夢を見ること~鉱物ジオラマと超現実~
さて、このところずっと私の今後の活動方針についてお話してまいりましたが、本日は島津さゆり個展「こんな夢を見た」のテーマとコンセプトについてお話ししたいと思います。
先日、自分の背景やルーツから無意識や潜在意識にアクセスする現代の「かんなぎ」とシュルレアリスムの相似に迫る表現を目指していることは既にお話ししました。
その上で、今回の個展には「こんな夢をみた」というタイトルを採用しました。
今回の展示のタイトル「こんな夢を見た」は言うまでもなく夏目漱石「夢十夜」の冒頭の一節です。
その一文が冒頭に据えられた時点で、その後に続く奇妙な光景は潜在意識の中にうごめく超現実として読み手に追体験され、決して交わらないはずの夢の世界を彷徨する探検者として読み手を幻想と現実のあわいにいざないます。
「こんな夢を見た」という冒頭は、そのたった七文字で無限の自由を獲得するのです。
今回、この冒頭の一文を個展のタイトルに据えることで、私は現実にはないこの作品群の光景を超現実…潜在意識の中にあるひとつの真実として観客と共有したいと考えています。
また、今展の作品すべてには、例外なく鉱物が自然の姿そのままに、加工されることなく組み込まれています。
私が鉱物を共通したモチーフとして必ず作品の中で扱うのは、誰もが見てわかる「自然」の象徴の一つとして扱っているためです。
ここでいう「自然」とは、人間の崇拝の対象とされてきたもの、人為の届かない現実そのものを指します。
そうした「自然」=「現実」の象徴としての鉱物を、あえてスケールや必然性を無視したありえない形で唐突に配置したり、絶対に現実にはあり得ない人工的な光を与えたりすることで非現実性を強調し、対比する存在としてスケール感のあるフィギュアや模型を配置することで、逆説的に超現実、不思議な揺らぎや既視感を覚えるようなシュルレアリスムの文脈に則った仕掛けとしています。
絶対的自由としての夢の世界においては、すべてのことが解き放たれ許されてしまう。
それ故に夢の中、無意識の領域では人間の根源的な真実と向き合える。
現実に様々な混乱や大きな変動が押し寄せるこの時代に、そうした人それぞれが抱える真実と向き合う自由な時間を、今展で体験していただければと思います。
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島津さゆり個展
「こんな夢を見た」
鉱物ジオラマ作家「時計荘」として活動9年目を迎える本年、
新たな表現を目指し美術作家「島津さゆり」としての個展を開催することになりました。
暮らしの中で鉱物を美しく飾るための鉱物ジオラマから、
「明け方に見た気のするような夢」をテーマとするアッサンブラージュアートとしての表現へ。
新たな手法を探る初の試みの個展です。
■会期
2022年5月17日(火)~5月22日(日)
11:00-19:00 ※月曜休館、最終日17:00まで
■会場
The Artcomplex Center of Tokyo (ACT)
〒160-0015 東京都新宿区大京町12-9,2F ACT2
TEL 03-3341-3253
E-mail info@gallerycomplex.com
■入場料 無料