見出し画像

歯なんて抜けたくない…

「歯がグラグラする」
年長さんの息子がうったえてきた。
前歯の下の歯を見せる。
「え!その歯が抜けたら大人の歯が生えてくるとよ!」
成長の証にわたしはテンションがあがってしまった。

夫にも「グラグラするってよ!」と報告し、ふたりで「お~!」となって喜んだ。
だけど、息子は不安そう。
そうだよね、大人は遠い昔に経験済みだし当たり前のことだけど、息子には初めてのことなのだ。

「こわいよね」
息子のところに戻って話しかけた。
「うん。とれたら血が出るの?」
「無理やりとったら血が出るかも。でも自然にポロってとれたら出ないよ(たぶん)」
「飲み物飲んでるときとれちゃったらおなかの中に入っちゃうかも」
「そしたら、うんちと一緒にでてくるから大丈夫よ」
わたしは説明しながら、こうなったらどうしようとか予想ができるようになったのか~と感心していた。

寝る前にも、「歯なんて抜けたくない…」としょぼしょぼした声で言っていた。
コロコロとベッドの上を転がりながら、「歯抜けないで…歯大事にする…」と、いつもハミガキを嫌がるくせに言い出す。
よっぽどこわいんだな。
わたしの左腕にしがみついてグスグスと泣き出した。

「昔は下の歯が抜けたら屋根の上に投げてたけど、最近はどうするんだろうね」と、息子の向こう側に寝ころぶ夫に聞いた。
「どうなんだろうね。オレは屋根の上に投げたけど。」
「屋根の上の歯はどうなったんだろうね?」
「鳥が持ってったんじゃない?」
夫とわたしが話していると、息子が「カラスじゃない?」と言った。

パパとママが子どもの頃は、下の歯は上へ、上の歯は下へ、大人の歯が元気に生えますようにって投げたんだよ、という話をした。

「下の歯は富士山に持ってったらいいんじゃない?」とわたしが言うと、
「上の歯はマリアナ海溝に投げたらいいんじゃない?」と夫が言った。
息子は深海魚が好きなので「深海がいいんじゃない?」と言った。

歯の話だけど、息子も気分が変わってきたようだった。
そのあと、恐竜の図鑑を少し読んで寝た。

近々、下の歯が抜けたら、宇宙に投げたらいいかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?