巻き戻せなさ上等

今日のラブレター / 有山達也さん著『装幀のなかの絵』へ。


信頼の希薄さがアンドゥの回数を増やすことになるのです。

有山達也『装幀のなかの絵』より

アンドゥ。undo。
PCで、一作業前に戻す操作。
繰り返せば、もっと遡るも(さかのぼ)るも可能。

著者の有山氏は著名なアートディレクターさん。
「undo」に対置する制作態度として
「勢い、決意、挑戦、冒険、ハプニングの受け入れ」などを挙げ、
undoを禁止してこれらを取り戻そうとします。

読みつつ私の脳裏には、
ふくふくと膨らみゆくパン子の姿が浮かんできました(私は日々パン焼きを愉しんでおり、
しばしばパンをパン子と呼びます)。

undo…。そもそも無理…。

私の選択の問題ではない。
パン子にとってナシなのです。
生き物だから。時は不可逆。

パンが育ち(発酵を)始めたら、
ちとお戻りくださいネーなどとは言えない。
パン子はこちらが当初伝えた意図をしっかり踏まえてくれますが、
踏まえつつ絶対に、
自らの意欲を強く推進します。
途中で最初の約束をすげ替える機会など、
ほぼ無いのではないでしょうか?
思惑を転じるなら、
パン子の最終回答(=焼き上がり)を受け止めてからです。
在るのは指揮権ではなく、
双方いま有る力だけ前提した対話。
そして巻き戻せない時をゆくのみです。

パン子とのそのような日々によりパン焼き達は、
決意・冒険・ハプニング受容を、
むしろ癖(ヘキ)としてしまってるかもしれません。

とここまで考えてみて、んん、
ソレちょっと生きづらそうかもしれない?
否、面白いですったら。
おすすめできますったら。

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