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365日のてのひら話

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200文字を基本に500文字までの物語。
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2024年1月の記事一覧

2024/01/29 白道(はくどう)

「今日の月は、昨日よりは南寄り。あの山にかかるようになった」 月を眺めてる友人が隣でそん…

名野凪咲
9か月前

2024/01/31 日脚伸ぶ(ひあしのぶ)

5時の音楽が鳴っている。高いその音は大人になると聞こえづらくなるというけど、私にはまだ聞…

名野凪咲
9か月前

2024/01/30 冬うらら(ふゆうらら)

外に出るとふわりと暖かい空気に包まれる。家の中の方が寒い空気が溜まっていて、寒いようだ。…

名野凪咲
9か月前

2024/01/28 彼は誰時(かはたれどき)

「るーちゃん。みっけ。帰ろう」 「うん」 かくれんぼで遊んでいたのは5人。最後まで探してい…

名野凪咲
9か月前

2024/01/27 獏の枕(ばくのまくら)

「これで、悪夢は終わりだよ」 お兄ちゃんがそう言ってくれたのは一枚の不思議な絵だった。四…

名野凪咲
9か月前

2024/01/21 「スイートピーの日」

差し出されたピンクの花束に、面食らう。 「門出を祝って」 「え。ちょ……ちょっと待って」 …

名野凪咲
9か月前

2024/01/26 引明け(ひきあけ)

満月に照らされて黒い小動物が飛び交っている。鳥と間違われるそれは、よく見ればブタのような顔で可愛い。 「また、お前か」 小さな種を放り投げると、器用に空中でキャッチする。なぜかこの空飛ぶ黒豚はいつも私の傍に来る。もしかしたら、別の個体なのかもしれない。見分ける術を私は持ち合わせてない。 空がうっすらと明るくなると彼らは退く波のように洞窟に帰っていく。私の元にいた個体も彼らの流れに混ざる。 そして、鳥たちが目覚めの声をあげる。

2024/01/25 裏白(うらじろ)

きゅう……と閉じていく小さな葉っぱはまるで生きてるみたいだ。 「これ、昆虫?」 「オジギ…

名野凪咲
9か月前

2024/01/24 のこんの雪(のこんのゆき)

外は汗ばむくらいの暑さだというのに、その洞はまだ冬のように雪が残っていた。手を伸ばすとヒ…

名野凪咲
9か月前

2024/01/19 「カラオケの日」

「歌って」 差し出されたマイクに、私は固まる。何を歌っていいのか分からない。 恋愛歌は男を…

名野凪咲
9か月前

2024/01/17 「おむすびの日」

「おむすびころりん……すってんてん」 不思議な歌と共に、おむすびが……落ちてきた。見事に…

名野凪咲
9か月前

2024/01/23 白日(はくじつ)

暗い洞窟から出るとあまりの眩しさに目を閉じてしまいそうになった。その光の中に人影のような…

名野凪咲
9か月前

2024/01/15 「左義長」

赤い火は大きくて怖かった。 ふわりと舞う半紙には墨で書かれた文字がまだ残っていた。火の粉…

名野凪咲
9か月前

2024/01/22 たま風(たまかぜ)

ぎゅっと拳に力を入れる。身体をこわばらせると、まるで狙ったように強い風が叩きつけてきて、倒れそうになる。 たま風と言うのだと、地元の人間が言っていた。『魂の風』という意味だと。海に近いこの地域では死者の魂は海に還ると信じられている。強い風と共に死者が生者を連れて行こうとするのだと。 風の中に声を聞いたような気がした。 「はよ、行け」 私は慌てて足を速めて木々の陰へと入り込む。 「はよ、行け」 再び聞こえたその声に、私の足は動かなくなった。