2024年6月〜8月に読んだ
純文学しか読んでないね。本当に。
6月読んだ本
ここはすべての夜明けまえ/間宮改衣
みんな多分同じことを思うと思う。捏ねくりと捻くりの権化である私でも流石にそう思わずにいられなかった。人間でよかった。その上、人間で在れていることをもっと楽しむかとかも思っちゃった。どうか、ひらがなで読みにくいからって1ページ目で閉じないでふみとどまってほしい、5、6行読み続けたらもう閉じられなくなっているのがこの小説。
抱擁家族/小島信夫
小島信夫の抱擁家族はもう歴代1位と言ってもいいほど大切な小説になった。小島信夫の凄さは、とここまでキーボードで打ち込んで両腕に鳥肌が立つくらい凄くて、(私が過剰な鳥肌体質なのもあるかもしれないが)まだまだ言語化できそうにないのと、良すぎるので単純に秘めておきたい気持ちも少しある。また気持ちの整理ができて再読でもしたときに、新鮮な気持ちで深掘りしていけたらと今日のところは思う。
コルバトントリ/山下澄人
あとなんか残ってるのが山下澄人のコルバトントリ。時系列の飛び交い方が演劇的。こんなことが小説でもできるんだと驚いた。小説でそもそもやっちゃいけないことなんてない。山下さんはそれを本能で分かってて、ひたすら文章に落とし込んでる。シンプルな文章には高い純度のひたむきさがひたすら光っていて、大人になって失いがちなものが全部ここにあるんじゃないかとすら思える小説だった。
7月読んだ本
夢みるかかとにごはんつぶ/清繭子
これはさ!元気勇気覇気でるわ。エッセイで久しぶりにスコーンと打たれた。言葉がグサグサ真っ直ぐに刺さってくるのは、清さんがそれだけ真剣に日々考えて悩んで工夫して生きてきた証なのだと思う。こんなひたむきに生きる姿を見て、明日からも頑張ろうと思えないわけがない。そして清さん、何より強い。私はnoteで知っていて前から熱心な読者だったが、本が出てとても嬉しい。おめでとうございます。
私鉄系第三惑星/長澤沙也加
終始にこやかに読んだ記憶がある。一人で思い出したら笑えるけど人にいうまでもないみたいな日々のシーンがこぼさず散りばめられていて、それがますます主人公の孤独を際立たせてた気がして、主人公を守りたくなった。
この作品は2021年の太宰治賞の最終候補作。太宰治賞って他の5大文芸誌の新人賞と比較するとちょっと湿りを感じる、変わった小説が多い気がしていて、なんとなくコアな賞という印象。私はこの小説のタイトルに惹かれて太宰治賞の冊子を買ったし、受賞はしなかったけど、読めてよかったと思える個人的にとても好きな作品だった。
サンショウウオの四十九日/朝比奈秋
8月読んだ本
ジニのパズル/崔実
夏バテ気味の身体に適応する、高カロリー・高タンパク小説だった。書きたいことを書きながら模索する人も好きだけど、書きたいことの明確な人の文章を読むのはやはり清々しい。何もしてなくたって生きてるだけでエネルギーを消費するので、こういう小説は鰻を食うのと同頻度でもいいから読まなければいけないと思った。あと、エネルギーの多さが、この小説の繊細さの証明だったかもしれない、とふと思った。
自分以外全員他人/西村享
2023年の太宰治賞を、1年遅れで読む文学かぶれがここにいるわけなのだが、私の鬱屈した高校時代の日記には「みんな他人だもんな」という趣旨の文章が、毎度違うニュアンスで頻出していた。みんな他人であることをわざわざ言葉にしないと自分を保てない時代もあったことを、思い出した。
題名や装丁に反してなんて優しい小説なんだと思っていたら最後急速に裏切られた。なんだけど、読了後に冷静になってあの最後を振り返ったとき、やっぱりほんのり優しさが滲んだ気がしたのがおかしかった。自分以外全員他人だということが信じられない、いや、そうでしかない、いやいやそうじゃないかも、が入り混じった小説だったように思う。
かかとを失くして/多和田葉子
これも私にとって大切な小説になってしまったので、またどこかで、絶対かく。
銭湯/福田節郎
この3ヶ月、いい本しか読んでないことに気づいた。これを書き始める前はあんなに書き渋ってたのに、いざこうやって読んだ本を振り返ってみると急に饒舌になってめちゃくちゃ楽しかった。またやろうと思うんだけど、書かない期間続くと腰が重くなるくらいには正常な人間をやれてるとも思った。