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 恋なんて、あんなに辛いもの二度としないはずだったのに、


 中学一年生のころ、隣の席の女の子が
 ある文字を黄色の食券に書いて見せてきた。


 恋


 綺麗な字で恋と書かれた食券には、上半分と下半分のところに折り目が入っていた。

 彼女はその恋を広げてみせると、恋は形を変えた。

 上半分と下半分に分かれた恋は、久と能が足され


 変態


 という文字になった。



 なぜ、なのかは分からない。
 今でもこの時のことを私は覚えていて、貰った食券を大切に保管している。

 彼女は常人には持ちえないような感性を持っている気がして、ひどく羨んだ。


 落ちるは一瞬、患うは一生。

 この病には、治療薬など存在しない。単純な構造ではないから。

 単純に見えて、難解に絡まっていて、解こうと近づけば、より複雑に絡み合う。


 なぜ、視界に入るだけで心臓は大きな音を立てるのか。

 なぜ、LINEの返信を待ち遠しく感じてしまうのか。

 なぜ、このやりとりがずっと続いてほしいと願ってしまうのか。

 なぜ、目で追ってしまうのか。

 なぜ、話しかけてほしいと思うのか。

 なぜ、こんなにも話しかけることのできない自分が憎いのか。


 このキモチをなんという言葉で表せばよいのか…


 ああ、私も相当重症らしい。



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