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足の指でじゃんけんできるかな
先週のこと。
勤務先の施設で、リフト浴の支度をしていた。一緒に介助に入る先輩にあいさつをして、利用者の皮膚のケアや塗り薬のことを伝達し、その流れで足の話が出てきた。
車椅子で生活していると足がむくみやすいが、お湯に入ると血行が良くなってほぐれやすく、浮力もあって足が動きやすくなる。
付き添っている職員が足指を優しく揉んだり、足首に手を添えて動かしたりするのがいい、という話だった。
その先輩は、足指をストレッチのように自由に動かしたり、グーチョキパーをするのが体に良いと言っていた。
足指を丸めるのがグー。
親指だけを立てて他の指を丸めるのがチョキ。
五本の指を横に広げるのがパー。
グーとチョキは一応できそうだが、手を使わずに足の指を横に広げるのは、どうにもイメージが湧かない。五本の指を適当に動かすことはできても、思った通りに操作するのは難しそうだった。
「手を使わないと動かせません」と話したところ、先輩は浴用のサンダルを脱いで、足指を器用に動かしてこちらに示した。
先輩によると、私の足の指は「動かない」のではなく「動かし方を知らない」だけらしい。
普段は靴や靴下で足の指をひとまとめにして暮らしていて、個別に動かす機会が少ない。意識を向けることが増えれば動かせるようになるし、転びにくくなったり、足音が静かになったりと、いろいろな効用があるという。
試してみますと答えて、そのまま入浴の介助に入った。
*
それから一週間。
次に会ったときの話題作りを兼ねて、家で何度か自分の足を眺めながら指を一本ずつ揉んだり、手を添えて動かしたりしていた。
パソコンを触っている合間や、寝る前に数分ずつ。訓練というよりは遊びや実験に近い。
足指が自由に動くかどうか半信半疑だったが、「動かす」「止める」といった単純なことはできるし、手を添えれば痛みなく広げられるので、構造的には十分可能らしい。
いつものように足を触っていると、手を添えなくても右足の小指が外側に動くことに気がついた。親指も反対側にわずかに動くようになり、じゃんけんのパーのように広げられるようになった。
あえて文章化するなら、指を少し反らし気味にして、親指の付け根と小指にぐっと力を入れれば動かせる。
頭で考えるとかえって分からなくなるので「考えるな感じろ」なんだが、動くことが当たり前になっていくと、その感覚を言葉にするのが難しくなるので、今のうちに書いておく。
それまでだったら、自分の身体への理解度が低く、足の小指に力を入れると言っても、どうすればいいのかイメージが湧かなかっただろう。実際に理解できたのは面白い収穫だった。
話が脱線するが、中学生のときに「体育便覧」があって、跳び方や泳ぎ方、バスケのシュートの撃ち方などが書かれていた。
あれも言葉で伝達するには限りがあって、結局のところは身体で習得するための足掛かり、はしごのようなものだと思う。文字列として記憶するのと、実際にできるようになるのとはまた別の話。
私は体育の実技の成績が悪く、保健体育の暗記で補っていたので、その辺りの違いは痛感してきた。
*
足指の話に戻る。
左右で同じ時間をかけて試していたけれど、左足でパーを作ろうとすると指が丸まってしまい、今のところは右足のようには動かない。
思い返せば、学生時代に体育でボールを蹴るのは右足だったし、階段も右足から上っており、私の利き足は右だったらしい。利き手も右だ。
日本人で右が利き足の人と左が利き足の人の割合は、おおよそ7:3と言われています。参考までに、利き手が右手の人は、利き足も右足の人が多くなっています。「利き手が右手」の人の中で「利き足が右足」の割合は90%超です。逆に、「利き手が左手」の人の中で「利き足が左足」の人は40%程度です。利き手と利き足が一致せず違っている人も多いです。
一般社団法人日本からだワーク協会
https://karadawork.jp/blog/2022/09/19472/#index_id10
普段の生活では利き足を意識しないので、改めて言われると「そういえばそうか」と思えてくる。左右で動きに差があるのは自然なこととして、とりあえずは左足をパーにするのを目標にした。
幸い、球技や陸上とは違って足の指のことで怒ってくる人はいないし、気が向いたときに自分のペースでやれるのがありがたい。新しい発見があればまた記事にします。