

赤坂 当店は、全店舗のなかで売り場面積が一番広く、バラエティーに富んだ品揃えをしています。ショッピングモールの中にあるので、ファミリーでのお客さま、小さなお子さまも大変多くいらっしゃいます。
 広々としていてベビーカーでも入りやすいのはいいのですが…それゆえに、お客さまが求めている本がすぐには見つからないというのが、長年の課題です。在庫はあるのに、お客さまが見つけられなかったために、「ほしい本がなかった」とがっかりしてお帰りになる…ということがないよう、案内や表示には、今後も細やかに対応していこうと思っています。

 おふたりが書店員になられたきっかけと、子どものころお好きだった本について、お聞かせください。

赤坂 私は、学生時代に須原屋でアルバイトをしていました。卒業後は別の仕事に就いたのですが、数年して、やっぱり書店での仕事をしたくなり、須原屋に転職してから30年以上が経ちました。
 小学生のころは、親がそろえてくれた伝記が好きでした。子どものころに読んだものって、けっこう覚えているんですよね。例えば『リンカーン』に出てきたアメリカの大統領選の仕組みなどは、大人になっても記憶にあり、役に立ちます。

永井さん(以下、永井) 私も、学生時代に須原屋でアルバイトをしていて、偶然ですが、やはり大学生だった赤坂店長といっしょに働いていたんです。一時期、ほかの仕事をしていたのですが、書店の仕事が好きだったので、須原屋に戻ってきて、もう20年以上勤務しています。
 好きだった本でよく覚えているのは、中学生のころ、自分で買ったコバルト文庫。なかでも、新井素子さんの本が好きでした。

 須原屋さんでは、長く勤めている方が多いそうですね。

赤坂 そうなんです。スタッフには、アルバイトで何十年も働いているという人も多く、社員よりも本に詳しかったりして、とても助かっています。
永井 働きやすい職場なのだと思います。

 最近では、どんな本が人気ですか。

永井 小さなお子さまは、しかけのある絵本が好きですね、しかけ絵本のコーナーには、いつもお客さまがたえません。また、エリック・カールの『はらぺこあおむし』や、かがくいひろしさんの「だるまさん」シリーズなども、常に人気があります。小学生は、斉藤洋さんの「おばけずかん」シリーズ。補充してもすぐに売れるので、切らさないよう気をつけています。それから、「おしりたんてい」「かいけつゾロリ」といったシリーズも、相変わらずよく売れています。鈴木のりたけさんの『大ピンチずかん』も人気がありますね。

 弊社の新刊の『マップス・プラス』『まよなかのかいじゅう』を早速置いていただきまして、ありがとうございます!

赤坂 徳間書店さんは、児童書に限らず、さまざまなジャンルの本を出版されているので、どの売り場にも本があり、存在感がありますね。

 今後の抱負をお聞かせください。

永井 私は実用書の担当が長く、実は児童書の担当になってまだ5ヶ月です。実用書の場合、ひとつの作品が急に何十冊も売れるということは、めったにありません。ですが、児童書は人気が出ると、何十冊も売れていくのが、とても新鮮で面白く感じています。
 最初は、前任が築いてくれたものをしっかり引き継がなくては…という思いで、これまで売れていた本を中心に展開してきました。ですが、少しずつ慣れてきましたので、私自身が売りたいと思う本も積極的に置いて、売り場を作っていきたいと思っています。また、紙の本が読みたい、という子どもたちを増やしていきたいです。

赤坂 埼玉が「県」になった明治初期から、須原屋は、埼玉県の発展とともに歩んでまいりました。この地域には、全国展開の大型書店が複数あり、競争も激しいのですが、私どもは、これからも地域に密着し、郷土の文化を大事にしていきたいですね。郷土本や、埼玉出身の作家さんの作品、埼玉に関係する本などを、引き続き、豊富に揃えていこうと思っております。老舗ということにあぐらをかかず、この先を見据えて、はぶくものや、変えるものがないか、ひとつひとつを見極めながら、日々、実行していきたいと思っております。
 また、これまでお子さま向けにイベントを行ってきましたが、さらにイベントを増やし、より多くのお客さまが足を運びたくなるような工夫をしていこうと思っております。

 ありがとうございました!

お店の情報
須原屋 川口前川店
〒333-0842
埼玉県川口市前川1-1-11
イオンモール川口前川3F
TEL:045-263-5321
10:00〜21:00
https://www.suharaya.co.jp/information/?id=6
アクセス:JR蕨駅よりバスで約10分

(徳間書店児童書編集部「子どもの本だより」2024年7 月/8月号より)

いいなと思ったら応援しよう!