圧倒的な結果にこだわり、熱狂と呼べるほどに「好き」が昇華したとき、人はもはや「好き」に取り憑かれることになる。『たった一人の熱狂 - 見城徹』【書評】
見城徹 著『たった一人の熱狂』
本著をひとコトで表現するならば、「自分のやるべきことに信念を持ち、情熱を注げる本」。狂おしいほどの「好き」と「使命感」が合わされば、人はこれほどまでに熱狂できるのか。
読み進めるうちにどんどん見城徹のファンになっていく自分に気づいた。完全に言い訳を撤廃し、「好き」に突き進む男の姿に嫉妬すらも覚える1冊です。
すべての新しい達成には初めに熱狂が、それも人知れない孤独な熱狂が必ずある。「癒着に染まれ」「野心なんか豚に食われろ」「一撃必殺のキラーカードをつかめ」「人たらしになるな。『人さらい』になれ」「結果が出ない努力に意味はない」など、出版界の革命児・見城徹による、仕事に熱狂し圧倒的結果を出すための55の言葉を収録。
本著は、堀江貴文とサイバーエージェント藤田晋の手によって起ち上げられたSNS『755』で著者が発した言葉を土台とし、全面的に再構成された書き下ろし。真正面から755のユーザーと向き合う中で生まれた珠玉の名言が詰まっている。
これほどに書籍の内容をタイトルが一発で言い表している本は他にないんじゃないだろうかと思わせられるほどに、見城徹の仕事や人間に対する熱狂が伝わってくる。
角川書店の取締役編集部長に昇りつめ、部下5人と幻冬舎を起ち上げた見城徹。そこまで昇りつめた波乱万丈な轍はもちろん、幻冬舎を起ち上げる覚悟や、出版業界に対し一石も二石も三石も投じるその迫力を知ることができる。
そして今では大物となった坂本龍一や秋元康などの著名人たちと切磋琢磨した若かりし頃のエピソード。なぜ彼らがあの時代に集い、何かを巻き起こそうとしたのか。各々の天職に対する熱狂が強く胸を打つ。
仕事に対する熱狂とはすなわち、自らの「好き」に対する発狂寸前なほどの熱情。そして、他者への圧倒的な奉仕の精神。ただし、その全てが言い訳を排除し圧倒的な結果にこだわる信念から生まれてくるものであると、本著を読んで感じることができた。
本著のようにワンフレーズの金言があり、それを噛み砕いた著者の言葉が連なる書籍は、ビジネス書の世界にはたくさんある。ただ、本著からは、特にその金言から、異常なほどの熱量が感じられた。
文字を読むだの、行間を読むだの、そんな生半可な読書術など通用しない。著者自らがこちらを怒鳴りつけるが如く、凄まじい迫力で迫ってくる。ひと度その言葉に触れたが最後。行動しない自分が後ろめたくなってしまう。
まさに、心と身体を同時に突き動かしてくれる一冊だ。
「好きなこと」というのは中途半端にやってしまうから、飽きがきたり興味を失ってしまったりするのだと思う。圧倒的な結果にこだわり、熱狂と呼べるほどに「好き」が昇華したとき、人はもはや「好き」に取り憑かれることになる。
本著を通じ、見城徹の仕事や人間関係への姿勢を学ぶことで、「好きなこと」という平易な表現にヤケドしそうなほどの熱が帯びる。
意識高い系などという言葉が登場して久しいが、誰しも濃い人生を送りたいはずだ。薄っぺらい人生で納得できる人なんて、きっと少ないだろう。だったら、好きなことに対し、恥ずかしいほど好きと叫んでみないか。
なぜそれほどまでに傷つきながら前進するのか? と問われたとき、「好きだからです」と胸を張って答えられる。そんな人生を歩んでいきたいものだ。
もう一度言う。本著はまさに、心と身体を同時に突き動かしてくれる一冊だ。
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