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【顎の痛み】本当に顎関節症なのか?

お正月の余韻もすっかり落ち着き、1年で最も寒さが厳しい季節が訪れました。
戸越銀座デンタルケアークリニック 院長の大澤広晃です。
 
戸越銀座商店街は真冬でも活気に溢れています。
商店街の皆さんから元気をいただきながら、第6回目のnote記事をお届けします。
 
今回のテーマは「関係性」です。


痛みはどこからくるのか?

近年、「顎関節症ではないか」と心配して来院される患者さんが増えています。
特に女性の患者さんに多く見られる傾向があります。
 
しかし、私の経験では、そのような患者さんの中で大学病院などを紹介し、本格的な顎関節症の治療を受けた方はほとんどいません。多くの場合、次に来院されたときには「なんとなく良くなりました」とお話しされることがほとんどです。
 
また、「顎関節症ではありませんよ。筋肉痛のようなものです」とお伝えすると、それだけで症状が改善する患者さんも少なくありません。
 
このように、「顎関節症」という言葉が一人歩きしている印象を受けることがあります。患者さんが「顎関節症ではないでしょうか」とおっしゃった場合、私はまず顎の関節が正常に動いているかを確認します。
 
「顎を動かすと音がする」という訴えをされる方も少なくありませんが、指が縦に2本から3本入る程度に口が開けば、大きな問題はないと考えます。この現象は、手や足の関節が鳴るのと同じようなものだと捉えてください。
 
もし顎の関節がしっかり動いている場合、それは関節自体の問題ではありません。
多くの場合、顎周りの筋肉が痛むことを「顎関節症」と自己診断しているケースがほとんどです。
 
実際に診察をすると、顎周囲の筋肉が緊張してガチガチになり、その影響で顎が開きにくくなっていることがわかります。多くの方が、無意識のうちに顎を強く閉じすぎているのです。
 
下顎は上顎にぶら下がっている構造ですので、何もしていないときは上顎との間に少し隙間があるのが正常な状態です。もし顎に違和感を覚えたら、このことを意識して生活してみてください。
 
また、お風呂に入って血行が良くなっているときに、顎を痛くない程度に大きく開けてみるのもおすすめです。1~2回で十分です。

普段、顎を閉じたままでいることが多い方は、このようなストレッチで筋肉をほぐすことが効果的です。顎の負担を軽減するために、日常的に取り入れてみてはいかがでしょうか。

原因を見極める

 最近では、大きな声で話したり笑ったりする機会が少なくなっています。
そのため、友達と少し長電話をしたり、カラオケで2時間ほど歌っただけで「顎が痛い」と訴える方がいます。時にはその痛みを偏頭痛と勘違いすることもありますが、多くの場合、その原因は筋肉痛です。
 
日頃から「上の歯と下の歯が当たっているな」と感じる方は、少し隙間を作るよう意識してみてください。それだけで、体の緊張が「ふっ」と抜けるのを感じるでしょう。このような習慣は、顎の痛みだけでなく、首や肩の凝り、さらには偏頭痛の軽減にもつながります。
 
また、歯の痛みも、力が入りすぎていることが原因である場合があります。
適度に力を抜いてリラックスすることで、身体全体の不調を和らげる効果が期待できます。
 
私がかかりつけ医として診ている患者さんの中に、とても真面目な方がいらっしゃいます。その方は治療がすべて終わり、現在どこも悪いところはありません。それでも、「ブリッジが入っている部分がどうしても痛む」とおっしゃるのです。
 
その結果、ご自身で大学病院を受診し、検査を受けてきました。そして、「歯の根の先に炎症があり、治療が必要」という診断書をもらってこられました。
 
しかし、私は長年その患者さんを診ており、どこも悪いところがないことを知っています。そこで、根の治療は行わず、まずはブリッジを外して様子を見ることにしました。
 
すると、次に来院されたとき、その患者さんは「最近は歯の調子が良くなりました。先生の治療のおかげです」とおっしゃいました。でも、実際には特別な治療はしていません。この場合、原因はおそらくストレスなどで歯を強く噛みしめすぎたことが、痛みとして現れたのだと思います。
 
このように、歯の痛みの原因が歯そのものではなく、他の要因にあるケースは決して珍しくありません。患者さんの訴えを丁寧に聞きながら、原因を見極めることが大切だと感じています。

<おまけ4コマ漫画>

©マンガ_亞有


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