なめ茸を買ったらパラレルワールドに移動した
2022年【春分の日】の今日、私はパラレルワールドに移動した。
季節が変わった事も関係してか、ここ最近は【ご飯のお供】を無性に欲している。
明太子、納豆、漬物をメインにこの一週間を過ごした。
おかずが必要不可欠な自分としては、おかず無しの食事スタイルはとても珍しい出来事だ。
今晩の【お供】に何か物珍しいものがないかと思い、普段とは違うスーパーへ向かった。
もうすぐ誕生日を迎える友人へ、駄菓子の詰め合わせを贈ろうと考えていた。
それもあって駄菓子の品揃えが豊富なそのスーパーを選択した。
雨が降る中、工事中の交差点を右折すると、警告灯の光が濡れたフロントガラスに広がって、一瞬めまいを覚えた。
その先で、対向車が脇道のない場所で右折ランプをつけて停車していた。
私の車が通りすぎた後ゆっくりと、右折の動きをしたがそこに道がない事に気付いたのか車体は右に曲がったまま止まった。
その後方の車も、交差する道のない場所で右折ランプをつけて停まっている車を不思議に思った事だろう。
あれは何だったのだろうかと不思議に思いながら視線を前に戻した。
ご飯のお供と駄菓子と、あと何か一つ買おうと思っていたものがあった事を思い出した。
【鍼シール】
磁気治療器のような丸いシールに、鍼がついている治療グッズだ。
以前にも数回使用した事があり、効果は納得がいっていたので久しぶりに鍼シールに頼りたい状況にあった。
ただ、これまで健康グッズや治療器にはそこそこに支出をしてきたが、ふと『いま手元にある治療器で事足りるのではないか?鍼シールを買ったら自分はカラダの不調がありますと自分に言い聞かせるみたいにならないか?』と思ったのだ。
支出を渋っただけの話ではあるが、鍼シールは今回見送る事とした。
スーパーにつくと、ラッキーな事に店入口の目の前の駐車スペースが空いていたのでそこへ車を停めた。
ご飯のお供コーナーで、明太子・漬物・塩辛・小魚の和え物・干物と迷いに迷い、気分を変えて瓶詰め・缶詰めコーナーへ向かった。
【ごはんですよ】もいいかもしれない。
そう思った時、下の段の【なめ茸】に目がいった。
なめ茸 なめ茸 なめ茸 なめ茸 なめ茸
この単語が私の人生に登場したのはいつぶりだろう。
存在さえ忘れ去られていた【なめ茸】という食べ物。
記憶もおぼろ気な旧友と永い時を経て再会した時の、懐かしいようなそうでもないような、そんな気持ちで瓶をカゴに入れた。
友人への駄菓子は再考した結果、電子チケットで違う贈り物にする事にした。
買い物を済ませて外に出ると、私の車らしき車体がだいぶ右側に停まっている事に違和感を覚えた。
斜め右に歩いていくと、違う車だった。
変だなと思いながら店入口の目の前の方向へ進むと、私が停めたはずの場所(A)には違う車が停まっていて、Bの場所に私の車はあった。
混乱した私はとりあえず車に乗り込み、この数分の間に何が起きたのかを理解しようとした。
(回想)
駐車場に入った時、二列目には一台も停まっておらず、ラッキーな事に店の入口の目の前が空いていた。
車を降りた私はエコバッグをショルダーバックの紐にくくりつけながらそのまま真っ直ぐ入口へ向かった。
半分下を見ながら歩いていた私を遮るものは何もなかった。
一体何が起きたというのか。
私の車が勝手に後ろに下がって、別の車がそこ(A)に停めたのか?
一列目(A)は空いていたが、あえて二列目(B)に停めていた可能性は?
それとも、前に停まっている車が私の車を後ろに押し退けて無理矢理そこに停めたのか?
それならフロント部分が潰れているはずで、こんなに綺麗にずらせられるものか?
レッカー車がやってきて二列目に移動させられたのか?
ここまで想像が広がると、自分がおかしくなったのではないかとちょっとした恐怖に襲われる。
何かがおかしい、何かが違う。
言いようのない違和感を持ちながら駐車場をあとにした。
そして来た道を走りながら、ある事に気付いた。
首から頭までの重だるさと左肩付近の痛み(コリ)が消えているのである。
鍼シールを買おうと思うほどコリが気になっていた事に加え、気温変化の激しさと雨で今日は頭が重たかったのに、だ。
この一連の流れがなんなのか、自分の持ちうる知識と経験を走馬灯のように巡らせてみたが、【勘違い】以外の現実的な答えは見つからなかった。
駐車場の件は勘違いで片付けたとしても、コリや重だるさの消失は説明がつかない。
この現象を腑におとせるとするならば
【パラレルワールドに移動した】
と考えるのが最適に思う。
いつ?いつ?いつ?私はパラレルワールドに移動したのか?
私の日常世界に存在しなかった【なめ茸】をカゴに入れたあの瞬間か?
なめ茸が目に入った瞬間か?
当たり前、思い込みの世界から、新しいご飯のお供を選択したからか?
あのスーパーがパラレルワールドの出入口だったのか?
それとも、ご飯のお供を欲しはじめた一週間程前には既に移動してたのか?
ちょうど同じタイミングでスマホが故障するという出来事も起きていた。
そうだ、玄関を出るまでは鍼シールを買おうと考えていた。
あの不思議な右折ランプの車を見た直後には、鍼シールを買う事を思いとどまる決断をした。
(決断というほど大袈裟な事ではないが)
『鍼シールを買う事で、自分のカラダは不調ですよと自分に暗示をかけるようなものだ』という前向きな理由で自己改革したからか?
(出費を抑えたかっただけなのはおいておいて)
いつ、どのタイミングだったのかは分からないが、あの警告灯の光が目に飛び込んできたあの瞬間がその時だったのかもしれない、とも思う。
そんな事を考えていると、昨日の自分の会話を思い出した。
親戚の子と山を歩いていた時のこと、その子がトレッキングポールを地面についてくるくると回りだした。
スイカ割りの序盤に行う動作だ。
それを見ていた私は『そんな事をしていたら分杭峠のゼロ磁場みたいになるよ』と伝えた。
なんの事を言っているかは伝わらなかったとは思うが、その動作を見てふと出た言葉がそれだった。
要は、クラクラになって方位や平行感覚がなくなるよという事を伝えたかったのだ。
ゼロ磁場はパワースポットだと言われているが、個人的には『良くも悪くも』だと考えている。
ご利益的なものが得られるのではなく、0に戻る力が働く。
ニュートラルに戻る。
そういうものだと思っている。
話がそれたが、ゼロ磁場と似たような働きをあの工事現場が起こしたのか、警告灯がだったのか、なめ茸がだったのか、もっと前からだったのか。
パラレルワールドに移動していたとして、
していたとして、
友人の誕生日が数日後だという事は変わっていないし
(この世界でも友人でいられて良かった)
明日から仕事がある事は変わっていないし
(収入源があって良かった、と喜ぶフリ)
桜がもうすぐ見頃という事も変わっていないし
(散った後の世界じゃなくて良かった)
何かがガラッと変わったわけではない様だが、私はいまカラダがスッキリ軽くなった世界に生きている。
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