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さよならの仕方がまだわからない

こんにちは。『tobira.』の店主、れいです。

いつもは私なりにテーマを決めて書いているのですが、今回は私の身に起きたことをただそのまま、話すように書かせてもらっていいですか?

今回もお付き合いいただけたらうれしいです。

突然ですが、私は思い出を美化することが、苦手です。いや、嫌いですと言い切ってしまおう。

20代の頃は特に、“今を生きている”のに「あの頃はよかったよね」なんて思い出話をされてしまうと、ものすごく退屈に感じてしまっていたなって。

でもね、年齢を重ねたからなんだろうか、よりよき過去を見つけて振り返ることって、悪いことばかりじゃないんだって気が付いたんです、最近。

生きていれば迷うこともあるわけだし、そんなぐらついた自分を立て直すためにも過去にはさまざま答えが隠されていたりするんですよね。

だから昨日の晩、強く思ったんです。

思い出は美化してもいいだって。そうやって、過去を愛おしく眺めてもいいだって。

青春時代を共に過ごした友人がつい先日息を引き取ったことを知り、あらためて決めました。

過去を懐かしむことを自分に許そうって。

だからここからはその友人との思い出話しをさせてください。

仲良しとかそんな甘い関係でもなく

彼女は小学生の頃からずっと一緒で、お互いにわりと大人に囲まれて育ったこともあり、同年代の友達とか先生とか、さらに社会とかね、そういうものへの違和感みたいなものをどこかで共有していた存在でした。

高校時代は同じクラスになり、仲は良かったけれど、お互いにベタベタするような関係ではなく、そんなフリースタイルな友情が私は好きだった。

当時渡してくれた手紙のなかに「あなたがいてくれて救われてる」と書かれていたことが本当にうれしくて、その一言をずっと忘れることはなかったな。

大学生になってからは、地元に残った彼女と神戸に行った私はたまに会うこともあったけれど、なんだか全然話がかみ合わなくて、「もう友達でいられないのかな」なんて思ったこともあった。

だけど、当時私が住んでいた神戸のアパートには、一ヶ月に何通も彼女から手紙が届いて、そこには彼女の考えとかこれからの人生のこととか、いつもびっしり書かれていたんだっけ。

「日本じゃない場所で私はこれから生きる」

そう手紙に綴っていた彼女は、大学卒業後、アメリカに留学して、帰国後はシンガポール人の夫と結婚して、そのままシンガポールに行ってしまった。

ずっと連絡がとれず、たびたび思い出すこともあったけれど、ベストなタイミングでもう一度彼女に会いたいって思っていたからこそ、再会を延ばし延ばしにしていた。

でもね、やっぱり後悔してる。

「なんだ、会わなきゃよかった」、そう思ったとしても恐れず会っておけばよかったなって。

あなたはどんな「自分」を見つけた?

「人と無理につながるのは嫌だから、携帯を最近解約したの」って突然言い出す彼女と、「らしいな」って笑いながら話してたあの当時、私も彼女もどんな大人になったらいいんだろうって、すごく苦しんでいたのを思い出す。

最後に会ったのは22歳の時だったけど、あれから彼女はどんな「自分」を見つけたんだろうって、気になったりする。

自意識過剰に生きていた10代を過ぎ、浮つきながらも「これでいい」と思える自分をずっと探し続けた20代前半、そこから40歳になってどんな自分にたどりついたんだろうって。

これは最後のエピソードだけど、私と彼女が好きだった古典の先生が高校最後の授業で孔子の「論語」について話していた時、

「40にして惑わずって言うけれど、僕はまだその域に達していない」

そう言い残して教室を出て行った。

休み時間に「先生、素敵だったね」なんて話しながら、「40にして惑わずか」なんてつぶやいていた私たち。

まさか、その40で……。未来なんて予測できないもんね。

自分らしさを教えてくれた彼女へ

ふるさとで暮らしていた17歳までの期間は、自分にとって暗黒の時代だったし、だからこそ何者かになることばかりに必死だった。

でも今はそんな暗黒時代も含めて自分のことが意外に好きだなって思えるようになってる。

そんな「自分らしさ」みたいなものを思い出させてくれたのは、やっぱり彼女の存在が大きかったし、

勝気で、芯が強くて、ちょっぴり風変わりだった彼女が多感な時期にそばにいてくれたからこそ、ダサくて、むきだしの自分のことを肯定できる強い気持ちを持ち続けられてたんだと思う。

だからね、もう過去のことだけど、心からありがとうってちゃんと伝えておきたい。

「なんか、美化してない?キレイゴトでしょ」って茶化してくるであろう彼女はこの世にいないわけだから、思い切り美化して、泣いてやろうと思う。

40歳になった私のこと、もし会っていたらなんて言うんだろうか。たられば話しも嫌いだけど。

きっと、「相変わらず、万人受けしなさそうだよね」って鼻で笑うんだろうけど、そんな嘘のない、ちょっぴり意地悪な彼女が心から好きだったな。

どうか、もう苦しまないでね。









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