第1話 想像力の誤用例
「平津紗夜」
私の名前が書かれた旗が、渋谷ハチ公前にはためいた。名前の下には、「覚醒」と書かれている。
「マスクをすると病気になります…マスクを外しましょう…」
メガホン越しの私の声が反響する。
路上でのデモは許可さえあれば出来るので、場所代がかからない。むしろ支持者からの寄付金でプラスになるのである。
「さやさーん!」
聞き慣れた声が聴こえた。
「さやさーん!」
さやさんの視界に小走りするわたしが入ると、さやさんは微笑んだ。
「ももさん!」
「会いたかったです!これどうぞ