見出し画像

私の読書日記(ジェンダー編)

今年に入ってから、意気込んで本ばかり読んでいる。
ジャンルがかなり偏っているので、おすすめ本などとポップに紹介などできなさそうなやつばかりだけど。私自身にとっての整理もかねて、書き連ねてみようと思う。冒頭からウッとなった方はここでページを閉じてください。

『上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!』上野 千鶴子, 田房 永子 /著
・『労働経済学をつかむ』大森義明, 永瀬伸子/著
・『ジェンダーで学ぶ社会学』伊藤公雄, 牟田和恵 /編
・『ポスト育児期の女性と働き方』 西村純子著
・『社会学入門」 塩原 良和 , 竹ノ下 弘久 /編集
『少子化と女性のライフコース』永瀬伸子 , 寺村絵里子 /編著
『毒婦たち: 東電OLと木嶋佳苗のあいだ』上野 千鶴子, 信田 さよ子, 北原 みのり /著
『平等と効率の福祉革命』イエスタ・エスピン=アンデルセン 著 , 大沢真理 監訳
『「問う」を学ぶ 答えなき時代の学問』 加藤 哲彦(トイビト)/編
『ジェンダー秩序』江原由美子著
『この社会の歪みと希望』佐藤優, 雨宮処凛 /著
『往復書簡 限界から始まる』上野千鶴子, 鈴木涼美/著
『ロスジェネのすべて―格差、貧困、「戦争論」』雨宮処凛, 倉橋耕平, 貴戸理恵, 木下光生, 松本哉/著
『脱アイデンディティ』上野千鶴子/編集
『フェミニズムの名著50』江原 由美子,金井 淑子/編
『下層化する女性たち』小杉 礼子, 宮本みち子/編著
『承認をめぐる病』斎藤環/著

『平等と効率の福祉革命』などは、文章は読み進められても理解に及ぶには時間がかかり、なかなかにページが進まず久しぶりに体力を要する読書だった。

最近は時代の変化が凄まじく、特にジェンダーにまつわる書物は2015年くらいのものであっても多少古く感じてしまうことがあった。だけど、この本はこれからの社会を反映しているというか、私個人としてここ数年感じていたことが書き記されているような気がした。しばらくしたら再読したい一冊。だけどこの分野に関心が強くない人にはおすすめはできない……(笑)。

(以下、編集部のメッセージが、この本がいかなる本かを適切に伝えているので、興味があればご一読ください)

■編集部からのメッセージ
比較福祉レジーム論で著名なエスピン=アンデルセンが本書で取り組んだのは,ジェンダー平等の観点から見た経済格差や少子高齢化の問題です.
 著者は,多くの女性がキャリアとしての仕事を選択するようになったことを「女性の革命」と呼びます.しかし,その「革命」は主に高学歴の女性によって担われており,教育年数の短い女性は,依然として性別役割分業に沿った仕事(家事・育児中心,不安定な雇用)をする傾向にあります.
 高学歴の女性は,自分の価値観・ライフスタイルに適合するパートナーを選択し,カップルで高収入を得ながら,数少ない子どもを出産し,その子どもに時間的・経済的な投資をしています.子どもに対する投資の不平等は教育の格差につながり,知識やスキルが重視される「知識経済」の中で,格差が世代を越えて固定化されていきます.「女性の革命」が不完全であることが,世代間格差や高齢期の貧困につながり,社会の効率を悪くしている,というのが著者の主張です.本書では,その状況を打破するための具体的な施策の提言が行われています.
 著者の分析は欧米が対象ですが,社会政策の比較ジェンダー分析が専門の監訳者が日本の状況についての詳しい分析を解題で行っています.そこでは,日本の状況が欧米的な不完全な「女性の革命」にすら到達していないという驚きの状況が明かされます.

岩波書店ウェブサイトより

読みやすさでいえば、以下2冊はかなりおすすめ。

1. 『往復書簡 限界から始まる』上野千鶴子, 鈴木涼美/著
2. 『上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!』上野 千鶴子, 田房 永子 /著

2については、フェミニズムが「暮らしレベル」に落とし込まれていて、「そういうことだったのね」とめちゃくちゃ理解が進むので、親や社会との関係に悩んできた女性や男性にぜひ読んでほしい。私は自分の母親に勝手に送りつけたくらいなので……(笑)。なんというか、母の子育て期の苦しみが「あなたのせいだけじゃなかった」と理解してほしかったというか、それを叶える一冊だと思ったから。すると、彼女からは後日こんなメッセージが届いた。

「色々な事が思い出され、私の不機嫌な毎日がよくわかりました。私には居場所がなかったのです。超封建的な所にきて、「嫁=働き手」という世界が理解できず、(中略)何も意見も、主張もできず、我慢を、自分に言い聞かせてきた。仕事に出るようになって、やっと自分の居場所ができたのかもしれないね。何か変、何か違うと思ったら、行動する勇気が欠けたけど、23、24歳では出来なかったけどね。残りの人生、勇気をもらった気がする。」

母は私が生まれて間もない頃からずっとフルタイム正社員として働いていたので、ことあるごとに専業主婦になるのが夢だと口にしていた。しかしそれは彼女のないものねだりだったように思う。小学生の頃、母の仕事場を訪れたとき、イキイキと仕事をする母の姿は今でも忘れられない。もちろん大変なことは山ほどあったと思うけれど、自分を保つには必要な場所だったんだと今なら理解ができる。

とはいえ、家庭内では従うばかりの弱い母が「女の象徴」のような気がして、私は幼少期から自分の中のミソジニー(女性嫌悪)とウィークネス・フォビア(弱さ嫌悪)を増幅させてしまった。40代になってようやく過去の私自身に説明がつくようになったのは、生きづらさを軽減してくれている。そして本書の中の上野先生のこの言葉には勇気をもらった。

私がミソジニーから100%解放されていれば、フェミニストである必要ないもん。闘う必要がないから。自分の中にあるミソジニーと闘い続けてきた人をフェミニストと呼ぶのよ。

『上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!』

上野先生はミソジニーを「男にとっては『女性軽視』、女にとっては『自己嫌悪』」と定義している。そして「フェミニズムは女にとって、自分との和解するための闘い」だと言う。この一言がずしーんと胸に響いて、私がなぜこれほどジェンダーの問題に執着しつづけるのか、答えが出たような気がした。

若い頃は、自分の強さを試すかのようにボーダーラインを超えようとしたり、わざと自分を傷つけるような状況に身を置いたり。本当にめんどくさい人間だった。それでも私は自分が被害者だとは思いたくなかったし、何かの答えを見つけるために私自身を痛めつけていることに薄々気づいていた。人が離れていこうが、安全地帯では私の成長はない、見つけたい人生の答えなど見つけられないと思っていた。

とはいえ、「自分が被害者ではない」という思い込みは男性社会の片棒をかつぐようなものだと、若い頃の私はまったく理解できておらず、なんと愚かだったのだろうと今さらながら反省が止まらない。

そんな「自分が被害者ではない」という思い込みとともに「エンコー(援交)世代」という同じ時代を生きていた作家の鈴木涼美さんと上野先生との往復書簡『往復書簡 限界から始まる』も圧巻だった。

研ぎ澄まされ感性と知識が生み出す知性あふれる文章のやりとりは圧倒的で、プロの書き手が「女」を主語に文章を綴るとはこういうことなのだと、選ばれし書き手の腕のすごさを見せつけられたような一冊だった。

■内容紹介
「上野さんは、なぜ男に絶望せずにいられるのですか?」
女の新しい道を作った稀代のフェミニストと、その道で女の自由を満喫した気鋭の作家が限界まできた男と女の構造を率直に、真摯に、大胆に、解体する。

「しょせん男なんて」と言う気は、わたしにはありません。――上野
・女の身体は資本か? 負債か?
・娘を幸せにするのは知的な母か? 愚かな母か?
・愛とセックスの分離から得たもの、失ったもの
・家族だけが磐石だという価値観は誰に植え付けられたのか?
・人間から卑劣さ、差別心をなくすことはできるのか?
「エロス資本」「母と娘」「恋愛とセックス」「結婚」「承認欲求」「能力」「仕事」「自立」「連帯」「フェミニズム」「自由」「男」――崖っぷちの現実から、希望を見出す、手加減なしの言葉の応酬!

幻冬社ウェブサイトより

この文末までたどり着いてくれる人はいる?
そしたらあなたと少し友達になれたような気分。

そして暑苦しく見苦しい文章を書き連ねた私自身を嫌いにならず、明日も明後日も元気に生きていけそう。ありがとう。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?