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未来の日本社会の姿を、圧倒的な説得力で説いてくれる1冊。変わりゆく未来に、自分はどう変わればいいのだろうか。『仕事2.0 人生100年時代の変身力 - 佐藤留美』【書評】

佐藤留美 著『仕事2.0 人生100年時代の変身力』

本著をひとコトで表現するならば、「未来の日本社会の姿を、圧倒的な説得力で説いてくれる本」。人々がまるで他人事のようにぼんやりと捉えている日本の未来像を、数値や事例をもとに明確化してくれる。

これまで何とかやってこれた日本人が、その延長で生き長らえようとするも、それを阻む数多の事実。変わりゆく未来に、自分がどう変わればいいのか。考えるきっかけをくれる1冊です。

一つの会社で一生を終えることはもはや不可能。
究極の個人戦を生き抜く、新しい働き方とは――。
過去を捨て、変身し続ける勇気を持て。

長寿化の流れとともに、「教育→仕事→引退」と人生が3ステージだった時代は終わりを告げ、仕事がずっと続く「生涯現役時代」に突入。企業寿命も短命化し、終身雇用という概念が崩壊しかけています。これまでの働き方が「仕事1.0」だとしたら、これからは「仕事2.0」へ。

本書では、日本型雇用や医療費の限界を解き明かしつつ、筆者の豊富な取材例のなかから、 パラレルワーク、W正社員、週末副業など、新しい働き方にチャレンジする実例を紹介。
さらに、100年時代を生き抜くために必要なスキルや心構え、つまりは“変身力"についても具体的に明示していきます。

人生100年時代。健康寿命も延びていく。生物として生きることだけを考えるなら、寿命が延びることは喜ばしいことなのかもしれない。ただし、生きるためには必要なものも多く、それを考えた場合、生きることに対する思考だけでは足りず、生き延びることへの思考が欠かせない。

本著では、さまざまなデータや取材、事例をもとに、「老後崩壊の危機」「日本型雇用の終わり」「働き方改革の真実」が語られる。それらは頭で理解して終了、というものではなく、理解した上で今日から何を変えるべきか? どのように変身すれば、未来に対応できる自分になれるのか?
読了後すぐに変わりはじめるための、後押しとなる材料が数多く提示されている。

本著を読むと、既に未来へのフェーズ(諸問題を多く抱え、それらが肥大化していく未来しか描けない)に突入している日本において、旧来の考え方や旧来の体制を引きずっている部分が、いかに多いか実感できる。

老後の資金はどうするのか?
何歳まで現役を続けるのか?
どのようなスキルを持って現役を続けるのか?
果たして社会から必要とされるのか?
現在の雇用形態をいつまでも維持できるのか?
社会保障は受け続けられるのか?
学びのない大人でいいのだろうか?
じゃあ、何のために、何について学ぶのだろうか?

我々は多くの疑問が渦巻く中、それらを他人事として捉え、強い危機感も持たずに生きている。

例えばそれが家計だった場合、収入と支出という観点から理解も早いのだろうけど、それが国の問題になった瞬間に、思考停止してしまう人が多い。
支出が収入を上回ってしまえば生活が立ち行かなくなるし、健康を維持できなければ収入を得続けることは困難になってしまう。

単純な足し引きの計算だけでも事実は理解できるはずなのに、他人事になった瞬間に、尽きることのない資金が脳内に思い描かれるのだろう。我々が生きているのは現実社会。決してファンタジーの世界じゃない。

じゃあどうすればいいのだろうか?

本著では「今後は変化への対応力で格差が生じる」と示され、ロンドン・ビジネス・スクール教授のリンダ・グラットン氏が論じる、人生100年時代に向けて蓄えるべき3つの「無形資産」について語られている。

その3つが、「生産性資産」「活力資産」「変身資産」。
個人的にはこの論説部分が最も興味を引かれ、今後、強く意識し生きて行こうと腹落ちした。これらの無形資産については、ぜひ本著で確認してもらいたい。

細々とした日々のスキルアップも必要かもしれないが、まずは敵を知らなければ戦はできない。現在と未来の全体像を理解した上で、今の生き方と今後の生き方を考えることが重要だろう。

現実がどうなっているのかを知り、未来の全体像を掴むために一役も二役も買ってくれる本著。決して危機感を煽る類の書籍ではなく、自分の行動について見直すきっかけをくれる1冊と言えるのではないだろうか。


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