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【本を読む】美術手帖2019.08

アートを生業としていない、私にとって美術手帖は、常に新しい思考を提供してくれる本です。

本書にて、森美術館副館長・片岡真実さんのコメントでは、

「社会を俯瞰する視点で全体のバランスを眺めながら、同時に個別の事物、語られる機会の少ないものにいかに寄り添えるか。これはわたしの大きな関心です。」

「アートがそれに取り組む際、客観的なリサーチによる展示だけがつねに良いわけではなく、いかに人の心を動かせるか、共感を得られるかは大きな問いだと思う。」

俯瞰して全体をぼんやり見ながら、自分自身のテーマや関心に沿って突き進んだ結果、価値創出に行き着いたこと。これは、アート思考の考え方に繋がります。

本書のメインである、現代美術家・塩田千春さんについてお話ししたいと思います。

どこかで塩田さんの作品を見たことがある方もいるかと思いますが、昨年まで東京・森美術館にて「塩田千春展:魂がふるえる」が行われておりました。

生と死など普遍的主題を扱いながらも「私性」の非常に強い作家さんです。塩田さんの歩んできた人生が、作品に大きく反映されていました。

圧倒的なアートへの熱量を持っている作家さんと言うのは、インタビューでのコメントでも読み取れます。

12歳から、「美術家になりたい。それ以外には何もなりたくない」と思っていままでやってきた。だから、その世界しか見たくないんです。

我を忘れて必死でつくるんです。がむしゃらに。そのときだけの作品をつくるために、私は存在している。

最後に、

本書で語られる、ヒリヒリするような塩田さんの半生を感じながら、彼女の作品を見ているだけで、非常に強い没入感を味わうことが出来たことは、ここでしか味わえない感覚です。

その感覚は、世界中に散らばる美術家の中の、たった1人の、塩田千春と言う美術家しか生み出せない価値であり、想いであります。

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