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人材育成の基本【読書ノート】組織戦略の考え方

以前の記事「目指すべき組織の形とは?」で、ビュロクラシ―・ライト(bureaucracy lite)を採り上げました。

従来の官僚制の良い部分は残しつつ、ルールによる硬直化を防ぐため、結果(アウトプット)に焦点を当てて、標準化を進める組織形態を理想としていました。

今回、同じく沼上先生の書籍を参考に、人材育成の基本について、書き留めておきたいと思います。


✅書籍『組織戦略の考え方』

採り上げる書籍は『組織戦略の考え方』です。

この本は、

各人が自分で自分の組織についてどのようにアプローチしていくのかという自分なりの戦略を作れるように、そのための読み筋を示唆する本にしたかったのである。

組織戦略の考え方 p.14

にあるように、組織の基本、よくある問題、組織の腐り方、という順番に、組織を考える上での切り口が紹介されています。

個人的には、同じく沼上先生の書籍である「組織デザイン」を読んでからの方が、より理解が深まると考えます。

そして、「組織デザイン」と「組織戦略の考え方」をセットで手元に置いておくと、組織の基本にいつでも立ち返れるおススメの2冊です。

✅人材育成の基本

図2 組織階層別の役割(組織戦略の考え方 p.17より)

 さて、官僚制機構設計の基本に対応して人材育成の基本も決まってくる。図2に示されているように、各階層ごとに必要な役割を果たせるように育成すればよいのである。すなわち、①決まり切った仕事を注意深く処理し、若干の例外的な状況に創意工夫で対応できる知的熟練者の育成、②例外的事象を鋭く分析し、バランスのとれた決断を遂行できる管理者層の育成、③戦略を思考できるトップ・マネジメントの育成を行えば良い。
・・・
 現場がしっかりしているから、足腰がしっかりしているから、ミドルは問題の本質を考え抜くことができ、トップは戦略を思考する余裕を初めて獲得できるのである。創造性を強調したり、戦略性を強調するのであれば、同時に足腰を鍛えることも重視しなければならない。

「組織戦略の考え方」 p37-.38

組織の基本は、プログラムとヒエラルキー。
分業と調整です。

水平分業と垂直分業を組み合わせて、一人では出来ないことを多数の人が集まって実現していくのが組織となります。

育成の基本は、組織構造の基本に則って、組み立てていくことが求められます。

✅時間軸上で起こる組織設計の矛盾

 ここで指摘している問題は、長期的に望ましい組織設計と短期的に望ましい組織設計が相矛盾するということだと言い換えても良いだろう。短期的に環境への適応を効率的に行うのであれば、現場・ミドル・トップの垂直分業が明確な方が良い。しかし、現場・ミドル・トップの垂直分業を厳格化すると長期的には人が育たないという問題が生じるのである。
・・・
 つまり一言でまとめれば、短期の適応には厳密な分業が効率的だが、長期の適応には緩やかなオーバーラップ型の分業が効果的である、ということであろう。

「組織戦略の考え方」 p.41-42

組織というものは、常に矛盾を抱えています。

組織の拡大とともに分業体制が複雑化すると、情報の伝達が遅く、粗くなります。

このデメリットを担保するために、分業の厳密化を図ると、入れ替え、すなわち育成が困難となり、かつ環境の変化に弱くなります。

そのため、この矛盾を抱えつつ、組織内に一定のカオスを醸成していく必要があります。

カオスの醸成、それは、「一に採用、二に人事異動、三に教育、四に小集団活動、五にイベントにまとめられます」と書籍「心理学的経営」にあります。


また、そもそも、トップ、ミドル、ローワーでは、見ている時間軸が長期・中期・短期と異なることも、この矛盾が発生する大きな理由の一つです。

組織は常に様々な矛盾を抱えています。

この矛盾とどう向き合うかは、

トップが、どの時間軸で利益を最大化することを求めるかによります。

基本をおさえた上での、応用としての実務について、今後も気になることを書き留めておこうと思います。

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さくらいまさひろ@組織コンサルタント
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