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第3話 悪い煙

・この物語に出てくる物事は全て実在する物事とは一切関係なく、出てくる陰謀論は決して事実ではありません。
・この物語は悪質な陰謀論を容認・推奨するものではありません。著者は悪質な陰謀論、特に医療関係のデマを蔓延させる行為に強く抗議します。
・この物語はフィクションです。しかし、悪質な陰謀論を広めている政治団体などは実際に存在します。

飛魚水面

☆枠解毒に効果のあるもの!シェディング治療にも!
・重曹
・クエン酸
・緑茶、松葉茶
・味噌や納豆など発酵食品
・お酒全般
・たばこ

うんうん。わたしはそのまとめツイートを見ながらうなずいた。さやさんがリツイートしてくれたツイートだ。効果のあるものはどれも知ってはいたけど、こうして一覧にまとめてくれるとすごく分かりやすい。

ん?たばこ?
たばこは体に悪いと思ってたんだけど…?なんならそれでも販売されているのは病院が儲かるための利権だと思っていた。
それは違うんだろうか。メディアの言っていることだから違うかもしれない。

「まとめありがとうございます😊ちなみにたばこはどのような理由で効果があるんですか?」
すぐに返事が来た。
「いえいえ!☺️理由なのですが、枠に入っている蛇の毒の成分はニコチンで解毒できるからです!なのでたばこがおすすめです⭐️」
「なるほど!ありがとうございます✨」

わたしはスマホを置き、息を吐いた。たばこって体にいいものだったんだ。むしろそれを気づかれたら病院の利権が無くなるから、病院側の人間が体に悪いものだと思いこませていたんだろう。
今までとは真逆だけれど、特に何も思わなかった。この3年弱でわたしの常識はたくさん変わったのだから。まだまだ知らないことがたくさんある。いつまでも知らないままじゃだめなんだ。

「さやさん、おはようございます!」
「おはようございます。早いですね。」
「準備とか手伝えたらと思いまして!」
「ありがとうございます。その前に、そこに喫煙所がありますから煙草でも吸いますか?」
「あ〜煙草!今日さやさんリツイートされてましたもんね!」
「そうですね、ワクチンに対する解毒効果があることが分かってきたらしくて。私も打った人から出る毒素の影響をかなり受けていますし。」
「シェディングってやつですね!」
「そうです。それで解毒効果がある煙草を最近吸い始めたんです。やはり知識は日々アップデートしなければいけませんね。」
「そうですね!そういえばわたしまだ買えてないんですよ~」
「1本くらいあげますよ。」
「え!いいんですか!?ありがとうございます!!」

「どうぞ。」
さやさんは黄色い箱を開けて、わたしに一本手渡した。そしてもう一本くわえてライターで火を付け、わたしにライターを渡してくれた。
「これは無添加のたばこでして。葉もオーガニックで…」
さやさんの指に挟まったたばこから煙が昇っている。さやさんの指は細くて、長くて、白い。

「ももさん?火つけてないんですか?」
「…あっ!すみませんぼーっとしてました!」
たばこをくわえてライターに指を押し込み、火を付けた。
さやさんはたばこの煙をふーっと吐いていた。わたしも見よう見まねで息を吸った。煙が肺に入ってるのかもよく分からなかったけれど、しばらく長く息を吸っては長く煙を吐くのを繰り返した。
「ごほっ…」
煙が変なところに入ったらしい。
「大丈夫ですか?」
「ありがとうございます…煙が変なところに入ったみたいで…」
「初めてはそうなりますよね。」
「はい…」
今日のデモが終わったら、あのたばこを買いに行こうと思った。2人きりで話せる場所がまた増えたとも思った。


私が煙草を覚えたのは、前の職場だった。同じ新卒で入社した同僚が皆吸っていたから。今思うと吸っていたというよりは、吸わないとやっていけなかったんだろう。
結局私と同僚は一斉に辞めてやった。たしかその1ヶ月くらい後に、会社は週刊誌のスクープになった。

そして会社を辞めた後も結局、ずるずると吸っている。私の支持者は殆どが悪い意味で自然派なうえ、大企業や病院のことはすぐ利権利権言うので、体に悪いうえ専売である煙草なんて大っぴらに吸える訳がなかった。
これからは喫煙所で堂々と吸える。今回ばかりはデマに感謝だ。

いつの間にか、煙草が随分と短くなった。
「…ではももさん、そろそろ準備をしましょうか。」
「はい!」
私とももさんは煙草を、灰皿に押し付けた。まだ少し煙が上がっていた。

【続く】

よければぜひ…!