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「今日の月は、昨日よりは南寄り。あの山にかかるようになった」 月を眺めてる友人が隣でそん…
5時の音楽が鳴っている。高いその音は大人になると聞こえづらくなるというけど、私にはまだ聞…
外に出るとふわりと暖かい空気に包まれる。家の中の方が寒い空気が溜まっていて、寒いようだ。…
「るーちゃん。みっけ。帰ろう」 「うん」 かくれんぼで遊んでいたのは5人。最後まで探してい…
「これで、悪夢は終わりだよ」 お兄ちゃんがそう言ってくれたのは一枚の不思議な絵だった。四…
差し出されたピンクの花束に、面食らう。 「門出を祝って」 「え。ちょ……ちょっと待って」 …
満月に照らされて黒い小動物が飛び交っている。鳥と間違われるそれは、よく見ればブタのような顔で可愛い。 「また、お前か」 小さな種を放り投げると、器用に空中でキャッチする。なぜかこの空飛ぶ黒豚はいつも私の傍に来る。もしかしたら、別の個体なのかもしれない。見分ける術を私は持ち合わせてない。 空がうっすらと明るくなると彼らは退く波のように洞窟に帰っていく。私の元にいた個体も彼らの流れに混ざる。 そして、鳥たちが目覚めの声をあげる。
きゅう……と閉じていく小さな葉っぱはまるで生きてるみたいだ。 「これ、昆虫?」 「オジギ…
外は汗ばむくらいの暑さだというのに、その洞はまだ冬のように雪が残っていた。手を伸ばすとヒ…
「歌って」 差し出されたマイクに、私は固まる。何を歌っていいのか分からない。 恋愛歌は男を…
「おむすびころりん……すってんてん」 不思議な歌と共に、おむすびが……落ちてきた。見事に…
暗い洞窟から出るとあまりの眩しさに目を閉じてしまいそうになった。その光の中に人影のような…
赤い火は大きくて怖かった。 ふわりと舞う半紙には墨で書かれた文字がまだ残っていた。火の粉…
ぎゅっと拳に力を入れる。身体をこわばらせると、まるで狙ったように強い風が叩きつけてきて、倒れそうになる。 たま風と言うのだと、地元の人間が言っていた。『魂の風』という意味だと。海に近いこの地域では死者の魂は海に還ると信じられている。強い風と共に死者が生者を連れて行こうとするのだと。 風の中に声を聞いたような気がした。 「はよ、行け」 私は慌てて足を速めて木々の陰へと入り込む。 「はよ、行け」 再び聞こえたその声に、私の足は動かなくなった。