NHKの精神科クリニックドラマ『シュリンク』と『新宿野戦病院』
フジテレビで放送している宮藤官九郎脚本の『新宿野戦病院』は新宿歌舞伎町を舞台にした現代版赤髭の物語で、アメリカ帰りの女医小池栄子主演のストーリーは、いつもエグい救急医療ばかりで荒唐無稽!
だけど、毎回どこかホロリとさせる人情医療モノで毎週楽しみに見ている。”赤髭医療”をしているので病院はいつも経営難という設定だ。
NHKで8月31日から始まった土曜ドラマ『シュリンク』というのは新宿の片隅で優秀な精神科医と美人の看護師が患者さんを優しく癒していくというドラマ。
同じ新宿が舞台らしいのだが、第1回をみてみたらどうもそのあり方は、新宿野戦病院の対局にありそうだ。
ちなみに『シュリンク』というのは人の心の問題や悩みを縮めて解決するという意味のスアメリカの若者のラングなんだそうだ。
そして主人公の精神科医はドラマの冒頭から「日本人はもっと気楽に精神科を利用してほしい」とのたまう。うーむ
第一回はパニック障害のエピソード。シングルマザーで保育園児の息子を持ち、都会の企業で第一線で仕事している30代の女性主人公。ワンオペと仕事上の責任の重さというストレスからパニック障害になってしまう。
パニック障害になって電車に乗ると息が苦しくなったり、会社で大勢の人の前でプレゼンするシーンに突然パニックに陥ったりなどというシーンが丁寧に描かれていたので、パニック障害がどんなものかを想像することができた。
また最初に行った精神科で処方された薬が体に合わなくて、めまいの様な感じとひどい眠気に襲われ、精神科で処方された向精神薬(おそらく抗不安薬)が体質に合わない場合があることが説明されていた。(ただし最初はとても効果が出て、のちに耐性ができて依存症になってしまうことが多いのだが)
その後、主人公は若くて優秀で優しくてハンサムな精神科医のいる新宿のクリニックに、ラッキーにも受診することができて、症状だけでなく生活環境をゆっくり聞いてもらい、パニック障害を克服するための行動チェックリスト=計画表を医師と一緒に作り、パニックが起きた時だけ、薬をお守りのように持って頓服で使うようにアドバイスされる。
優秀でハンサムな先生は、なぜかフランスパンを包まずにいつも抱えてかじっているんだけど、フランス人の真似かしらん?でお医者さんなのに糖質制限とかグルテンフリーとかは考えたことないのかなあ、腸の具合はいいのかしらんと私は、老婆心ながら栄養療法的につぶやいてみる。
またハンサムで優しい医師と看護師は、パニック障害を克服するための患者の練習として「電車は乗れなくても見るだけでいい」「駅まで行ってみよう」の街歩きの実験にも付き合ってくれる。
医師のサポートのもと電車に乗ることを初め、少しずつできることをゆっくり試しながら自信をつけて「ベビーステップ」で困難を克服することで自信をつけた主人公。
そのおかげでドラマの終わりには、「ストレスのために誤作動してしまった脳の自律神経を整えること」ができたようだ。
このドラマは漫画が原作だということで私は読んだことないのだが、人気の漫画らしい。私たちが欲しい『理想の精神医療』がよく描かれているなと思った。
でもね、医師の診療報酬の通院精神療法って初診で60分以上6000円。再診は30分以上4100円なんですよね。
患者さんの通勤の練習に半日、精神科医と看護師が付き合って4100円の収入だと、やっぱりクリニックは潰れちゃうよね。あるいは全部自費のクリニックの話なのかな?
古い日本家屋で、患者さんは一人だけで、応接室みたいな診察室で患者さんはソファに座って、悩みを精神科医と看護師さんがじっくり聞いてくれて、薬を最低限しか使わなくて、回復のための計画表を一緒に作ってくれて、再診で支払いがもし2000円くらいなら・・・ちょっと辛い時に私も精神科に通ってお話聞いてもらいたいなと思う。あっ薬はいらないよ!
だけどね!現実の精神科医クリニックでは、初診の30分くらいでうつ病とか診断名がついて、最初から向精神薬が3剤も4剤も出て、生活習慣のことなんで何にもアドバイスくれなくて、薬はだんだん効かなくなるから訴えると徐々に多剤処方になっていく。こういうのが私の取材した精神科クリニックのスタンダードコースなのですね。
『新宿野戦病院』も『シュリンク』も本当に現実的にはありえないドラマの中の病院なんだけど、『新宿野戦病院』には飢えと超えきれない現実に向き合う怒りと愛があるんだけど、『シュリンク』にはなんか絵に描いたもちを綺麗な皿にもって出されたような戸惑いがあるんだよね。今のところ!
来週は躁うつ病を扱うようです。https://www.nhk.jp/p/ts/Y7W5715P1L/schedule/
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