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「泣くな研修医」。忙しい医療の現場を垣間見た感想

病院や医療の現場は、患者としてはなじみ深いものの、医師目線では全くわからない未知の領域。ドラマや映画の影響で忙しいイメージだけは持っています。

そんな医療の現場をリアルに感じられる本書「泣くな研修医」(中山祐次朗 著)。現役の先生が書かれている作品なので臨場感がすごい。

Audibleで聴けて、しかもシリーズとして出版されているので飽きることなく、ずっと読み続けられます。どっぷりと作品の世界観に浸れる。

普段の生活からは感じられない非日常を感じ、今までとはまた違った目線で医師という仕事を見られるようになるかと思います。


〇あらすじ

研修医として病院に勤め始めた主人公、雨野。

駆け出しの医師で、手術もなにもできない無力さを感じながら日々邁進する。先輩医師や同僚のややドライとも思えるような考え方に反発したり、モヤモヤしたり。

なにもできない雨野は、患者の容態を把握するため病院に泊まり続けるなど、自分のできることを精一杯やっていく。

身寄りのない高齢男性、若くして末期のガンに侵された患者、交通事故で瀕死の状態で運ばれてくる幼い命。

待ったなしで押し寄せてくる患者たちに、一分一秒を争う医療の緊迫した現場、決断をせまられる医師の胸中を感じられる小説。

〇まっすぐな主人公が魅力

主人公の雨野が、損得勘定一切なく、つねに患者のために考えたり、行動したりする姿が魅力の一つだと思います。正直でまっすぐ、それでいて不器用は、読み手にしてみればかなり感情移入できます。

新人であれば、ひんぱんに起こってしまう小さなミスも、医療の現場では大きな事故につながりかねない。ミスや焦りも、自分ごとのように思えてヒヤヒヤしたり、心を締め付けられたり、感情を揺さぶられ続けます。

作品のなかで印象的だったのが、もう治らない患者さんへの、よくなりますよという言葉。軽々しく言えるものではありませんが、嘘だとしても患者の気持ちがどれだけ救われることか。

ただ、言った本人にすべての責任がのしかかってくる重たい言葉でもあります。この言葉も含め、一つのミスや判断が命に直結する医者という仕事は、責任がとんでもない仕事なのだとあらためて感じました。


経験がものをいう世界で、自分にできることをひたむきにがんばり続ける主人公に、思わず感情移入してしまう物語。

人の生死を扱った作品で感動必須。

非日常でもある意思の世界を感じられる小説で、おすすめです。

最後までお読みいただきありがとうございました。


おしまい。

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