スティーヴン・キング『書くことについて』が学びに満ちていたので全力で推したい。
初めて読んだのは、2020年の7月。
当時も当時なりに、実り多い読書ではありました。
しかし、noteの毎日更新を筆頭に、文書でのアウトプット量が格段に増えている今のほうが、読んでいて楽しかった。
再読の醍醐味とも言える、出会いなおすような喜びをもらえました。
(ちなみに再読のきっかけは、推しの「スティーヴン・キング好き!」の一言。2020年当時はこんな理由で再読するとは想像もしてなかったよ)
本書は、大まかに分けて
1.幼少期から現在までを語るエッセイ
2.書くことについて
3.本書の執筆中に交通事故に遭い、一命を取り留めたエピソード
の三部で構成されています。
本題は2ですが、1と3も「プロの作家が本気で書いたエッセイ」という上質な文章に触れられる、読み応えのある章です。
キング自身も「たくさん読み、たくさん書く」を重要なこととして挙げています。
文章読本でありながら良い文章を読める体験をくれるあたり、主張の裏付けにもなっていて流石だと思う次第。
で、本書のタイトルにもなっている『書くことについて』。
キングはここで、小説の書き方を語ります。
しかし実際に語られる内容は、小説のみならず文章全般に応用できるものばかりです。
そして英語圏の作家ながら、英語ならではの表現に関する話題はごく僅か。
どんな言語にも通底する、文章論の基本をしっかり述べてくれているので、日本語の文章を書くことにもしっかり活かせます。
「地獄への道は副詞で舗装されている」なんて思わずニヤリとさせられましたよ。
キングは作家になるまでを描いたエッセイの中で、かつて縁あって週刊新聞の編集長をしているジョン・グールドから文章の書き方を教わった時のことを、こんなふうに振り返っています。
「ドアを閉めて書け。ドアをあけて書きなおせ」
その「ドアをあけて」書きなおす過程で最も大事なのが、余計な言葉を削ること。
どんなふうに削るかの実践として、本書の巻末には、短編小説の冒頭の「初稿」と「二次稿」のビフォーアフターがそのまま掲載されています。
実は私も、文章の推敲について書いたことがありました。
文章を書くうえで「同じような意味なら、より簡潔に表現する」ことを念頭においてはいますが…。
キングから影響を受けていたんだ、と再読で気付いた次第。
プロの作家の小説です。私の記事よりもずっと学びの多い推敲の過程を見られます。本当に。
noteも、創作大賞の応募受付が始まりましたね。
とはいえ本書は小説に限らず、文章術に興味のある方、書くために大事なことを知りたい方、濃いエッセイを読みたい方に全力でおすすめいたします。
機会があればぜひ。