ヨツバゼロ 18インチの組立作業公開!■2024年10月27日更新
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広島県広島市にある『動く自転車屋』『自転車の便利屋』サイクルサービストグトの公式noteをご覧いただきありがとうございます。
35年も昔のことなのに、人生で初めて乗った自転車を今でも覚えている快適長持ち系自転車安全整備士のノーリー(店長)です。
黒い車体に直角三角形みたいなカゴ、そしてグレーのタイヤという使用でした。
■トグトについて、連絡(利用)方法等
当店は出張修理等が多いため、決まった店休日や営業時間という概念がありません。
他店様が営業していない時間帯でも予約制にてご依頼等を承ります。
また、当店にて自転車の販売(防犯登録含む)も行っておりますが、他店様にてお買い上げの自転車の組立や点検及び調整、修理やカスタマイズ、オーバーホール等のアフターケアも大歓迎です。
当店についてはコチラをご覧下さいませ。
当店に利用予約や注文・依頼等の相談連絡をいただく場合はコチラ↓
https://note.com/togt24/n/n56ab0347f829
↑をご覧いただき、ご理解いただいた上でご連絡いただけますと幸いです。
■かゆいところに手が届くようなサイズ
キッズバイク(子供用自転車)はサイズの選定が難しいですよね。
12インチくらいのバランスバイク(『キックバイク』や『ランバイク』等と言う)がサイズアウトしたら、次は16インチの自転車。
それから20インチの自転車に…と、身体に合わない状態でしんどい思いをしたり危ない思いをしたりしながらも、無理して16インチや20インチの自転車に乗っているお子さんを見かけます。
そこで立ち上がったのが日本ブランドの【YOTSUBA CYCLE】(ヨツバサイクル)です。
今までに他のメーカーさんにはほぼ無かった『18インチ』サイズのキッズ車をリリースしています。
こちらが『ヨツバ・ゼロ 18インチ』です↓
18インチに限らず、ヨツバゼロの魅力は主に3つです。
①持ち運びも操作も簡単な超軽量設計である点。
補助輪無し・ペダル付き状態で7.8kgという完成車重量は、なかなかありません。
例えば他ブランドの同じ『18インチ』のキッズバイクだと13kgから14kgくらいあります。
大人にとってはたかだか5~6kg程度の差ですが、小さなお子さんにとっての5~6kgの差は決して微細なものではありません。
鉄製ではなくアルミ製だからこそ実現でき、アルミならではの錆びにくさも持ち合わせています。
②大人用スポーツ自転車と同じ部品規格を採用している点。
よくあるクロスバイクとほとんど同じ規格が採用されているのが特徴です。
例えば将来、親御さんが使っていた部品を移植することもできます。
③しっかり止まれるブレーキを採用している点
安全は非常に重要な要素です。
車体重量が軽いので、他の自転車と比べてもブレーキは効きやすいですが、ヨツバ・ゼロでは『Vブレーキ』を採用しています。
Vブレーキにも製品それぞれで良し悪しはありますが、そもそもVブレーキの時点で制動力が高いというのは事実です。
…このように魅力がたくさん詰まっているヨツバゼロですが、本来の性能を発揮させるためにも初期組立が非常に重要となります。
どんなにポテンシャルの高い車種でも、組立で残念な作業をされると本来の性能を発揮できません。
しかもそれだけではなく、各種部品の消耗が加速することで余計な修理代等が発生することで維持管理コストも高額になります。
■入荷したのに組み立てない。
多くの自転車に言えることですが、ほとんど完成された状態で販売店に入荷します。
↑のような箱に入ってる場合が多く、開封してみると…
このように一部が分解された状態で梱包されているのがわかります。
ヨツバサイクルの梱包はじゅうぶん丁寧です。
梱包資材を取り払ったら↑のような状態になります。
一般的な販売店さんだと、この状態から組み立て始めるのが基本です。
ところが当店ではこのまますぐに組み立てません。
組立の前に分解作業から行うのが当店の基本スタイルです。
タイヤ・チューブ、ギアまで一旦外します。
これは後々調整するためです。
正真正銘の新車(新品)ですが、鉄製品にはすでにサビが生じている場合もあります。
そしてそれより心配なのが各種ベアリング(小さい球)です。
当店に入荷した上程で異物が入っていたりします。
数が足りないこともありますが、ヨツバサイクルが特別悪いというわけではありません。
製造工場でつくられたほとんどの自転車は、フタを開けてみるとこういう品質です。
だからこそ販売店での分解チェックが必要になりますが、多くの販売店ではこんなに分解チェックをすることはありません。
人件費のことを考えるとどんどん赤字になるからです。
当店では↑のように、組み立てる前に可能な限り分解します。
それは、各部の入念なチェックと長持ちさせる下処理をするためです。
■こんなにある!各部品の下処理
分解チェックが完了したら、元通りに組み直すというわけでもありません。
どんな自転車も乗り物である以上、後々修理は発生します。
その時に部品が固着して外せないということになると、もはやその自転車の寿命はそこで終わりです。
そうならないよう、各部を入念に下処理していきます。
◆フレーム&フォーク関連
まずはフレームそのものに。
クランクとクランクを繋ぐ中心軸(『ボトムブラケット』や『BB』と言う)を受ける部分のネジに対して、専用工具を使って精度上げ処理をします。
削りカスがこんなに出てきました。
その分だけネジの精度が向上したとも言えます。
ブレーキ台座の受け口部分にも下処理をしておきます。
完成させると露出する部分ではないのでわかりにくいですが、某通販サイトで販売されていた自転車はこの台座の受け部分のネジ山が破損していました。
その時点で明らかな製造不良品であり、乗り物としてはとうてい使えるものではありません。
本来はメーカーさんが担うべき箇所ですが、製造される全数をくまなくチェックするとなると、自転車の販売価格が信じられないくらいに跳ね上がります。
それだけ人件費というのは大きなものです。
当店は予約制なのでユーザーさん(お客さん)1人ひとりに、自転車とも1台1台真剣にトコトン向き合うことができます。
余談ですが個人的にヨツバゼロを推せるポイントとして、このブレーキ台座が全て脱着可能であるという点です。
お子さんがヤンチャな乗り方をしても修理代ができるだけ少なく済むように、というメーカーさんの想いが伝わってきます。
どういうことか気になった方は↑の動画をご覧下さい。
まさにコレ!という事例を紹介しています。
アルミ製品はサビに強いですが、全く錆びないというわけではありません。
フレーム自体が少しでも長持ちするよう、届く範囲でパイプ内部にグリスを噴射して油膜を形成します。
当然ながらここまでやっても完全に錆びないという保証はありません。
しかしその油膜があることで、表面からは見えない部分のサビも生じにくくなり、自転車が圧倒的に長持ちします。
鉄(スチール)というのは特に錆びるものです。
高級なスチール製自転車でも『サビを育てる』という文化もあります。
しかしこのフロントフォークのコラムに生じたサビは一旦落としたいものです。
ヤスリで削ると径が変わってしまうので、サビ取り剤で可能な限り磨き上げます。
これまた時間がかかる作業です。
手で触って概ね滑らかになったら、サビ発生を遅らせるためにグリスでコーティングします。
自転車として完成したら見えない部分ですが、見てしまった以上はできるだけやらざるを得ません。
◆車輪関連
タイヤ・チューブ・リムバンド・ホイール等で構成される車輪もなかなか手がかかります。
大きな負荷が掛かる回転部分なので、最初に長持ちするような下処理をしておくことが重要です。
実はこれらのベアリング(球)も完全な真球ではありません。
価格の高いものは真球度も高いですが、安価なものは真球度も低く、肉眼では見えませんが歪です。
この真球度が回転性能に大きな影響を与えます。
歪なものは販売店で修正しようがありませんが、できる限りの下処理をするため、ベアリングも一旦取り出して完全に洗浄します。
ベアリングが接触する箇所の精度も重要です。
回転部品の工作精度はどうしようもありませんが、できる限りの調整をするために、まずは分解洗浄します。
ベアリングも錆びると動きが悪くなるものです。
それがメンテナンスされずに使い続けるとやがて破損します。
本当に最初の下処理で部品の寿命が大きく異なるので、意外と軽視できないものです。
もとの部品の工作精度によっては理想的な回転性能には至りません。
価格の差はこういう部分にも表れます。
前輪もやることは同じです。
ひとまず分解していきます。
入荷した時点ではこういうグリスでした。
このグリスが悪いわけではありませんが…
製造段階で異物を巻き込んでいるようです。
ほとんどの販売店ではこんなチェックをされていませんが、分解チェックの重要性がおわかりいただけるのではないでしょうか。
ちなみに当店では車種やようとに応じてケミカル類も使い分けます。
今回採用したのは耐久性と回転性能を高いレベルで両立したグリスです。
事前のヒアリング次第で耐久性をより高めるものや、回転性能を特に優先させるものもあります。
このグレードのホイールでは考えられないほどよく回転するようになりました。
もちろん異常なガタもありあません。
ホイールの振れを取り除く作業です。
芯出し作業もしながら、できるだけ精度の高いホイールにしていきます。
蛇足と言われる場合もありますが、タイヤ側面のヒゲも抜いています。
これはタイヤの製造段階で発生するものだそうです。
接地面は問題ありませんが、側面のヒゲはフレームやフォーク、その他部品に当たって異音の原因になりかねません。
ヴィジュアル的にもスッキリするので、側面のヒゲ抜きはメリットが大きいと思います。
リアギア装着用のネジ山に塗ってあるのが固着防止用のケミカルです。
ギアの寿命が来たら部品交換で当たり前に修理ができるよう、固着防止のケミカルを塗っておきます。
ギアが固着するとホイールごと交換になってしまい、余計な修理代が発生しかねません。
◆他の箇所も抜かり無し
その他、ひとつひとつの作業自体はプロにとっては難易度の高いものはありません。
ただし、それなりに時間を使うことになります。
ブレーキレバーにも下処理をしておくべきです。
ワイヤーの張り具合を微調整するマイクロアジャスターも動きが悪くなっていきます。
ブレーキレバーの初期位置も調整できる機能があるので活用するべきですね。
さすがにやり過ぎかなと思いつつ、カートリッジBBにまで下処理をしています。
入荷時点で大きな問題は感じませんでしたが、勢い余って分解しちゃいました。
せっかくなので超高性能グリスに交換してあります。
このBBという部品は高価なものではありませんが、交換するためにはいろいろな部品を脱着しなければならないため、工賃が高くなりがちです。
長持ちさせられるなら、ユーザーさんにとってはそれがいいでしょう。
見落としがちな点ですが、ステム(ハンドルとフォークを繋ぐ部品)の工作精度が気になります。
バリが出ているのでお子さんが何の気なしに触ってケガをするかもしれません。
ネジ山の精度上げも兼ねて、バリを除去してみました。
当店の基本方針は愛情(思いやり)整備です。
◆当店で購入するとやっぱりお得
今回は自転車とともにオプション品もお買い上げいただきました。
ヨツバサイクルの純正キックスタンドです。
いくつかのサイズに適合します。
当店では自転車との同時購入品の取り付け工賃は無料です。
それだけでもじゅうぶんお得ですが、オプション品にもしっかりと快適長持ちのために下処理を行います。
■圧倒的な耐久性と快適性の両立を目指す組立
各部品の下処理が済んだらいよいよ組立開始です。
ブレーキ台座の装着にもやはり目的に応じたケミカル類を使います。
ベアリングの受け皿となるヘッドカップはよほどのことが無いと交換することはありません。
しかし、絶対に交換することが無いとも言い切れないので、固着防止の下処理はしています。
ベアリングとの接触面にもしっかりとグリスを塗布済みです。
はみ出たグリスは拭き取ります。
頭についているピンクのステムですが、お子さんの成長にあわせて長さのあるものに交換することも可能です。
フレームの中心部分となるBBシェルにもグリスを塗布しています。
BBのネジは樹脂製なので、特に慎重に締め付けなければなりません。
シートチューブにもグリスを塗ってあり、これはシートポストとシートチューブの固着防止が目的です。
今回の仕上げ剤には【SURLUSTER】ZERO FINISH(シュアラスター・ゼロフィニッシュ)を採用しました。
より深いツヤを与えるだけでなく、2ヶ月くらいは雨を弾く高撥水コーティング剤です。
コーティングが済んだら前輪を装着します。
ナット留めタイプの場合は左右を少しずつバランス良く締め込んで行くのがコツです。
ブレーキ本体を装着しました。
ボルトにも下処理をしてあります。
補助輪を使わないので17mmナットは無くても問題ありません。
今回はハブナットキャップを使いたかったので、15mmナットだけでなくもともとついていた17mmナットも併用しています。
ハブナットキャップも絶対に必要というわけではありません。
今回のユーザーさんはクルマに自転車を積み込む機会が多そうです。
ハブナットキャップが無いと、ハブ軸が露出するのでクルマの内装を傷付けてしまう可能性があります。
防げるものならできるだけ防ぎたいですよね。
ブレーキシューを組み付け、位置を調整します。
ブレーキインナーワイヤーのサビ防止使っているグリスです。
ワイヤー全体にのばして馴染ませます。
ブレーキアウターエンドキャップも錆びやすいので、グリスでコーティング済みです。
ブレーキワイヤーを繋いで各部の最終調整をしたら、ようやく完成です。
■完成ッ!
納車前の状態なので本当の完成とは言えませんが、ひとまず自転車としては完成しました。
写真映えを狙ってサドル位置は一番高くしてあります。
※納車時にユーザーさんのベストな高さに合せます。
ベルやフロントリフレクターはヨツバゼロ 18インチの純正付属品です。
コーティングの効果もあり、美しいツヤを纏っています。
『RIDE SMILE HAPPY』。
自転車に乗って笑顔で、幸せな時間をたくさん過ごしていただきたいものです。
実は勢い余ってステムにもコーティングをしてあります。
純正のサドルもなかなかオシャレです。
実はこのサドル下面にリアリフレクターが付いています。
シートクランプはクイックリリース式です。
レバーをクルクル回す必要はありません。
レバーを開いて高さを決めたら、そこでレバー閉じるだけというお手軽仕様です。
ブレーキインナーワイヤーの先端処理方法は当店独自技術の『MEF』です。
先端部分には金属が露出していません。
そのため、素手でふつうに触れても手をケガしにくいというのがMEFのメリットです。
18×2.125インチという太めのタイヤは高い安定性とクッション性をもたらします。
お子さんの手の大きさに合わせ、ブレーキレバーの初期位置を調整済みです。
ヨツバゼロをお求めの際は専用キックスタンドも同時購入することをオススメします。
ヨツバゼロは超軽量キッズバイクでありながら、かなり頑丈につくられている自転車です。
冒険心がくすぐられるかもしれませんね。
■シメ
原則として当店での自転車販売価格はメーカー希望小売り価格(いわゆる『定価』)通りです。
それを加味しても追加工賃が発生することなく新車組立でここまでやるので、メーカーさんや同業者さんからもしょっちゅうドン引きされてしまいます。
せっかくの車両販売でも利益がどんどん溶けるので、商業的には不正解かもしれません。
今後はいくつかの選択肢を用意する等して部分的には変わるかもしれませんが、2024年のうちは今のスタイルのままでいきます。
納期はかかりますが、2024年内にご注文いただいた車両は全てこのクオリティーの組立サービスが付いてくるので、ユーザーさんにとっては長い目で見れば圧倒的にお得ですね。
同じ車種でも当店で組み立てれば快適長持ちする自転車に仕上がります。
自転車の購入もサイクルサービストグトにご相談下さいませ。
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