偶然だったとしても
いつもの川沿いを缶ビールを片手に1人歩く。
ツンと鼻に入ってくる風の匂いにまだ冬の香りはしない。
暗くなるのだけは早くなったくせに、肌に触れる空気は妙に生ぬるくて夏の暑さを引きずっているのが個人的にはあまり納得がいっていない。
早く、冬になってほしい。
そんなことをついこの間までぼんやり考えていたのに、突然、一気に寒くなった。
日本の四季というのは、もう少しわかりやすく移ろうものではなかったか。
なんとまぁ極端な。
たった1週間で、片手に持つ散歩のお供が缶ビールからホットコーヒーに変わった。
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次のステージに進むためには何かを変えなくてはいけないような気がして、わざと時間を詰め込むようにしてみたんだ。
あまりに忙しい仕事が続いていたけれど、
「お前が来てくれるなんて。」
そんな風に驚かれるほど久しぶりに職場の飲み会に顔を出してみたりもしたし、仕事終わりに出かけて体を動かしたりもした。
休日もいろんな予定を入れたし、とにかく家から出て、あちこちへ足を運ぶようにした。
結果、すごい疲れてしまって、慣れないことはするもんじゃないなと思った。
けど、
そうして慣れていないことをしたからこそ得られた瞬間も少なからずあったし、動いたからこそ見えた景色もあったりした。
忙殺される日々に追われるだけでなく、時に少しの休息を。そして時に新たなスパイスと、努力を。
いつもと同じ景色にとらわれるのではなくて、違う景色を見るために慣れない場所に行ってみる。
そうやってバランスをとって前に進んでいくといいんだろうなと、疲れた体を引きずりながら思ったんだ。
だから、海外行きに、手を挙げた。
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はるばる遠征した推しのライブは相変わらず最高で、
ああ、この歌声を、音楽を、空間を心から楽しみに、僕は今日まで頑張ることが出来たんだと。
そして、これを機に明日からも頑張れるんだと。
そう思った。
「見つけてくれたのが偶然だったとしても、私はそれを大切にしていきたい」というMCでの彼女の言葉と余韻に想いを重ねながらホットコーヒーを飲み干す。
確かに、僕が彼女の音楽に出会ったことも本当に偶然のことだったし、ハマったのも偶然だと思う。
今回のチャンスに恵まれたのも偶然だと思う。
こうして散文を書き続けることも、
今日僕がこうして生きていられるのも、ただの偶然に過ぎない。
だとしても、偶然は何か動いてないと巡って来ないと思うんだ。
不器用だって、下手くそだってとりあえずやってみる。
そうして掴んだ偶然だからこそ大切にしたいし、感謝をしたい。
だから、行くんだ。
おしまい!
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